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1-39 壁

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「壁? 何故に?」

「……あはは……」


 乾いた笑みを浮かべている実久。そんな実久に俺はジト目を向けてみる。


「何か言うことあるか?」

「え、えーとね」


 ここでソッポを向く実久。しかし残念、ピピカが定位置を離れ、回り込んでいた。


「どうしたのー?」


 子供のような、無邪気な笑みを浮かべているピピカに実久の表情が揺らいだ。


 ピピカ。俺は知っているぞ? お前のそれがわざとだって事。


「ご、ごめんなさい! その、いろいろあって防護壁落とされちゃった……」

「……えぇー」


 普通なら外からの進入を防ぐための防護壁なんだろうが、何がどうしてそうなったのかたった今、俺たちの脱出を邪魔していやがる。


「実久。どうするつもりだ?」

「わ、わかったわよ! そんな目で見ないでよ!」


 俺のジト目とピピカの純粋な瞳(偽物)に晒されて顔を真っ赤にしながらそう叫ぶ実久。

 メンタル弱いなー。


「壊せばいいんでしょ! 壊せば!」


 腕を引き、腰をやや落とす実久。


 引かれた腕に電撃が集まっていき、そして拳と共に前方に打ち放たれた。


 その瞬間。唐突に防護壁が上がった。


「……へっ?」


 俺の目にはそれがまるでスローモーションのように見えた。


 壁がなくなった事でそのまま拳を進み続ける事になった実久。その先にあるのは人影。


(まずい!)


 実久の拳はスピード威力共に高い。そんなのが直撃すればたたじゃ済まないだろう。


 もう戦いは終わったんだ。上から来る人たちに怪我をさせるのは良くない。


 実久の拳はもう止まらない。本人に

すら止める事はもう出来ないのだろう。


 俺は少女を背負っているせいでうまく動けない。だめだ! 間に合わない!


 拳がそこにいる者にあたる瞬間。実久は反射的にぐっと目を閉じた。


「おっと」


 そんな言葉が聞こえると同時に、実久が恐る恐る目を開けると。


「あぶねえお嬢ちゃんだな」


 実久の拳を片手でがっしりと受け止める男性の姿があった。


「……っ!」


 少しの間唖然として固まっていた実久はハッとしたように己の拳を掴んでいる男の腕を振り払うと、緊張した顔で後ろに跳んで下がった。


「警戒!」


 そう叫ぶ実久の声で俺もまた遅れて警戒態勢へと移行した。


 そうだ。実久の一撃をこいつは易々と受け止めやがったんだ。

 そしてこいつは壁の向こう側からやってきた。つまり、ギルドの者なのだろう。


 ならば、今は的だ。


 短い茶色の髪をオールバックにしている中年の男性。年齢は四十代前半と言ったところだろうか。


 ともかく確定的なのは、こいつ強い。


「そう警戒すんなやお嬢ちゃん」

「誰がお嬢ちゃんよ!」

「お嬢ちゃんはお嬢ちゃんだ。お嬢ちゃん」

「あんたっ!」

「ばかっ!」


 男のあまりにもわかりやすい挑発に乗り、飛び掛かろうとする実久。

 跳びながら引かれた拳には迸る程の電撃が集まっている。


「待て馬鹿!」


 俺は二人の間に割って入ると実久の拳を受け止めた。

 ぶっちゃけ痛いのだが、痛みは我慢出来る。傷は直ぐに回復出来るから放置でいい。


 それよりも俺はこの男に意識を向けていた。


「へえ。なかなか速えな坊主」

「なんで止めるのよ!」

「無駄だ。真正面から一人でやっても勝ち目がないだろ!」

「け、けど!」


 実久が言いたい事はわかる。

 ここが出口である以上。こいつを突破しなければ出る事は出来ない。


「う……うぅ」

「ーーっ!」


 背中から聞こえるうめき声。

 やばいな。とっさに高速移動をしちまったからな。どうやら背負ってる少女が目を覚ましたらしい。


「こ、ここは……?」

「あん? そいつは確か……」


 目が覚め、頭を上げた少女の顔を見て男は何やら思案顔になっていた。


「……ああ。そういう事か」

「ーーっ!」


 さっきまでこの男は表面上は普通にしながらも、俺たちの動きを常に警戒していた。

 だが、今それを完全にやめやがった。


「……どういうつもりだ?」

「あん? 気付いてたのか?」

「……ああ」

「へえ。最近の餓鬼はレベルが高えな」


 そう言ってケラケラと笑う男。

 こいつ、何を考えていやがる。


「まあそんなに警戒すんなや。俺はお前たちを捕らえるつもりはねえ」


 俺が微かに腕を腰の刀に近付けると同時に警告するかのように言う男。


「あんた……ギルドの者だろ」

「ああ。そうだが?」

「それなら俺たちを捕らえに来たんじゃないのか? 今の俺たちは侵入者だからな」

「そうだな。だが、もしもその侵入が俺たちギルドのためだとしたら? ならばそれを捕らえるのは恩を仇で返すようなもんだろ? 俺はそんな事しねえ」

「……何がいいたい?」

「わかんねえか? 俺はギルド総本部から派遣されて来たんだよ。目的はお前らと同じ、ここの地下にあると思われる非合法的な研究施設の調査だ」


 ここはギルドのテニント支部でしかないからな。どっかに本部があると聞いたが、だが、本部の場所は隠されているはずだ。

 マーレ師匠が嘘をつく必要はない。つまり、こいつが嘘を言っている?


 ……いや、違う……。


「ーーっ! まさかっ」

「……ニッ」


 驚愕の表情を浮かべる実久。そんな実久を見て男は楽しそうに笑った。


「ーーっギルド総本部直属ハンターなの?」

「おうよ」


 ギルド総本部は場所が隠されている。つまり高い重要度を持っているのだが、そこを拠点とし、そこから仕事を貰う選ばれたギルド員、ハンターがいるという話を聞いた事がある。


 一人一人が化物みたいな実力を持っているらしく、あのマーレ師匠ですら直属ハンターと比べると小さく見える……とか。


 つまり、この国でトップクラスの実力者って事だ。


「俺はギルド総本部直属ハンターの一人。バリバーンだ」

 次回更新は明日です!

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