1-40 バリバーン
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実久の反応を見る限り、こいつは総本部直属ハンターってことで確定か。
直属ハンターのレベルは確かランク制度でS。それもSランクの中でも上位だったはずだ。
あのマーレ師匠でさえ同じSランクとは言ってもその中では下位だって話なんだが、はあ、上には上がいるって言うけど、俺の安全を確かにする道は先が遠いな。
「でだ、そっちの少年が背負ってるその子は?」
「下の研究所で実験台にされていた子供たちの唯一の生き残りだ」
「……そうか」
目が覚めたばかりで頭が回転していないのか、背中の少女は「えっ?」と疑問符を何個もくっつけながらキョロキョロとしていた。
「あんたが総本部直属ハンターって証拠がない以上、この子を差し出したくはないんだが、通してくれるのか?」
「確かなそうだな。証拠もねえ奴に大切な証人は渡せねえよな」
そう言うと楽しそうにがっはっはっと笑いだしたバリバーン。
それにしてもこの男の言い草。気に入らないな。
「違う。この子の安全が保障出来ないからだ」
「……ほう」
俺の言葉に笑うのを止め、真剣な表情で俺の顔を見つめるバリバーン。
まるで値踏みしているかのようなその目。不愉快だな。
「なるほどな。だが、こちらとしてはお前らが下の研究所の者じゃねえって確証がねえからな」
「通せないってか?」
「……そうなるな」
俺とバリバーンの視線が激しく交錯する。
ピリピリとした空気の中沈黙が続いた。
「……がっはっはっ」
突然笑い出したバリバーン。
……こいつ、頭大丈夫か?
「すまんすまん。あまりにも見込みのある餓鬼だったからな」
「餓鬼餓鬼言うな」
「がっはっは」
俺のお言葉にやはり笑うバリバーン。
「ちょ、ちょっとあんた! 相手は総本部直属ハンターよ!? 言ってみればこの国の貴族なのよ!?」
「力ある者はその力によって貴族と同じ扱いをされる。それがこの国の常識だって事は知っている。だけどな。……いや、だからこそこいつ相手には普通に、素でいた方がいいと思うぞ?」
「はぁあ!? なんでよ!」
俺の言葉に実久は驚き、バリバーンは声は出さなくなったものの楽しそう笑っていた。
「力を恐れられ、権力を恐れられ、誰からも一歩引かれた状態で話される。想像してみろ。嫌だろ?」
誰もが自分の前では良い子ぶる。それを良しとする奴もいるだろうが、少なくともこの男は違うだろうな。
俺はそう確信していた。
「……へえ」
ニヤリとした笑みを浮かべるバリバーンを見て俺はやはり確信した。
「だ、だからってあんた……」
「その餓鬼の言う通りだ。別に普通にしてていいぜ。それと、証拠だったな。そっちのお嬢ちゃんならこれ見せればわかるか?」
そう言ってバリバーンは何かを取り出すと、それをぽいっと実久に投げ渡した。
「わっ」
急の事で驚きながらもそれを受け取る実久。
あれは手帳か?
「まさか、これってステカじゃない!?」
ステータスカード。通称ステカ。
まあ、身分証明書みたいなもんだな。
だが、一つ言える事。それは決して人に渡していいようなもんじゃないはずだぞ?
「そう慌てんなお嬢ちゃん。俺はお前らを信用してるんだぜ?」
そう言ってニヤリと笑うおっさん。
なんかうざい。
恐る恐るといった風に手帳の表紙を見る実久。
俺も隣から覗いてみると。
そこにはこう書かれていた。
[氏名【バリバーン・※※※】
ランク【S】
クラス【1st】
所属ギルド【刀和国ギルド】
許可拠点地【刀和国ギルド総本部】]
……まじもんだこいつ。
このステカは偽造が出来ない特別なものだ。細かい詳細は省くとして、ついでに俺の見覚えのない項目も放っておくとして、ともかく今証明されたのはこいつが総本部直属ハンターだって事だ。
「これで証明出来ただろ? その子、いいか?」
「……ああ」
少し迷ったが俺は少女を下すと未だにオロオロとしているその少女をバリバーンに引き渡した。
「えっ……あの……私……」
「お嬢ちゃん。長々と話して悪かったな。とりあえず君はもう救われた。おっさんと一緒においでいいね?」
少女の前でしゃがみ顔の高さを合わせたおっさんがそう言うのだが、……うむ。きもいな。
言わないけど。
次回更新は明日です!
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