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[愛の形、孤独の形]Episode Crys&Pearl  作者: Emotional
2章『盤石沈下』
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#29『銃声―Another Sights―』

〈理性の街西部、ペグマタイトタワー近郊〉



パールは路地裏を起用に潜り抜け、クリスは屋上から屋上へと渡って駆け抜けて行く。


≪それにしても、目に文様があるってどういう事?≫


≪さぁ?とにかく、見てから考えよう。≫


≪ライラの情報では、濃い緑色のコートに灰色のフードを被っているらしい。身長は私とパールの間くらい。結構絞れるかも≫


こうして無線でやり取りしている間に、パールは人気(ひとけ)のない道路の脇に、特徴と合致する人物を発見する。


≪見つけた!私の位置分かる?≫


「うん、」


≪なんとなくそっちと目合わせるから、確認して欲しい≫


クリスはパールの居る方向へ視線を向けると、パールが見ている位置に色が付く。

クリスはパールが見ているであろう道の正面にある建物まで着くと、視界の端に目標を捕らえた。


「私も見つけた。どうす―――!?」


クリスがパールから視線を外した、その時だった。本来、パールと目を合わせていないと色は着かないはず。それなのに、クリスが目標を視界の中心に捉え、その頭部を銃のサイトに映した瞬間、目標の向こう側にある景色が色着いた。


「—――え......?」


クリスは言葉を失った。


(これは、嘘、これ、どういう事?パールが見せてくれている世界。パールだけが私に見せてくれる。え?違うの?いや、そんなの絶対認めない!!パールだけのものなんだから!!!!)


クリスは標的に狙いを定めると、パールが異変に気付く間も無く発砲した。


「なっ!?クリス!?」


パールは無論、それに驚いたが、それだけではなかった。目標は目の前で、確かにクリスの弾丸に撃ち抜かれた。だが撃ち抜かれた後、そこには激しい水しぶきが上がったかに思えると、そこに目標の姿は無かった。


「消えた―――?いや、まだだ!」


しぶきが収まる頃、そこには水溜まりが出来ていた。その水溜まりは石油にも劣らぬほど濁っており、"それ"は独りでに地を這うと、クリスの方へと向かい始めた。


「まずい!!」


≪クリス!!目標はまだ死んじゃいない!!黒い水溜まりを狙って!!≫


「っ―――!!!」


クリスは焦燥の中、パールの言う水溜まりをサイトの中心に持ってくると、4つのカウントで再び発砲した。

弾丸は弾道に真空を発生させ、地面を抉る。だが、水溜まりは留まる事を知らない。


「くそっ――!!」


パールは水溜まりが動き出すと共に咄嗟に駆け出した。案外こちらの走る速度の方が早く、目標への対策を考えるには十分な時間を確保出来た。


(あの水溜まり、クリスの弾で地面にヒビが入った時、少し動きが止まった?)


≪クリス!!そのまま撃ち続けて!!私の移動する速度のが早い!!≫


パールはクリスが水溜まりを足止めしている間に、一足早くクリスの居る建物の前に辿り着く。


「とりあえず、なんで足止め出来てんのか分かんないけど、もしかしたらこれも効くんじゃないかな」


パールは水溜まりがこちらに着く前に、なるべくありったけの結晶を生成すると、建物の入り口付近に設置する。


≪クリス、一旦射撃を中断して、誘い込む。私が合図したら、目標に撃ち込んで!≫


「—――分かった」


パールは死角から、水溜まりが接近するのをじっと待つ。そして、それが建物の根元まで来ると同時に、結晶の山に向かってもう1つ、結晶を投げつけた。

意外な事に、目標は水溜まりから姿を現すと、結晶の爆風で空中に投げ出された。


「ちょっと予想外だけど...チャンス!!」


≪クリス!今!!!≫


「っ!!!!」


クリスは目の前まで投げ出された標的に向かって銃口を向ける。標的と目が合うと、髪で隠れていてよく見えなかったが、確かに文様らしき赤い瞳がこちらを覗いていた。


「くそが!!!」


クリスは思いっきり引き金を引く。だが、標的はいつの間にか盾の様なもので身体をガードしていた。だが、貫通はせずとも、標的は弾道に沿って弾き飛ばされ、標的は落下と共に更に激しいしぶきを上げた。


≪まるで手応えが無い。何者なんだ!?≫


≪クリス!そのまま撃ち続けて!!援護する!!≫


パールはしぶきの収まらぬ内に正面から目標に突っ込むと、目標が水溜まりから姿を見せると共に横に回り込み、クリスの発砲と共に素早く結晶を投げつけた。


『っ―――!!』


「あの子にばっか集中してたら死ぬよ!!」


パールは自身に目標の注意を引くと共に、それが逸れぬ様立て続けに攻撃を仕掛ける。目標は案外素早く、パールとクリスの攻撃を器用に躱していく。まだ黒いしぶきの雨は収まらず、目標に攻撃が当たったように見えても、それが勘違いだったと思わせる程だった。そして、パールが目標に脚を伸ばした時、目標は再び水溜まりに潜り、路地裏へと向かって行った。


「あ!逃げるな!!」


パールは咄嗟に黒い霧の中から飛び出すと、水溜まりが向かった方へまっすぐ進んだ。だが、何処を見渡しても、その姿は無く、気配すら完全に消えていた。


≪—――ターゲット喪失、逃しました。≫


≪了解、偵察隊を派遣しておく。君達は帰還してくれ。≫


≪≪......了解。≫≫


「...何だったんだ......?」


「—――くそっ、」


クリスが銃から弾を抜き、折り畳むと、2人はペグマタイトタワーへと帰還した。



〈ペグマタイトタワー、地下1階、作戦室〉



エリナへの報告を済ませ、タワーの地下に帰還した2人は、任務を終えた3人と居合わせた。


「—―そんで、どんな奴だった?顔は見られたか?」


「あー、その、思いっきり私達2人共対峙しちゃってて、」


「—――まぁいい。最近の俺ら、そんなコソコソしてないしな。どの道俺らの顔は割れてたろ」


「—――」


クリスは標的との間で起こった出来事が忘れられずに居た。クリスが考え込んでいると、パールが手を握って来た。


「大丈夫?」


「......」


クリスはパールの両手を握ると、そのまま瞬きせず、パールと目を合わせ続けた。


「え、いきなり何、怖いって」


「あら、」


「ハァ、イチャつくなら他所でやってくれ。」


その後、帰宅したパールは、いつもよりクリスの距離が近く感じた。


「そこまで変わらないんだけどね――」


―――――



〈夕暮れ、ペグマタイトタワー最上階。〉



「......」


エリナは手紙を受け取った日から、空いた時間はずっと東側の窓に立っていた。


「エリナさん、何か悩み事でも?」


まるで銅像かのように微動だにしない彼女に、流石に焦りを覚えた秘書が口を開いた。


「あぁ、合図を待っている。ある意味、悩みごとかもしれんな。」


「東からの合図......?もしや、本能の街からですか?」


「—―――――詳しくは話せない。それと、この話は口外しないように頼む。極秘の任務なのでな。」


「—――承知しました。何か要るものはありますか?」


「じゃあ、茶菓子の補充を――」


「そちらの件なら、既に片付いております。」


「—――じゃあ、掃除を――――」


「既に。」


「......くつろいで手構わない。」


「承知。」


秘書はフロアの中央にあるソファーに腰掛けると、途端に全身の力を抜き、だらしなく座った。


「—――――時折、君のその能力が怖く感じて来るよ。」


「お褒めに預かり光栄です。」


秘書は体勢を変えず、気の抜けた声で返す。

そんなやり取りをしている間に、本能の街から1つだけ、色の違う、蒼い光が灯った。


「—――!」


  To be continued.

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