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1-28 ちょ、どこぞのあーるぴーじぃーですか!?

 ブックマーク評価共にありがとうございます!

 魔法によって作り出された火の弾丸や水の弾丸は通常の武器で斬ることはできない。


 それは俺がマーレ師匠から教わったこの世界での常識の一つだった。


 だからこそ魔法弾による攻撃は基本的に避けるか、同じ魔法弾で相殺するのが基本だ。


 魔法を魔法で打ち消せる事を利用して、武器に魔力を纏わせる事で魔法に干渉出来る魔法剣と化す技術はあるのだが、これの難易度は凄まじく高い。


 魔法弾の攻撃速度は本物の銃火器と比べれば遅い。だけど威力とか攻撃範囲とかはそれ以上。


 しかも魔法は魔法でしか打ち消せないという特性上、戦闘において魔法が使えるというのは凄まじいアドバンテージになるのだが、この男を相手だと意味がないらしい。


 魔法弾を撃つにはどうしても一瞬の間が出来てしまう。

 その間を隙としないように、互いの動きの読み合いが常だ。


 だが、この鎧男は防御において間を必要としていない。


 弾丸直径が長く、弾速も遅い魔法弾ではそれを斬る事が出来る者からすれば全く怖くない。


 しかもこの野郎はピピカの電撃を十本以上ほぼ同時に防ぐ事が出来るレベルだ。


 以上、まとめると。


(ピンチってヤツだな)


 魔法はほぼ意味がない。ならば直接攻撃しかないのだが、俺の剣はこの男には通用しない。


 今度こそ本当に詰みだ。


「あっれれー?」

「ぜっんぜん役にたたないな」

「そ、そんなことないよ! 今のは様子見! 次がボクの全力だもん!」


 契約ってやつをしたからなのだろうか。

 俺はさっきの攻撃が全力ではないとわかっていた。


 だからこれは言い訳なんかじゃない。ピピカは本当に全力を出していなかったのだ。


「ピピカ。近くに味方はいないはずだ。それにいたとしてもさっき会った奴ならわかるだろ?」

「えーと、あのかわいこちゃんの事?」

「そうだ。精霊として大天才のお前なら仮にあいつがいたとしても巻き込まないように制御する事出来るよな?」

「だ、大天才!?」

「そうだ。お前はこの俺の契約者。大天才精霊のピピカだろ?」


 こいつの性格はなんとなくわかっている。


 確実にこういうよいしょには弱いはずだ。


「と、当然だね! ボクは大天才精霊だからね!」

「それじゃあもう加減なんてする必要ないだろ?」

「ーーっ! き、気付いてたの?」

「契約の影響かね。お前の感情がわかるようになった。お前今慌ててるだろ?」


 一撃目は様子見だって他の誰でもない。こいつ自身が言っていた事なのだが、俺の言葉の意味がそれとはまた別のだとわかったんだろうな。


 もしかすると俺がピピカの心をなんとなく読み取れるようになったのと同じように、ピピカもまた俺の心をなんとなく読み取れるようになったのかもしれないな。


「なんで本気を出そうとしないのかまではわからないが、遠慮する必要なんてないだろ。全力を見せて俺に見せてみろよ」

「……わかった!!」


 迷うような素振りを見せた後、覚悟を決めたように力強い返事をしたピピカ。


 翼をパタパタと激しくはためかせ、俺の頭の上をクルクルと回る。


(何やってるんだ?)


 声に出さないのは一生懸命なピピカの心が流れてくるからだ。


 ピタッと回転をやめたピピカは初期位置と同じ、俺の頭上で小さな両手を前に突き出した。


「いくよ!」


 ピピカが高らかに叫ぶと同時に、ピピカの全身から激しい電撃が迸る。


「威力は高く! 規模は小さく!」


 ピピカの全身から放たれていた電撃が意味のない拡散をやめ、俺の身体へとまとわり始めていた。


(こいつ……)

(こういう使い方を想像してたよね?)


 どうやら心を感じるってのは思っていた以上に便利らしい。


 こいつと契約した時。こいつの属性が雷だとわかった時。もしかすると出来るかもしれないと思った。


 実久と同じ、雷鳴による肉体の超反応。


「ほう。何か策があると思って見ていれば、なんてことはない。電撃を纏っただけか。それに威嚇以外になんの意味があるというのだ」


 纏っただけだと?

 もしかして鎧男はこれがどういう結果を及ぼすかわかっていないのか?


「属性纏いは中級者以上ならば大抵の者が扱える技術。精霊の力を使い、通常よりもはるか上の力を纏っているとはいえ、その技術は通常攻撃に属性ダメージを追加するというものだ。当たらなければそもそも意味は無し」


 やっぱりそうだ。

 良く良く思えばそうなんだ。

 実久は元々物理世界の人間だ。人間の身体が微細な電気によって動いている事を知っていても当然だ。


 だけど、科学ではなく、魔法が発達し、なおかつ勉学の基準が低いこっちの世界じゃそれは一般的に知られているような事じゃないんだ。


 属性纏いでも電気の纏いは普通とは違う。

 それを見せてやる。

 限界突破と電纏。その併用によって生まれる絶大なパワーを。


「ピピカ!」


 俺の身体に流している電気を操っているのはピピカだ。

 俺とピピカは心が繋がりあってある。

 掛け声一つで俺がどういう動きを身体に強制したいのが伝わるはずだ。


「おっけー!」


 刹那。


 鎧男の足元で刀を引く俺の姿があった。


「何っ!?」


 瞬間移動のようなスピード。

 動くこと雷霆の如し。


 出現と同時に刀を切り上げる。あまりにも突然の事で鎧男は反応出来ていなかった。


 そして、俺の刀は鎧男の顔面を斬り裂いた。


「ちっ。半歩下がられたか」


 俺が狙ったのは胴だ。

 しかしそこには当たらず顔面に当たっている。

 反射的に後ろに下がったっぽいな。それに顔面に当たったと言っても浅い。


 追撃を加えようと上段にある刀を両手で握り直し、振り下ろそうとするが、それよりもはやく鎧男は後ろに跳んでしまった。


 刀を右手一本で持ち、離した左手で己の顔を覆い隠している鎧男。


 男の足元に見える何かの破片。あれはっ仮面の残骸か!?


 どうやら俺の刀はあのやろうの素顔を隠している仮面を叩き切ったらしいな。


「クックックッ。驚いたぞ。まさかこれほどの力を持っているとはな」

「まだまだこんなもんじゃないぞ」


 今のは雷纏による超反応と限界突破によって引き上げられている身体能力を併用し、スピードにおいて全力を出しただけだ。


 斬撃そのものはスピードしかない。


 だが、この刀は本当に凄い。斬撃にスピードがあればあるほど斬れ味を増しているような、そんな気がする。


「どうする? こちとらまだまだ余裕だぞ」


(何を迷ってるの!? はやく倒しちゃおうよ!)


 今も俺の頭の上にいるピピカが念話を送ってきた。


 確かに、何故かは知らないがあいつは素顔がバレる事を避けているように見える。


 刀は両手で使うものだ。片手しか使えない今の奴の戦闘能力は随分と落ちているはずだ。


 それに比べてこっちは念話ができるほどまでに心を通じさせる事が出来ている。


 今もピピカとの心的繋がりが深くなっていくのを感じている。


 つまり、完全な優勢なのだ。


 だが、俺にこいつを斬る事は出来ない。


 さっきまではがむしゃらだった。だから迷いなく、こいつの胴を真っ二つにするべき刀を振るえた。


 だけど今は俺に分があるのだ。頭も随分と冷静になっている。


 今の状態じゃ流石に手加減までは出来ないだろう。


 つまり、こいつを倒すということはこいつを殺すこと以外ない。


 こういう場合、俺がこいつを殺したとしても俺に何か罪がうまれることはない。


 だけど、俺は元々日本で生まれ育ってきたのだ。


 理由がどうあれ、人殺しは、アウトなんだ。


「……クックックッ。なるほど。人を殺した事がないか」

「ーーっ!?」


 ばれた!

 いや、こいつなら気付いて当たり前か。


「このまま戦えば負けるのはおそらく我だろう。だが、こちらから攻めなければお主は攻撃出来ぬみたいだな」


 確かにもしも攻撃されたら俺は見守るために攻撃出来るだろう。たとえそれでこいつを殺すことになっても。


 だけど、今のこいつからは攻撃の意思を全く感じない。


「クックックッ。ここは引くこととしよう」


 そう言って俺に背中を向ける鎧男。


「ま、待てっ!」


 待たれたかと言って何かを出来るわけじゃない。

 だけど、そう言う以外に俺はない。


「クックックッ。ここでは我の負けだ。次会う時には互いにさらなる高みへ」


 鎧男はそう言い残すと、暗闇の中に消えて行った。

 次回更新は明日です!

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