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[愛の形、孤独の形]Episode Crys&Pearl  作者: 情緒不安定
1章『愛を望む双子』
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20/29

#20『フラッシュバック』

〈数刻前、ペグマタイトタワー、頂上〉



「ん?」


エリナが窓の外を眺めていると、エレベーターの扉が開く。エリナが振り返ると、そこにはクリスが居た。


「あぁ、君か。ここに何の用だい?」


「...私も、パールと共に行く。」


「悪いがそれは出来ない。私は、君が生きて帰れる保証が出来ない。」


「...私は、それでも、行く。」


「口だけではなさそうだね。だが、これは正真正銘、命に関わる。私のひと声で、人の命を脅かす真似はしたくないのだよ。」


「......」


(とりあえず、エリナに会ってこれ渡せ。そしたら大体何とかしてくれるだろ。)


「......ん?その手に持ってるのは?」


「あぁ、これは、暁さんから、貴方に渡せと言われたものだ。」


クリスはエリナに近付くと、それを手渡した。封蝋で丁寧に閉じられているその手紙を、エリナは受け取ったその場で開く。エリナは中の手紙を見るなり、思わず驚愕の声を漏らす。


「......そうか。」


「何が、書いてたんですか?」


「気にするな、こっちの話だ。それに、」


「いずれ分かる事になるだろ。いいだろう。一緒に来るといい。」


クリスはエリナに連れられ、地下階へと向かった。その時のエリナの足取りは、どこか重くなっているようにも見えた。



〈ペグマタイトタワー、地下1階、武器庫〉



「こんな所が...」


「パールの他にも、3人程居る。君にはこれから、その子達とも共に戦う事になるだろう。皆はついさっき出発した。今からでも追いつけるだろう。」


「パールは、ここに居るんですか?」


「あぁ。どうしてだい?」


「実は数日の間、連絡も無く、家に帰って無かったんです。」


「そうか......安心して欲しい。彼女なら元気だ。」


「良かった...」


エリナは武器庫の奥から埃を被った重い箱を取り出すと、それを机に乗せた。


「手紙を読んだ所、君は瞬間的に体の機能を強化できるという認識で合っているね?」


「はい。」


「だが、接近戦だと無駄な体力を消耗してしまう。持久戦には向かないと。」


エリナは箱を開けると、大きな蓋を床に放った。


「これは......」


「その力、これに活かせないか?」



〈理性の街南西部、貨物倉庫群〉



一筋の光の屈折、まるで光線銃でも撃たれたような弾道が消えると共に、翼竜は水溜まりとなり消えて行った。カルサイトとゾイサイトはしばらく身構えていたが、翼竜の身体が再生する事は無かった。


「...なんだったんだ?」


「今の、あっちの屋根...あの人誰?」


「......なんで―――」


屋上で銃を構えていた少女は、自身の身長程ある銃を折り畳むと、屋根の脇にある梯子を滑り降りた。

パールは目の前で起こった事が未だに理解出来ず、それが自分の中の混沌とした感情と入り交ざり、誰とも目を合わせる事が出来なかった。


「パール!!」


梯子を下りたクリスは、すぐにパールの方へと駆け寄る。


「怪我は無い?大丈夫?」


「......」


パールから返事は返って来なかった。彼女は俯いたまま、クリスに背を向け、その場から去って行った。


「あっ......え..........?」


「......」


その場に居合わせてしまった3人は、ただ、去っていくパールを眺める事しか出来なかった。

張り詰める空気の中、最初に足が動いたのはマーカサイトだった。


「あ、私、先帰ってます!」


マーカサイトはパールの後を追う様に、その場を離れた。


「どういう事?何かあったの?」


「あー、昨日だか一昨日だか、パールが深夜にこっち来たことあったな。マーカサイトとなんか話してたっぽいが、何話してたかまでは俺は知らねぇ」


「ふーん...そこのあなた名前は?」


「え?あぁ、クリスです。」


クリスは唖然としている中、唐突に響く横からの声に軽く驚く。


「クリスさんっていうのね!さっきは仲間を助けてくれてありがとうございます」


「あの子は、私にとって、妹みたいなものだから。」


「妹...?」


「えっと、貴方達が、パールの仲間で良いんですよね?」


「まぁ、そうなるな。あんた何モンだ?」


「今日から私も一緒に任務に就くことになりました。よろしくお願いします。」


「......え?」



〈ペグマタイトタワー、地下1階、作戦室〉



「マーカサイトとパールはまだ帰ってないか―――まぁ、とりあえず紹介しよう。」


エリナはクリスを隣に立たせる。クリスはどこか落ち着かない様子で、平静を装いつつも目を泳がせている。


「なんで転校生みたいなノリになってんだ?」


「まぁまぁ、こういうのはそれっぽくした方が良いだろう。と言う訳で、この隊に新しく人を入れる事になった。クリスと言う。」


「先程軽く言いましたが、クリスと申します。」


「彼女、実は色盲でね。前線ではなく後方からの支援が主になる。仲良くしてやって欲しい。」


「そうなの!?まぁ、ここに入れるって事は、それだけの力があるって事よね。よろしく。私はゾイサイト。こっちのはカルサイト。ちょっと怖そうに見えるけどそうでもないから、仲良くしてあげてね」


「あぁ?」


「そういうところよ。」


「今のはテメェが吹っ掛けたんだろ!」


「まぁまぁ、そうだ、カルサイト、大事な話があるから後で最上階に来たまえ。」


「んぁ?あぁ。」


「日頃の行いかしら?」


「っせぇ!!!!」


カルサイトはそう言うと、部屋を出て行った。エリナも後に続き、部屋にはクリスとゾイサイトが残った。ゾイサイトがクリスに部屋の案内をしようとした矢先、会議室の自動ドアが開く。


「ん?忘れ物?」


ゾイサイトが振り返ると、そこにはパールが居た。


「パール......?」


「......クリス。」


「...どうしたの?パール」


クリスがパールに近付いた時から、明らかに様子がおかしいパールに、クリスは戸惑っていた。


(もしかして、嫌われた?じゃあなんで?どうして心当たりが無いの?—――)


「......来て。」


「あぁ、うん。」


パールと目が合わない。あの鮮やかな景色を見る事、モノクロの世界から出る事を、パールから拒否されて居るかの様だ。クリスとパールが部屋を出ると、気まずそうに立ち尽くすゾイサイトが残った。


「......と、とりあえずこういう時って、部屋の片づけでもしとけばいいのかな?」



〈数刻前、理性の街南西部、防波堤〉



「パールさん!!」


パールの後を追って辿り着いた先は、貨物倉庫からそう遠くない防波堤だった。


「......」


「...パールさん......」


「...やっちゃった。何も出来なかった。」


「突然の事だったんです。仕方ないですよ」


パールはテトラポッドに当たる波を見ながら、肩を落とす。マーカサイトはパールと一定の距離を保ちながら、パールの様子を窺う。


「おい!居たぞ!!」


「え!?」


マーカサイトは咄嗟に振り返る。そこには先程戦ったスーツの男と同じ格好をした男達が、鈍器を持って現れた。


「しまった!増援!?」


「はぁ......」


(これ以上パールさんに負担をかける訳には...でも、波の音でメガホンの性能を完全に発揮できそうにないし―――)


そう思った矢先マーカサイトの背後から、無数の結晶が増援へと跳んで行った。


「ぐあっ!!!!」


男達は結晶の風圧に吹き飛ばされた後、数人が立ち上がる。パールはマーカサイトを横目に前に出ると、再び無数の結晶を生成した。


「パールさん......?」


「...人が悩んでる―――」


パールは結晶を思いっきり振りかぶると、増援の残った男達を睨みつけた。


「途中でしょうがぁーーーーー!!!!!!」


男達に辿り着く途中で破裂していく結晶の中には、数個の軽い岩が混ざっており、それが男達の顔面にクリーンヒットすると、彼らはそのまま意識の奥底に沈んで行った。


「はぁ......」


「パールさん、すみません。私が不甲斐ないばかりに...」


「ううん、マーカサイト、」


パールはマーカサイトの方に振り返る。その顔には、少しだけ笑顔が戻っていた。


「なんか、ちょっと楽になったかも。ありがとう。はぁ、もっかいやってみる。」


「パールさん......!」


「帰ろう!大分待たせちゃってるだろうしさ」


「そうですね!」


2人は気絶している刺客を放置して、そのままその場を後にした。


  To be continued.

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