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[愛の形、孤独の形]Episode Crys&Pearl  作者: 情緒不安定
1章『愛を望む双子』
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#19『私が瞳に映すのは』

〈暁の館、玄関〉



「とりあえず、エリナに会ってこれ渡せ。そしたら大体何とかしてくれるだろ。」


「ありがとうございます」


「いいんだよ。それとだ。」


「どうかしました?」


「......いや、なんでもない。1個だけだ。俺は気分屋なもんで、何年か前はよくすぐどっか行って皆を心配させてた。心配させるだけさせて何食わぬ顔でしれっと戻って来るのが俺だ。だから安心しろってだけな。」


「......はぁ......?」


「まぁ、そういう事だ。行って来な。」


「...行って来ます...!」



〈ペグマタイトタワー、地下1階、会議室〉



「近頃、例の文様の付いた神子石が取引されて一般市民に出回っているらしい。そして、私の派遣した情報筋によれば、今日の夕方、ここから南西の方の倉庫付近で取引が行われるとの事だ。」


「毎度ながら、その情報はどうやって仕入れてるのか気になってしょうがないが......まぁいい。んで?そいつらとっちめて色々聞き出すついでに石も回収って話だな?」


「あぁ。任せたぞ」


「へいへい。」


カルサイトは1同を連れると、目的地へと向かった。



〈島国南西部、貨物倉庫群〉



「例のモノは?」


「—――」


男はスーツケースを開けると、取引相手と思われる男に中身を見せた。


「確かに。」


「そっちのは?」


「—――」


取引相手の男は倉庫の陰に向かって手配せすると、影から人が1人入るサイズの袋を抱えた男が数人現れた。


(今だ―――!)


「っ!!!」


カルサイトとゾイサイトが、取引相手の男数人を一斉に気絶させる。

パールは倉庫の外側から回り込み、結晶を軽くばら撒いた。


「......」


「理性の街の主の依頼だ。お前を拘束させてもらう。」


「へッ、お前らが噂の、ねぇ。こっちはカジノの件でお前らに賞金が賭けられてんだ。それに、」


男が指を鳴らすと、何処からともなく同じような格好をした無数の人々が現れ、カルサイト達を囲み銃を向けた。

しかし同時に連鎖的に破裂音が鳴り、輪の一角が地に伏した。


「やるぞ!!」


「えぇ!!」

「うん......!」


3人は一斉に散らばり、次々と銃を持った連中を片付けて行く。だが、どれだけ片付けても兵が次々と現れ、気付けば3人は断絶されていた。


「なっ、しまっ!?」


「大丈夫!こんな奴らどうとでもなるから!!」


「はぁ......」


パールはため息をつくと同時に、懐から大量の結晶を取り出し、包囲を一掃した。カルサイトとゾイサイトも、残った下っ端を片すと、残すはスーツケースを持った男1人となった。


「どうする?お仲間は全員居なくなっちまったが。」


「へッ、それはどうかな?」


「あぁ、あっちの倉庫の2階に隠れてた奴なら、もう1人が今頃―――」


カルサイトが言い終える直前、ちょうど超音波とも取れる甲高い轟音が、指差した方向から響いた。


「なっ!?」


「で?どうする?」


「クソッ、こうなったら......」


「あん?」


男は後退りしながら、スーツケースから神子石を取り出す。


「俺を先に気絶させなかった辺り、どうやらお前ら知らねぇみてぇだな?この石が、どんなすげぇ力を持ってるかってのを!!!!」


「なぁ、分かるだろ?俺は構わねぇよ?戻れるんだもんなぁ、そんで金も手にはいりゃあ俺は勝ち組だ!!!だろ!!!!?」


「......?なっ!?」


男が神子石を天高く掲げ仰ぐ。男の瞳には次第にその結晶の文様が宿り、男の身体は少しずつその結晶が放つ光に飲まれて行く。


「俺は昔よぉ!あの自由に空を飛び回る鳥みたいに、飛んでみたかったんだ!!」


赤黒い光が収まるとそこには、あの博物館で見たものと酷似する、全身が液化した翼竜が現れた。


「はぁ......?」



(恐竜さん!!その石かえして!!)

(アレの出所を教えてくれ、頼む)



私達が追っていたモノは、私達の思うよりも遥かに大きなもの、そして、想像を絶する程に―――

もしこれを、人の所業とするならば―――

いや、もしかしたら最初から、分かっていたのかもしれない。

私達の住む街に今、終末が訪れようとしている事を。


「どういう事...?じゃあ、もしかしてあの石って―――」


「......気味が悪い。」


「......さっさと片すわよ。」


「あぁ......チッ、ふざけやがって。」


カルサイト、ゾイサイトの顔が急激に曇る。パールは博物館でのことを思い出しながら、結晶を構えた。


「「死ね!!!!」」


カルサイトとゾイサイトは両側に回り、気絶している下っ端の銃を回収し翼竜に向かい乱射する。


「クソが。やっぱり風穴開くだけですぐ塞がるか。」


「私も!」


パールは結晶を投げつける。液化した体表で勢いを失いくっついた結晶へと、弾丸を放つ。破裂した結晶は翼竜に大きな損傷を与え、体の一部を飛散させた。


「なるほど...パール!頼めるか?」


「うん!」


パールは翼竜を誘導し、攻撃を躱しながら、その体表に結晶を付着させて行く。カルサイトとゾイサイトも、パールから預かったいくつかの結晶を翼竜に投擲する。


「傷つけないようにするって制約がない分、こっちのがやりやすいわ!!」


「十分だろ!今だ!!!!」


カルサイトの合図でパールは翼竜から距離を取り、2人は翼竜に向かい再び弾丸を放つ。

結晶はクラスター弾の如く連鎖爆発を起こし、肉片は木っ端微塵に飛散した。


「やったか!!」


無論飛散した身体は少しずつ1ヶ所に集まり再生して行き、すぐに元通りになった。


「チッ、だったら!!!」


(マーカサイト!頼む!)


「ただ今!!!!」


カルサイトの無線を聞いて駆け付けたマーカサイトは、翼竜の背後に回り、メガホンを構える。


(パールさん!!耳を塞いでください!!)


「!!」


パールがその場に伏すと同時に、マーカサイトの超音波が翼竜を襲う。翼竜は呻き声を上げ少し怯んだが、あまり効果が無かったようだ。


「えぇ!?」


「マーカサイト!下がれ!!!」


「あっ!パール!危ない!!!!」


翼竜は伏せた状態から立ち上がりかけたパールへと向かっていく。パールはすぐそこまで来ている翼竜に寸出の所で気が付き、思わずその場で尻餅をついてしまった。


「パール!!!」


(やばい、やられる......!!)


(......は、はは......私が、クリスを護るって言っときながら、このザマ?でも―――)


クリス、私と居るより、あの子たちと一緒に居た方が、楽しいんじゃないかな?



『I found it, Tirget in—――』


『—――my eye.』



パールの瞳に映るもの。それは、ドロドロの赤黒い化け物、曇天の空、倉庫の屋根と―――

その上に立つ、何者か。私だけが彩れる。彼女の瞳に映る世界。


「そっか―――私—――――」


刹那、その場に居た全員が、マーカサイトの超音波に負けずとも劣らない轟音を耳にする。

轟音と爆風の如き風圧に襲われ、それらが収まる頃には、真っ黒な水溜まりと、ただ一点を仰ぎ見る、パールの姿だった。


  To be continued.

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