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瘴魔と蒼白のツルギ~世界を滅ぼす剣を持った少年と、問題児だらけの第七小隊~  作者: 堕落だらだら
第一章 始まりの夜明け

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第6話「蒼い炎」

「――さて」

 志摩が、ふと視線を巡らせた。

「そういえば、さっきの奴は」

「あ」

 紫音の表情が、初めてわずかに動いた。

「……完全に忘れてました」

「お前ら、本当に大丈夫か」

「多分。蒼司は頑丈だけが取り柄なので」

「頑丈って言葉で片付けていいのか、それ」

 志摩が呆れ顔で呟いた、その瞬間だった。

 瓦礫の向こうから、青白い光が爆ぜるように弾けた。

「――なっ」

 志摩が思わず身を強張らせる。光は一瞬で膨れ上がり、次いで轟音と共に爆風が周囲の瓦礫を吹き飛ばした。

「今の、何だ!?」

「……蒼司です、多分」

 紫音が答える声には、驚きよりも「またか」という色が濃く滲んでいた。

 爆発の中心、巨大な蛸型の瘴魔が、まるで蹴り上げられたかのように宙へと打ち上げられていた。その巨躯を軽々と持ち上げたのは、青白く輝く炎を全身に纏った蒼司だった。

 刀身だけではない。彼の腕、肩、背中――全身の輪郭に沿って、蒼い炎が生き物のように揺らめいている。

「――お前、たこ焼きにしてやるって言ったよな!!」

 叫び声と共に、蒼司は宙へと跳んだ。青と白、二本の刃が交差するように瘴魔の本体を斬り裂く。斬撃の軌跡に沿って、蒼い炎が尾を引くように奔った。

 瘴魔の巨躯は、悲鳴のような咆哮を上げる間もなく、真っ二つに両断され、光の粒子となって崩れていった。

「……終わった、っと」

 蒼司が着地すると同時に、全身を包んでいた炎が、すっと消えていく。何事もなかったかのように、彼はいつもの軽い足取りで振り返った。

             *

「――今の、何だ」

 志摩が、瓦礫の向こうから戻ってきた蒼司を見据えて問う。

「何って、いつものやつです」

「いつものやつ、って言い方で済ませられる現象じゃないだろう。あれは、ガジェットの光じゃなかった」

 志摩の視線が、紫音へと向く。

「説明してくれ」

 紫音は少し言葉を選ぶように間を置いてから、静かに口を開いた。

「共鳴者は基本的に、瘴魔から取り込んだ力はガジェットを通してしか使えません。エネルギーの変換と出力の調整は、全部ガジェット側の仕組みに依存してます」

「ああ、さっきそう説明してくれたな」

「ですが、蒼司だけは違います。あいつは、ガジェットを介さずに、体から直接あの炎を出せる」

「……直接?」

「はい。理屈は俺にもわかりません。ただ、あいつが本気で頭に血が上ると、時々ああなります」

「頭に血が上ると、って……」

 志摩が呆れたようにこちらを見てくる。蒼司は気まずそうに頭をかいた。

「いや、あの、俺もよくわかってないんですけど、なんかキレると出るんですよね、これ。ライター要らずですぜ?」

「便利な体質だな、おい」

「便利かどうかは知りませんけど、制御はあんまりできてないです」

「制御できない力を戦場で振り回すな」

「もっともです……」

 珍しく素直に頷く蒼司を見て、志摩は小さくため息をついた。

「……まあいい。とにかく、お前らの実力はよくわかった」

             *

 それから、四人は改めて隊列を組み直し、残る瘴魔の掃討にあたった。紅華と蒼司が前線で斬り込み、翡翠が後方から狙撃で援護し、紫音が全体の位置取りを調整する。数の暴力とも言える瘴魔の群れは、それでも着実に数を減らしていった。

 だが、無傷というわけにはいかなかった。

「……いってぇ」

 全ての瘴魔を処理し終えた頃、蒼司は満身創痍だった。戦闘装束のあちこちが裂け、腕には浅くない傷が幾つも刻まれている。

「あんたもボロボロね」

 紅華も同様に、髪は乱れ、頬には切り傷、片方の袖はほとんど千切れかけていた。二人とも、立っているのがやっとという有様だった。

「二人とも、大丈夫か」

 紫音が駆け寄ってくる。

「大丈夫、いつものことだから」

「いつものことで済む怪我の量じゃないだろ、それ」

「細かいことは気にすんな」

 蒼司が軽く笑うと、紅華も同じように苦笑を返した。

 志摩は、そんな二人を眺めながら、静かに頷いた。

「――第七小隊、な」

「はい」

「噂以上だ。正直、ここまでとは思ってなかった」

 彼はそう言うと、テントの奥を指し示した。

「この先の話をする。お前らには、この周辺にしばらく留まってもらうことになる」

「留まる、っていうと」

「東側の野営地を用意してある。案内するから、まずは怪我の手当てをしろ」

 志摩に連れられて向かった先には、簡易的ながらもしっかりと設営された野営地があった。テントが並び、簡易的な医療設備や、休息用のスペースも整えられている。

「ここを、お前らの拠点にしてくれ」

「……ずいぶん本格的ですね」

 紫音が周囲を見渡しながら言う。

「本部からの応援――闇夜部隊長の増援部隊が到着するまで、一週間はかかる見込みだ」

「一週間……」

「それまでの間、この周辺の防衛は、実質お前らに任せることになる」

 志摩の声が、僅かに真剣味を帯びた。

「瘴魔の越境はこれからも続く。数も読めない。だから、決まった作戦通りに動くことは求めない。その時々の状況に応じて、臨機応変に対応してほしい」

「つまり、行き当たりばったりでいいってことですね」

「言い方は選べ、蒼司」

 紫音の突っ込みに、蒼司が肩をすくめる。

「――だが、間違ってはいない」

 志摩は苦笑しながら続けた。

「今のお前らの実力なら、それができると判断した。一週間、頼めるか」

 四人は顔を見合わせた。ボロボロの蒼司と紅華、涼しい顔の翡翠、そしていつも通り冷静な紫音。

「――やりましょう」

 紫音が答えると、他の三人も頷いた。

「よし。じゃあ、まずは休め。今日のところは、それで十分だ」

 志摩がそう言って踵を返す。夕暮れの光が、野営地に長い影を落としていた。

【第七小隊 日報】


日付:〇月✕日


記入者:紫音


---


本日の任務


瘴魔の大規模迎撃。


結果として任務は成功。


……成功したから良かったものの、胃には良くなかった。


---


隊員評価


蒼司


・戦闘開始数秒で誘拐される。


・助けに行く前に自力で帰ってきた。


・キレたら炎を出した。


・本人も理由は知らないらしい。


・「たこ焼きにしてやる」と叫んでいた。


総評:主人公なのに行動が意味不明。


---


紅華


・敵陣に笑顔で突撃。


・弾を撃ちすぎ。


・本人は「節約してる」と言っていた。


絶対嘘。


---


翡翠


・狙撃成功。


・建物も消えた。


・「ちょっと威力ミスった。」


ちょっととは。


---


自分(紫音)


・胃痛担当。


・みんなの尻拭い担当。


・苦労人担当。


・誰か褒めてほしい。


総評:転職したい。


---


所感


隊員三人とも実力はある。


本当にある。


でも、それ以上に自由人である。


一週間、この三人と野営生活。


今から胃薬を追加で申請したい。


以上。


※闇夜部隊長に提出予定。


……いや、やっぱり提出やめよう。

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