1-25 いくぜ!
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「準備は良い?」
「ああ」
テニントの街のほぼ中央にデカデカと建っている建物。
昔はギルドの施設なんてない田舎だったのだが、観光地となり、人が増え、街そのものの規模が徐々に大きくなっていくにつれてそういった施設も増えていた。
腰に差した剣。それから己の内部から確かに感じる己ではない存在。
手を胸に当て、それを確認した俺は実久に頷きながら言う。
「行くわよ」
実久は特に何も持っていない。
何か道具を持っているとすれば、彼女の左手首にあるブレスレット型の法具だけだ。
二人は最終確認を終わらせると、共に宿屋を出た。
宿屋があるのは三等区だ。
規模が大きくなった事で五等区まであるこの街だが、中央に行くつれて良い環境の一等区へと近付いていく。
ギルドがあるのはそんな街のど真ん中。
身分に関係なく歩く事を許されているギルドから四方向に伸びる大道。
昼間はそれなりの人が見えるのだが、こんな真夜中になるとそんな人影はない。
そもそも夜は外出しないのが普通であり、街灯は消えていた。
光なんて月光しかないその道を、俺と実久は走る。
「見えた」
正面にそびえ立つテニントギルド本部。
当然門は閉まっている。
が。
「一○○パーセント!」
俺は全身のリミッターを外すと同時にその門に拳を叩き込む。
本部を守る頑丈な防壁でもある門が一瞬の静寂の後、いくつもの瓦礫となって崩れ落ちる。
電気を体内に流し込み、幻理的に肉体のリミッターを安全に解除する実久のそれと違い、幻理をあまり活用せずに、ただただ魔法によって直接肉体のリミッターを外す俺のそれは消費する魔力が凄まじく少ないのが特徴だ。
俺に内包されている式。つまり回復式による自動回復を使えばたとえ一○○パーセントの力を使ってもすぐに回復出来るからな。
実久よりもデメリットが少ない。
門を真正面から叩き潰したからか、正面の建物からサイレンのような警戒音が鳴り響く。
いやー、ご近所の方々ごめんなさいだな。
「なあ実久。上の奴らは無罪なんだよな?」
「そうよ。地上の人間はほとんどが地下でやっている事を知らないはずよ」
「てことは加減した方がいいか?」
「そうね。トドメはアウト。気絶で止めなさい」
「……了解」
確認が終わると同時に俺たちは建物内に真正面から進入した。
「この危険分子ども! 逃がさんぞ!」
進入すると同時に何やらごっついおっさんが立ち塞がった。
多分ギルドのメンバーなのだろう。まあ、事情を知らない奴らからすれば俺たち危険分子だよなー。
「うっさいっ!」
俺が動こうとした瞬間、隣を並走していた実久の声が届き、同時に視界の端で電気が迸る。
おっさんの正面に高速移動した実久は即座に拳をおっさんの腹に叩き込む。
すると、おっさんは苦痛の表情を浮かべる事すらなく、そこでおねんねしていた。
「お見事ー」
「さっさと地下いくわよ」
「どこから?」
立ち止まり、行き先を決める俺たちだが、肝心な地下への行き方がわからない。
キョロキョロしてみるが、上に行く階段は見えるものの下に続く道はなし。
まあ、非合法な研究をしている施設なんだ。わかりやすい道なんてないよなー。
「実久。ちょっと下がってろ」
疑問符を浮かべている実久を下がらせ、俺はもう一度拳に力を込めた。
「一○○パーセント!」
リミッターを解除した一○○パーセントの力を持って、俺は床に拳を叩きつけた。
「道がないなら作るまでだ!」
この地下に施設があることはわかっているのだ。
ならばわざわざ道を探す必要なんてない。
床を打ち崩し、それを経路とするだけだ。
「うわー、派手ね」
後ろで呆れた様子の声が聞こえるが無視だ無視。
「ほら、早くいかないと面倒なのがくるぞ」
煙のせいで現在視界が皆無なのだが、正面の方からいくつもの足音が近付いているのがわかった。
「そうね」
戦っても負けはしないと思うのだが、一応な。
それに消耗が少ない方が良いだろうし、俺たちは今目の前にある穴へとその身を投げた。
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次回更新は明日です!
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