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1-10 一週間後

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 俺がこの世界に落ちてきてから既に一週間が経っていた。

 一時間では何の成果もあげることの出来なかった俺だが、一週間もあれば色々と収穫があった。

 それはズバリ、自分の式を使えるようになった。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 暗い部屋。大きなコンテナがたくさん置かれているこの部屋の中で、俺はそんなコンテナの影に身を隠しながら息を潜めていた。


「気配遮断が甘いっ!!」


 そんな叫び声が上から聞こえると同時に俺は全力で後ろに跳んだ。

 一瞬の空白時間があった後、さっきまで俺が隠れていたところに隕石のようなものが落ちる。


 否。マーレ師匠(・・)だった。


「ちょっ! 今の当たってたらさすがの俺でも死にますよ!?」

「だから少し猶予をやっただろ!」


 深々と拳を床にめり込ませているマーレ師匠。

 文句を言う俺に叫ぶようにして言った後、今度は弾丸の如く飛んできた。


 重力なんて知らないと言わんばかりに、床と水平に宙を跳んでいるマーレ師匠。俺の目前にくると同時にクルリと回り、強烈なかかと落としを繰り出した。


「うわっ」

「逃げてばかりだな!!」

「そんなこと言ったって無理ですよ!」


 拳の代わりにかかとを床にめり込ませているマーレがキッと睨んでくるのだが、正直逃げるので精一杯だ。


「戦い方は教えただろ!」

「だったら少しは戦えるレベルまで手加減してくださいよ!」


 イラついた様子で左手をこちらに向けるマーレ師匠。

 って、それはやばいって!!


「『水弾』!」


 前に見せてもらった時よりも明らかに大きな水の弾丸。サッカーボールぐらいあるぞ!?


「頑張って避けろ!」

「いやいやいやいや」


 全力で首を横に振ってみるのだが、マーレ師匠はそんな俺を見て撃つのをやめてくれるどころか、むしろ楽しそうに笑みを浮かべた。


 そして放たれた。


「このドS師匠!!」


 まだ下手ながらも魔力を体内で活性化させることによって上がっている動体視力を駆使するのだが、ちょ、本当に銃弾レベルの速力なんですけど!?


「……あっ」


 マーレ師匠の口からそんな声が漏れた。

 その視線の先にあるのは、見事に今の水弾を直撃して倒れているこの俺。


「あららぁー。マーレちゃん、少しやり過ぎよぉー」

「けど木蓮。このくらいこいつも慣れっこだろ」


 ええそうですね。そのようですね!

 撃つ度に威力の上がっているマーレ師匠の水弾の直撃を受けてもこのように意識が残ってますよ!


 身体の痛みも既になくなっている。

 オンオフの切り替えが出来るようになったとはいえ、マーレ師匠との修行でオフにするほど俺は無謀じゃない。

 自動回復。便利だなー。


「おい一輝! どうせ意識があるんだろ! いつまでも寝てないで起きろ!」


 やっぱりバレてたか。

 立ったらまた地獄が始まるんだろうな。そう思うと気が重いが、これは将来のためだ。

 そう思う事にして俺は渋々立ち上がった。


「やっぱり起きてたな」

「そう睨まないでくださいよ」

「もう痛みも無いな」

「……はい」


 正直に言うか迷ったが、ここで嘘をついたとしても関係なく地獄は始まっただろう。

 ならば正直に言った方が良いだろう。


「よし。なら続きだ」


 マーレ師匠が言い終わると同時に彼女の全身が微かに光る。


「って、さっきより本気じゃないですか!!」

「知らん!!」


 魔力の体内活性は高いレベルで行うと体外に光が漏れるようになる。

 今までは光っていなかったというのに、このドS師匠。魔力活性のレベルをあげやがった。


 レベルが上がったってことは、反射神経の強化率が上がったて事だ。

 肉体の物理的強化効果自体はそこまで上がっていないはずだが、しかし、マーレ師匠の意識そのものが高速の世界に適応出来るようになってしまった。

 つまり、高速移動の際に、加減を必要としなくなったと言うことだ。


 所謂。


「行くぞ」


 刹那。マーレ師匠がいる地点から俺の背中側に向けて強化したこの眼でも見ることの難しい細い線が現れた。


 俺の頭をそれを理解すると同時に、マーレ師匠の姿がそこから消えた。


「こっちだ」


 後ろから声が聞こえるよりも一瞬早く、俺は振り向きながら防御の構えを取っていた。


 しかし、そんな防御がなんだと言わんばかりに突き刺さったマーレ師匠の拳の威力によって俺は後方に吹き飛び、硬いコンテナが凹むほどの勢いで激突した。


「うぐっ」

「まだまだ!」


 思わず漏れた呻き声。口から一筋の血を流している俺に構わず、マーレ師匠から再び線のようなものが伸びる。

 その線の終着点は俺の真正面。


 目の前にくるとわかった瞬間、そこにマーレ師匠の姿があった。


「反応が遅いっ!!」


 先手を取ろうと動いていたにも関わらず、それよりも早く彼女の蹴りが突き刺さる。


 背後はコンテナだ。吹き飛ぶ事は出来ない。その衝撃は一切逃げる事なく、俺の全身を駆け巡っていた。


「たく。まだまだ耐久力が足りてないな」


 コンテナに背中を預けて座り込む俺に向けてマーレ師匠が厳しい言葉を落とす。


 キックやパンチなどで与えられる打撃ダメージならばたとえ治したとしてもバレないため自動回復をフル起動しているため、既に痛みは無くなり始めているのだが、それでもダメージを無くすまでには数秒のインターバルがある。


 その間に俺の耐久力を超えるダメージを受けてしまうとこの通り負けになってしまう。


「打撃技ではやられることのない程に耐久力を手に入れられれば良い線いくと思うんだけどな」

「確かにいつかは可能になりたいレベルですけど、少なくともそんな耐久力って一週間やそこらで手に入るものじゃないですよ?」

「安心しろ。お前の式が回復魔法だとわかった時点が今のやり方にシフトしてたったの半時間ほどで今までできなかった魔力の自覚が出来るようになったんだ」

「……それってつまり出来るようになるまでこの方法でやるって事ですよね?」

「そうだな。極端に言えば、殴られることになれればそれも耐久力だろ?」


 鬼だ。こいつは鬼幼女だ。


 あれほどまで苦労していた魔力の自覚。本来であればもっと掛かったであろうそれを半時間という短さまで短縮した方法がまさにこのやり方だ。


 即死しない限り今の俺はほぼ無尽蔵な体力を持っているようなものだ。

 そして、本気の戦いで得られる経験値は安全な訓練とは比較にならないほど。


 俺が即死しないように手加減はしつつも、なぶり殺す勢いで俺を攻撃し続ける。

 それを繰り返すことによって短期間のうちにここまで強くなったのだが……本当に強くなったのか?


「ていうか、さすがに『流水脚(りゅうすいきゃく)』は反則じゃないですか?」


 今までマーレ師匠は足の裏から水をジェットの如く放出する事によって加速していたのだが、さっきの移動法はまた別ものだ。


 自分いる地点を始点として先に細い水の線でルートと終点を設定し、それが完了すると同時に設定した水の線をレールのようにしてその上を移動する。


 前者と違い加速の力が一番最初だけでなく、線の上を移動している限りずっと影響するため、速い。とにかく速い。


「ふん! これは罰だ。単発の水弾くらい早く避けられるようになれ!」

「無理ですよ! 師匠ってば毎回毎回威力あげてるじゃないですか!」

「だったらそれよりも速い速度でお前がレベルアップすればいいだろ!」


 な、なんと無茶な……。


 次回更新は明日です!

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