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[愛の形、孤独の形]Episode Crys&Pearl  作者: Emotional
1章『愛を望む双子』
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21/29

#21『I vow to love you forever.』

〈理性の街、恐竜博物館近郊、河川敷〉



「パール、待って、」


パールは歩みを止めない。クリスの声など気にも留めず、ただ1方向へと真っ直ぐ歩いて行く。


「私、何か悪い事しちゃったの?だったら教えて。もやもやするから―――」


「—――」


パールは尚も歩みを止めない。やがて夕日の照る河川敷に着くと、パールは突如歩みを止め振り返った。


「......」


パールは目を合わせない。自分の中の感情日押しつぶされそうになりながらも、マーカサイトの言葉を思い出し、なんとかその場に2本足で立つ。


「パール......?」


(......私、私にも、私が分からない。でも、これだけは、やらなくちゃいけない。多分、これで良いと思う。)


「......なんで来たの?」


「...え?そりゃあ、パールと一緒に居た―――」


「噓つき。」


クリスの心臓が締め付けられる。心当たりが無くもないが、どうもしっくりと来ない。あの2人と一緒に居た時も、パールはずっと心の真ん中に居た。


「—―嘘じゃない。私は、パールの為に、ずっと今まで、色んなことをして来た。何もかも、全ての物事の先に君が居た。だから、今こうしてパールの前に立ってる。」


「......」


パールは耳から頬にかけて熱くなる感覚を覚える。だが、思えば思うほどに、その心には茨の棘が刺さる。


「クリスは、あの子たちと一緒に居る方が幸せに生きて行けると思う。たかが私1人に執着するより、そっちのほうがずっと幸せだよ。私が護ってあげるから、クリスはずっと幸せに生きていればいい。」


「......」


クリスはパールに纏う複雑な感情に触れ、固唾を飲む。


「...君を一人にしてしまった、孤独にしてしまった。それは私の過ち。この無機質な世界に生まれてしまった、私の原罪。罪は償わないといけない。これがある限り、私に幸せなんてもの存在しない。偽りの幸せを生きる位なら、君と茨の道を歩みたい。だから私は引かない。」


「......あっそ。」


2人の間に静寂が訪れる。川のせせらぎ、子供達の笑い声、文明の音。2人は深呼吸すると、互いに構えた。


「私の事、何も知らないくせに。」


パールは結晶の爆風で加速しながら、クリスに接近する。そして、クリスの顔面に向かって拳を突き出したかに思えたが、その拳は空を突き、パールが見上げればクリスは宙を舞っていた。


「チッ、」


「そうだよ、私は何も知らない。生まれたばっかりの頃の君しか。」


クリスはパールの背後で着地すると、パールが薙ぎ払った拳を躱し、パールが拳と共に放った結晶を受け流すと、そのままパールへ投げ返した。爆風で少し視界がぼやけた中から、不意に飛んで来た結晶はパールの胸部に命中し、そのままパールは後方に仰け反った。


「だったら私達は他人、そんな他人があんたの利益になる事をしてくれてる。だったら私のやる事のどこを否定する必要があるって言うの?」


パールが仰け反った直後、クリスは咄嗟にパールに接近する。だが、パールはその場で無数に結晶を破裂させ、真上に跳躍する。そのまま空中で再び結晶を生成すると、クリスに向かって一斉に投擲した。クリスはパールを少し見上げた後、空中に居るパールへその足一つで目にも留まらぬ速さで真っ直ぐ跳躍して見せた。

だが、パールはそんなクリスに懐に蓄えておいた結晶をぶつけ、クリスは弧を描き地面へと落下した。

クリスは咄嗟に受け身を取り、何とか無事に着地する。


(パールと目が合わない。私はなんて大馬鹿者なんだ。だから早く、パールを説得しないと)


「私は君の為に生きて来た。君は私にとって生きる意味なんだ。だから、破滅に向かうような事しないで!」


「だったらなんで私を放った?なんで最初から一緒に居ようとしなかった?中途半端な感情で私を救おうとしないで。救った気になって気持ち良くなる奴は嫌い」


「なっ、」


パールは動揺するクリスに向かって再び加速すると、再びクリスの真上に跳び、斜め上から結晶を浴びせた。


「—――その通りだよ。私は最初、こんな体で、貴方の事を護るなんて不可能だって思った。」


「だったら、生半可な気持ちで来ないで。」


「分かってる。だけどそれはもう昔の話。私は今を生きてる。今、こうして、ここに立ってる。だから――」


パールが放った無数の結晶がクリスを襲う。クリスは一切動じず、その攻撃を一身に受け止めた。


「はっ...?」


クリスの服は一部が破け、身体の数か所に切り傷が出来た。


「......」


クリスは右足で思いっきり地面を蹴り、パールに一瞬で接近すると、パールの頬に手の平をぶつけた。


「私の覚悟を、甘く見ないで。」


頬に赤い跡が出来たパールは、ようやくクリスと目を合わせる。だが、その眼差しには他者へ向ける負の感情が見えた。


「あっそ。」


パールは足元に結晶を投げつけクリスを吹き飛ばすと、そのまま空中に投げ出されたクリスを地面へ蹴り飛ばした。クリスは思いっきり地面に叩きつけられ、大きく身体を怯ませた。


「......これ以上、私をがっかりさせないで。出会わなきゃよかったなんて、言わせないで。」


「っ......!!」


パールに纏わり付く茨が、さらにクリスを締め付ける。クリスはその場から逃げ出したいとさえ思考の端に浮かぶようになるが、それでも、クリスは起き上がり、ボロボロの身体でパールに向かって構えた。


「......私に1撃しか与えれないくせに。雑魚の癖に、でかい口叩かないでくれる?」


「......じゃあ、私がこうして立ってられるのは君が私を倒す覚悟が無いって事?」


「チッ、」


「...ほら、私はまだ戦える。生半可な気持ちで居たのは、君なんじゃないの?」


「......うるさい。黙れ!!!!」


パールは再びクリスへ向かう。クリスは激高するパールの攻撃を冷静に躱していく。


「ほら、当ててみてよ。」


「黙れ雑魚!!!!」


パールの攻撃は悉く空を切るようになり、クリスはしっかりと目が合うようになったパールから、希望を見出す。


(今だ――)


クリスはパールの隙を見て、後ろに回り込むと、パールの両腕を拘束してみせた。


「もうやめて。これ以上、お互いの見る世界を濁らせちゃだめ。」


「はぁ......?何言ってんだ―――」


「パール、私は君の事が好きなの。だから、これ以上醜い君を見せないで。私も私の醜い姿を、君に見て欲しくないの。」


「......」


パールはクリスの拘束からもがくのをやめる。クリスがパールの拘束を緩めたその時—――


「っ......!!」


「っ!?」


パールは大きく身体を反り、口にくわえた結晶を噛み砕くと、その爆風でクリスを吹き上げた。


「はぁ......はぁ......」


クリスはそのまま地面に落下し、地に伏す。


「綺麗ごとばっかほざきやがって」


パールは赤くなった頬を隠しながら、伏して起き上がろうとするクリスに近付く。


「私が醜い?醜いのはあんただけよ!!」


パールが思いっきり拳を振りかぶった時、クリスは膝を畳みバネの様にしてその拳を躱す。クリスはパールの後ろを取ると、そのままパールを蹴飛ばした。


「......」


クリスは口元を拭いながら、千鳥足でその場に立つ。飛ばされたパールは起き上がると、そのままクリスへ駆け出し、顔面に拳を喰らわせる。クリスはその反動で一回転し、その勢いでパールに拳を返す。

そのまま互いに醜く殴り合う。そうしている内に気付けば日が暮れ、2人は地面に仰向けになっていた。


「はぁ......はぁ........」


「......」


肩で呼吸しながら、夜空に少しずつ灯る1等星を見つめる。気付けば疲労と共に互いに纏っていた茨は消え、心の中が澄んだ気がした。それと同時に、茨とは別の、理性的な思考が浸食を始める。


「......馬鹿みたい。こんなしょうもない事でこんなに争って。」


「......パール、」


「...なんだよ」


「......分かってくれた?」


「......はぁ?」


「......フッ、はははっ!」


クリスは突如大笑いを始める。こんなに笑ったのは生まれて初めてかもしれない。


「急に何、怖いって。」


「はぁ......私も、これくらいやれるから。それに、さっき言われたとおり、私は君の事全然知らない。」


クリスは身体を転がし、パールの方を向く。


「だから、これから、いっぱい君の事知りたい。」


「......はぁ.........もう、勝手にしろよ。」


「...!!」


クリスは体の疲労もすっかり忘れるかの如く、そのままパールに抱き着く。


「何すんだよ!!」


「寂しい思いさせてごめんね。これからはずっと一緒だから。」


「......もぅ。」


パールは恥じらいながらも、ゆっくりと身体をクリスの方へ向け、クリスの背中に手を回す。


「これじゃあ、なんで悩んでたのか分かんなくなるじゃん。」



―――――――――――――――――



「......ん?何やってんだ?」


カルサイトは息抜きに寄ったカフェで、たまたまマーカサイトに出くわす。


「ん?あぁ、珍しいですね。任務以外で外に出てるなんて。」


「まぁ、一区切りしたからな、それにずっと同じ体勢じゃ体が鈍る。ジムもあるが、流石に同じ景色じゃ飽きるからな。で、あんたは?」


カルサイトは購入した飲み物を片手に、マーカサイトの隣に座る。


「...別に、特に何もないですよ。たまたま喉が渇いた私の近くに、このお店があっただけです。」


「そうか。」


マーカサイトは窓辺の席で、外の1点を見つめながら、優しく微笑み答える。今日飲む紅茶は、砂糖を入れ忘れていても、とても甘く感じた。


「所でマーカサイト、」


「どうしました?」


「仕事の話で悪い。ちょっと大事な話があってな。」


「いいですよ。何か進捗でもあったんですか?」


「進捗も何も、滅茶苦茶良い知らせだ。」



「文様付きの神子石の、探査機が完成した。」


  To be continued.

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