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1-11 故郷の者

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「木蓮さん。さりげなく居ますけど、どうしたんですか?」


 俺がそう言うとマーレ師匠も、そういえば、といいだけな顔を静かに立っている木蓮さんに向けた。


「どうした木蓮。食事の時間にしてはまだ早いと思うぞ?」


 今回。この今のところ一週間続いている修行だが、内容はぼぼ俺とマーレ師匠の模擬戦と言う名の一方的なイジメだ。

 つまり、一対一であり、木蓮さんはそこに参加していない。


 彼女の役割は俺とマーレ師匠の食事係のようなことをしてくれている。

 木蓮さんが食事を持ってきてくれ、それを食べている時間が唯一の休憩だ。


 睡眠? 気絶というなの睡眠は多少取っているな。……うん。


「客人よぉー」

「客人? 誰だ?」


 チラリと俺に視線を向けた後に視線を木蓮さんに戻してから問うマーレ師匠。


「あなたの弟子よぉー」

「……弟子? ーーっ! 帰ってきたのか!?」


 最初は険しい顔をして疑問符を浮かべていたマーレ師匠だったが、その弟子とやらに心当たりがあったのか嬉しそうにしていた。

 花が咲くような笑みとはきっとアレの事を言うのだろう。そう、思う。


「入って来ていいわよぉー」


 この部屋唯一の扉に声をかける木蓮さん。少しの間を置いた後、ガチャリと小さな音をたてつつ、ゆっくりと扉が開かれた。


「失礼します。お久しぶりです。ししょ……う……えっ?」


 入ってくるなり早々に礼をしているその少女は顔をあげると同時に固まった。


「えっ?」


 それは俺も同じだった。


 やってきたその少女。美少女の三文字が凄まじく似合う、夜空のように綺麗で長い髪を靡かせる彼女。


 中学時代でのアイドル。

 実久がそこにいた。


「……あららぁー?」


 互いの顔を見詰めたまま固まってしまった俺と実久を交互に見ながら木蓮さんが面白そうにつぶやく。


 そのつぶやきが引き金になったかのように、二人の硬直がほぼ同時に解けた。


「な、なんであんたがこんなところにいるのよ!!」


 それはこっちのセリフだ。

 慌てた様子で先に口を開いた実久に俺が思ったのはそれだった。


 それともう一つ。


「……お前、誰だ?」

「はぁ!? あんたこのあたしを知らないの!?」

「……違う。そうじゃない。その顔は知ってる。だけどな、そのキャラ。誰だ?」


 俺が目を細めながら言うと、実久はやばっとでもいいだけな風に眉を顰めた後、自分を落ち着かせるかのように一回軽く顔を伏せていた。

 元に戻した時、彼女の顔は冷静になっていた。


「ふぅー」

「なんだ。お前ら知り合いか?」

「いいえ。こんな猫かぶり、俺は知らないですよ」

「誰が猫かぶりよ!」


 深呼吸をして落ち着いた様子の実久にマーレ師匠がそう言うが、うん、こんな奴知らないな。


「……ほう。猫かぶりか」


 ニヤリとした笑みを実久に向けるマーレ師匠。その笑みを見て実久の表情が悪くなった。


「そういえばお前、最初と今じゃだいぶ受ける印象が違かったな」

「そ、それは……し、仕方がないじゃないですか!」


 何やら慌てている様子の実久。この二人の過去に何があった?

 まあ、あの様子からして聞かない方がいいっぽいから聞かないけど。


「一輝君? ミクちゃんとはどんな関係なのかしらぁー?」


 ニコニコとしながら聞いてくる木蓮さんだが、あなたが思っているような関係じゃないですよ?


「木蓮。既に聞くまでもないだろ。二人の共通点は?」

「……そうねぇー」


 笑顔から一転して真面目な顔をほんの一瞬見せる木蓮さん。


「……師匠が新しく弟子を取ったって聞いたのでこうして来たんですけど……まさか、あんた?」

「そうなるな」


 俺の返事に深いため息をついた後、俺の顔をジーっと見つめる実久。


「……なんだよ」

「いいえ。あんた。冷静ね」

「そうか?」

「……ええ。あれから約一週間。もう立ち直ったって事なのかしら?」

「……立ち直る? 何からだ?」

「! そう」


 迷う素振りを見せた後、視線を俺からマーレ師匠に向ける実久。


「師匠の弟子になったってことは、こいつも式持ちなんですか?」

「ああ。そうだ」

「……やっぱり。中身はもう?」

「ああ。判明してるぞ」

「……へぇ」


 もう一度視線を俺に向けてくる実久。その顔から得られる印象はさっきとだいぶ違う。

 なんというか、すごく好戦的な表情を浮かべていた。


「試してみたいか?」

「……そのレベルなんですか?」

「お前レベルとまではいかないけどな。それでも中々だぞ?」

「……へえ」


 あれ。この感じってもしかして……。


「一輝」

「……はい」


 マーレ師匠がこの後なんて言うのか容易に想像出来てしまったため、俺の返事は遅く、暗いものになってしまっていた。


 そんな俺を見てドS幼女は嗤う。


「お前、ミクと模擬戦してみろ」


 ですよねぇー。


   ☆ ★ ☆ ★

 次回更新は明日です!

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