#23『呼び声?』
〈翌日、ペグマタイトタワー、地下1階〉
「ハァ......」
マーカサイトが作戦室でくつろいでいると、カルサイトが頭を抱えながらエレベーターから降りて来た。
「ん?なにかあったんですか?」
「別に、久々に軽い筋肉痛ってだけだ......誰にも言わねぇか?」
「私の口が堅いのは、貴方が一番よく知っているのでは?」
「へッ、そうだな。」
―――――
「......なるほど、確かに。破裂する結晶なんて代物、この建物のどこでも見た事無いですね。それにあの身からあれだけの結晶を出せて、それを携帯しながらの移動。起爆の構造からしても、そう結論付けるのが一番手っ取り早いですし。」
「まぁ、俺は別に、知ったからってどうするって訳でもねぇがな。特に何も言われてねぇし。」
「ですね。あ、そういえば、例の探知機ってどうなったんです?」
「あぁあれな。完成したつっても、ちと癖があってな。見て貰ったが早いか。」
カルサイトはマーカサイトを連れると、自分の研究室へと向かった。
〈ペグマタイトタワー地下1階、研究室〉
「あー、なんつーか―――」
前見た時より少し片付いた研究室で、カルサイトは机に置いていたメガホン型の装置を手に取り、マーカサイトに見せた。
「私のメガホンと似てますね。」
「あぁ。この形のが色々都合が良くってな。そんで、完成したつっても、まだ試してない。あと、使う前に原理を説明しとく必要がある。」
カルサイトは次に装置の電源を入れると、マーカサイトに手渡し、自身に向けさせた。すると、逆三角型のモニターに、白い点が現れた。
「これ、潜水艦のレーダーみたいですね。」
「あぁ。それは神子石の反応する感情を検知する装置だ。だから、人が多いと使い物にならん。あー、ならなくはないか。そこに映ってる点は、そこに居る人間の感情と意志に連動してる。そして、それによって色を変えるんだ。今俺は特に感情が動いて無いから、小さくて白い点な訳だ。文様付きの神子石は言わばクスリ。人の心を惑わし狂わせる。もしそんな奴がこれに掛かったら、荒く波打つ点が出て来る」
「なるほど、ですが、普通に情緒不安定な人がレーダーに映ったらどうなるんです?」
「まぁ流石にこの街はそんな奴ばっかじゃねぇだろ。そん時は虱潰しでどうにかなる」
「それもそうですね。そうだ、今朝エリナさんから、依頼を受け取ってます。これ試してみましょう」
「そうか。それは丁度良い。そういや、3人は?」
「呼んだ?」
噂をすれば、エレベーターからゾイサイトがやって来た。
「あぁ。丁度良い。前軽くぼやいてたのが出来たから、試しに行こうって話をしてたんだ。」
「ぼやいてたの?どれ?」
「神子石の探知機だ。」
「嘘、出来たの!?」
「まぁ、まだ実戦で試してないがな。だからこれから行く。」
「あ、今回の任務は少々特殊で、夜からの開始だそうです。」
「おぉ、そうか。じゃあ暇だな。」
「神子石の研究は良いの?」
「まぁな。これが出来た時点で、一旦一区切りだ。一応危険物だし、迂闊に触れんからな。」
「触ったの?」
「カプセル越しにだよ。」
「暇なら、皆でどこか出かけませんか?」
「いいね!あっちのデパートとかどう?最近新しい店出来たんだ!」
「お前ら、荷物持ちにすんじゃねぇぞ」
「行かないとは言わないのね」
「おめぇはいちいち上げ足を取るな!」
〈暁の館1階、クリスとパールの部屋。〉
曇り空。皆と彼女の見る世界で、唯一変わらない景色。
「......」
(俺は気分屋なもんで、何年か前はよくすぐどっか行って皆を心配させてた。心配させるだけさせて何食わぬ顔でしれっと戻って来るのが俺だ。だから安心しろってだけな。)
クリスが窓を開け、外の空気に当たっていると、部屋のドアが開いた。
「クリス、」
「ん?」
クリスが振り返ると、同時に世界が色着く。彼女の周りが鮮やかに染まったのを見て、クリスは笑みを零した。
「どうしたの?パール」
「出かけない?」
「うーん、でも、予報だと小雨とはいえ降るみたいだよ?」
「じゃあ、私と出かけるの嫌?」
「いじわる。」
「えへへ、この前のお返し」
「行かないなんて一言も言ってないよ。この前言ってたデパート、一緒に行ってみる?」
「うん!」
〈理性の街東部、デパート1階〉
「ペグマタイトタワーとは違う迫力、こんな所あったんだ」
「私も驚いたんだ。っというか、こんな色だったんだ。」
クリスはパールを横目に、色着いたデパートを目にする。パールはそんなクリスを見てほほ笑んだ。
「...この世界の色んな景色、私が見せてあげる。」
「っ......うん!」
〈デパート1階、フードコート〉
「あのチェーン店ここにもあったんだ!」
デパートで一通り買い物を終えたカルサイト、ゾイサイト、マーカサイトの3人は、フードコートで食事をとりながら一休みしていた。
「んぁ?あれ珍しい店なのか?」
「職場の近くでしか見て無くない?」
「ん?あぁ、言われてみればそうだな。」
「あそこのスイーツ、材料全部産地直送だそうで。最近出来たのもあって展開はこれかららしいですよ」
「へぇ~、あれ、ここ皆行ったことある感じ?」
「まぁ、職場近いしな。同系の店他に無いし。」
―――――
『......ここで、合ってるんですよね?』
――ああ。
『—―貴方の仰せのままに。』
―――――
「ん?」
カルサイトはふとフードコートの外に目を向ける。背筋を伝う微かな気配に振り返ってみたが、そこには変わりなく人込みがあるだけだった。
「どうかしました?」
「あぁいや、気のせいか。ちょっと視線を感じただけだ。」
「そんな有名人だっけ?私達」
「あぁクソっ、また排水溝が詰まったか?......いや、逆流してる?なんだこれ、おい、おいおいおい!なんなんだよ!!!!」
「ん?」
3人が叫び声のした方を向くと、厨房の奥、水道から水が溢れ、キッチンが水浸しになっている店があった。
「詰まりでもしたのかな?」
「いや、にしては妙だ。むしろ、噴き出してるみてぇ―――」
「なんだこれ!!止まんねぇ!!!??」
「はぁ!?急になんだよ!!!!」
「これは―――」
「マーカサイト、あの探査機持って来てるか?」
「はい、一応」
「周りに向けてみてくれ。人込みがあるが、そこまで多くは無いはずだ。ゾイサイト、行くぞ」
「えぇ。」
2人は店にたかり始めた野次馬越しに店内をよく観察する。気付けば厨房全体が水に侵され、その嵩は津波の様にみるみる内に増していく。カルサイトとゾイサイトは咄嗟に野次馬の前に出ると、避難を呼びかけた。
「皆さん!!フードコートから離れてください!出来れば、2階より上に!!」
「そんな大袈裟な、ただ逆流してるだけでしょう?—――」
野次馬の一人がそう反論した直後、カウンターが水に押し出され、厨房から溢れた。ゾイサイトは咄嗟に近くの大きなテーブルを投げると、その波をせき止めた。
「事の深刻さが分からんのか!!さっさと避難しろつってんだ!!!!」
カルサイトが怒鳴った矢先、館内放送が流れ出す。
≪お客様にお知らせします。現在、施設内の全ての水道が逆流しております。屋内に居られますお客様は、速やかに屋外へ避難すると共に、安全を確保してください。≫
「ナイス館内放送!」
放送が終わると共に、流石の野次馬も事の深刻さに気付いたのか、出口の方へと駆け出して行った。
(2人共!!見つけました!!1人、反応が可笑しい方が居ます!!)
「よし!...せーのでこっから離れるぞ、いいな。」
「えぇ。」
「せぇーのっ!!!!」
2人がせき止めていたテーブルと椅子の山から離れ、咄嗟に距離を取ると椅子とテーブルの山は少しずつせき止めている水を吐き出しながら、侵攻を始めた。
To be continued.




