1-27 鎧のくせに強い……だと……
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俺の刀と鎧男の刀が激しく鍔迫り合いを繰り広げる。
(サンキューピピカっ)
『うん!』
姿なき声の正体こと、我が契約精霊ピピカに心の中で礼を言うと、俺の心の中に住んでいるピピカには言葉として聞こえているようだった。
「はっ!」
マーレ師匠との修行のおかげで術名を詠唱する事なく、完全無詠唱で使えるようになっている式『解除』を起動する。
通常状態の約三○パーセントから一気に一○○パーセントまで引き上がった力で無理やり押し通おろうとするのだが、だめだ。ビクともしない。
純粋に力の差があり過ぎるらしい。
いや、本当にそうなら今こうして鍔迫り合いが拮抗する事もありえないのか。
手加減、あるいは遊んでいるわけでもないだろう。
つまり、これは力以外の何かという事か。
「クックックッ。お主、剣術においては素人のようだな」
「だったら悪いかよ」
「随分と力任せ。凶暴な太刀筋だ」
確かにこいつの言う通り俺の剣術は力任せ、刀の斬れ味任せのごり押しだ。
だが、こいつの剣は違う。
力じゃおそらく勝っている。だがその力を技術によって抑え込まれているのだ。
このまま鍔迫り合いしていても良いことはない。
そう思った俺は上半身は変わらずに足を振るう。
「どうした? 終わりか?」
後ろに跳ぶ事で蹴りを交わした鎧男があざ笑うかのように言う。
日本の鎧は他国の鎧と比べると金属を減らしているため軽いと聞いたことがあるが、それでも飛んで跳ねるなんてなんつう機動力だよ。
俺の戦闘スタイルは基本的に回復魔法によってほぼ永久の耐久性を得て、その上でリミッター解除による馬鹿力でのごり押しだ。
この刀、浅斬を得てからは更に攻撃力が上がっているのだが、解除した攻撃でもこいつには通用していない。
俺にまともな剣術はないからな。たとえフェイントを入れたりしたとしても、そんな付け焼き刃はまず通用しない。
むしろ俺の方が振り回されてしまうかもしれない。
詰んだ。
っと、ちょっと前なら思っただろうが。
俺は左手を刀から離すと、それを鎧男に向ける。
「ほう。魔法が使えるか。だが、法具を着けていないぞ? 無論、その浅斬は法具としての機能はない。どこから式を用意する気だ?」
「確かにな。法具なんて持ってないし、攻撃式なんてない。俺はな」
俺の言葉に鎧男がどう思っているのかは仮面のせいで読み取る事が出来ない。
だが、おそらく困惑しているのだろう。
「言ってるだろ? 俺にはないって」
「ーーっ!」
ガシャと鎧を鳴らし、焦ったように周囲へと意識を巡らせる鎧男。
残念。そんなことをしても意味はない。
「こっちだよ。ピピカ!」
俺の呼び掛けに応じるようにして、心臓のあたりが明るく光る。
「はいはーいっ!!」
光の中から出てきたのは掌大の幼女。
ん?
「……お前、縮んだか?」
「ちょっと! 現世で初めての登場シーンだよ!? かっこ良く決めさせてよ!」
「いや……けどよ」
前に会った時は確かに十センチくらいあったと思うのだが、今のこいつは掌と同じくらいだ。
五センチ?
「……まさか、精霊使いか?」
「まー、そんな感じだな」
明らかに驚愕の感情を声を乗せている鎧男。なんか嬉しい。
「剣じゃ勝てる気がしないからな。てことで、ピピカ。いきなりの初陣だが大丈夫か?」
「問題ナッシング! ボクの力に驚愕するが良いよ!」
翼をパタパタさせて回るようにして上に飛び、俺の頭の上までやってきたピピカはちっこい両手を鎧男に向ける。
「『精霊魔法・雷電』」
ピピカがそう唱えると同時にピピカの掌からいくつもの電線が迸った。
雷撃の数は軽く一○を超えている。それらは同時に鎧男へと迫った。
雷撃のスピードは物理の法則を考えるとありえないほどに遅い。
しかし、電気とは考えずに遠距離攻撃だと思えばそのスピードは十二分に速い。
そんなのが同時に十本以上だ。
避けることは不可能だろう。
しかし、いつの間にか鎧男は剣を大きく振り上げていた。
「ふんっ!!」
そしてそれを激しい気合と共に振り下ろす。その瞬間。鎧男へと迫っていた十本以上の雷撃が、一瞬にして掻き消されてしまっていた。
「そう驚くことはないだろう。我の刀は妖刀。この妖刀の持つ特異能力は本来ならば不可能な幻理的飛び道具を斬ることが出来るというものだ」
鎧男はそう言うとガシャと鎧を鳴らした。
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