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[愛の形、孤独の形]Episode Crys&Pearl  作者: 情緒不安定
1章『愛を望む双子』
13/16

#13『金の都のお嬢様』

〈カジノ一階、スタッフルーム〉



ディーラーや警備員は表の騒動を治めに行っており、人一人居やしなかった。

それでも足音を立てないように小走りで移動していると、一番前を走るカルサイトが立ち止まる。


「ちょっと待て。そこで動くなよ」


カルサイトが空いているドアの死角から無効を見つめる。そこには携帯を大事そうに抱えながら、電話している人の姿があった。


「はい―――はい―――承知しました。では―――」


男が電話を切ったのを確認すると、カルサイトは音も無く近づき、男を気絶させ、そっと地面に寝かせた。


「行くぞ。」


「余罪がどんどん増えてく...これ帰り大丈夫なの?」


「エリナが何とかしてくれるんだとよ。」


「あの人...こういう任務の時いっつも権力を行使してるわよね...ヘイト貯めたりしないのかしら...」


そんな小言を言いながら、1同は2階へと向かった。



〈カジノ2階、セキュリティルーム〉



「っ!?」


4人が薄暗い廊下を駆けていると、正面の曲がり角から人が出て来た。


「私に任せて...!」


咄嗟にゾイサイトが人影に向かい距離を詰めると、腹部に打撃を与え、呼吸出来なくなったところを頭を打ち気絶させた。


「ハァ......やり過ぎだ。」


「でもこうしないと応援呼ばれちゃうでしょ?」


「全く、とりあえずそれ隠せ。殺してねぇだろうな?」


「さすがにそこまでしないわよ。」


ゾイサイトが近くにあった鉢植えの死角に男を寝かせると、足音を立てず、周りの音を聞き取れるようにゆっくり3階へ向かう。


「にしても、さっきの動き凄かった!」


「まぁ、判断が早かったのは褒めてやる。」


「ふっふん!こんなもんじゃないわよ!」


「あまり話してると、声でバレちゃいますよ?」


「あぁ、すまん。」


皆が再び曲がり角を曲がると、今度はガラス張りの明るい部屋が見えた。

カルサイトが部屋の中をのぞくと、そこには監視カメラのモニターが大量に映っていた。


「...ん!?」


カルサイトはその中に、まさに今、自分たちが映っているモニターを見つける。

そして、後ろを振り向くと、やっぱりそこには赤い光があった。


「しまっ!?」


「居たぞ!!」


正面から、部屋の入口から、警備が続々と出て来た。


「どうしよう、こんな数さすがに......」


「皆さん、下がって耳を塞いでください。」


「え?あぁうん。」


耳を塞ぎ伏せる3人の前にマーカサイトが出ると、警備が一斉に向かって来ると同時に、マーカサイトは神子石のメガホンを取り出した。


「ハッ、そんなもの、耳栓があれば―――」


「音じゃなくって、」


マーカサイトは息を吸いながら、メガホンのスイッチをONにする。


『超音波で―――――――!!!!!!!!』


辺りは耳鳴りの様な音に包まれ、後ろに居た3人も少し怯んでいた。

耳鳴りが収まる頃、目の前に居た人々はおろか、部屋の中に居た人さえも皆気絶していた。


「目が覚める前に行きましょう!」


「うぅ...まだキーンってする...」


4人は今度こそ、3階に辿り着いた。



〈カジノ3階、VIPエリア最奥〉



1階、2階の雰囲気から更に一転、ここには指や首元に光り輝く宝石や金銀を纏った、富裕層達が娯楽を求めて集まっていた。壁が分厚く高い位置にあるせいか、外の喧騒などまるで気にも留めていないようだった。そんなエリアの最奥、一際派手なドレスを纏い、カウンターに腰掛けながら、グラスを仰いでいる女性が1人。


「オーキッド様、賊が侵入いたしました」


「フフッ、安心なさい、誰も地下深くにある金庫には近付けないのは、貴方もよく知ってるはずですわ」


「それが...オーキッド様、賊は金庫ではなく――」


オーキッドと呼ばれた女性の横で、扉が勢い良く開く。


「あら......?」


1同は室内に突入するなり、その場に居た全員の視線を浴びた。


「......は?」


「もしかしてこの階、この部屋しか無いの!?」


カルサイトは足を上げたまま固まり、状況を理解する為周りを見渡した。すると、1同の横で、笑みを浮かべながらこちらを見つめる女性が目に留まる。翡翠色の瞳、後頭部から延びる螺旋状のポニーテール。


「ごきげんよう、その扉、錆びてて私にも開けられなかったんですの。開けてくれて感謝しますわ。」


「はぁ......」


「それで、こっちに来たという事は、そういう事ですわね。いいですわよ、」


オーキッドは眼配せすると、その階に居たオーキッドとカルサイト一同、スタッフ以外の人間を帰らせた。


「皆さん、随分素直に帰って行くんですね」


「この階に来れる人達は、みんなわたくしの友達なんですわ。と言っても、金で動かしてるに過ぎませんが。」


「汚い......」


「若いですわね。純粋な人は嫌いじゃなくってよ。だけど、大人の世界なんて所詮こんなものですわよ。貴方も心当たりがあるのではなくって?」


「それは......」


「ハァ...おい、お前がオーナーでいいんだな?」


「えぇ。いかにも。ですがお前などと言う名ではございません」


オーキッドが話している内に、室内にあったテーブルは全て綺麗に片付けられ、オーキッドは席を立つと、部屋の中央、シャンデリアの下に立つ。


「わたくしの名はジェイド・オーキッド、栄えある翡翠財閥の一人娘。それで?貴方方は、わたくしに何の御用があって?」


「面倒だから直接聞くぞ。本能の街に金を流してるってのは本当か?」


1同もオーキッドと同じく、灯りの下に出る。


「そうだと言ったら、貴方方はどうなさいますの?」


「エリナからの依頼で来ている。お前を拘束させてもらう。聞きたい事が山ほどあるんでな。」


「へぇ......それって、これの事ですの?」


オーキッドはポケットから神子石を取り出し、目の前にかざす。黒く光るその石には、博物館で回収したものと同じく赤い文様があった。


「悪いけど、これは渡せませんわ」


オーキッドは、神子石を片手で握りしめる。


「これは、VIPでも一般の方でもない、"特別なお客様"にのみ渡しているんですの。ですから―――」


オーキッドは次にその場で1回転すると、両手を頭の後ろに回した。


「もし、どうしても欲しいなら!」


頭の後ろにあった手が、勢い良く振り下ろされる。その場に居た皆の脳が、起こった事を理解する頃、オーキッドの両手の先には、機関銃が握られていた。


「力づくで奪い取ってみて下さいませ!!」


「はぁ!?」


カルサイト達は咄嗟に4方に散る。気付けばスタッフもその場から消えており、機関銃を心置きなく放つには十分だった。


  To be continued.

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