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瘴魔と蒼白のツルギ~世界を滅ぼす剣を持った少年と、問題児だらけの第七小隊~  作者: 堕落だらだら
第一章 始まりの夜明け

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第5話「置いてけぼりの逆襲」

「――おい、さっきの叫び声は何だ」

 志摩が眉をひそめながら、蒼司が消えた方向を一瞬だけ気にする。

「大丈夫です。多分、まだ生きてます」

 紫音はデバイスをタップして光の障壁を展開しながら、志摩の隣に立った。

「多分、で済ませていいのか」

「今は前が優先です。蒼司のことは、後で拾いに行きます」

「……お前ら、意外とドライだな」

「慣れてるだけです」

 紫音が淡々と答える間にも、目の前では瘴魔の第一波が押し寄せていた。

「はっ!」

 真っ先に切り込んだのは、紅華だった。二丁の拳銃型ガジェットを両手に構え、彼女は瘴魔の群れの中へ自ら飛び込んでいく。銃口から放たれる光弾が、まるで舞踏のステップを刻むように、途切れることなく敵を撃ち抜いていった。

「見ての通り、紅華のガジェットは二丁の拳銃型です」

 紫音が志摩に説明する。

「連射力を最大限に活かすために、体を捻りながら撃つ独特のフォームを取ってます。あれ、実は全身のバランス感覚がないとできない撃ち方なんです」

「舞ってるみたいだな」

「本人も、そう言われるのは気に入ってるみたいです」

 紅華は右手の銃で正面の瘴魔を撃ち抜きながら、体を半回転させて左手の銃で側面から迫る個体を仕留める。まるで一つの流れる動作の中に、正確な射撃が織り込まれているようだった。

「一体、二体、三体……ほら見て、数えらんないくらい楽勝!」

「数えてる時点で余裕あるだろ、それ」

 翡翠の声が、少し離れた瓦礫の山から飛んでくる。

「そこの飛行タイプ、危ないよ」

「え?」

 紅華の背後、死角から音もなく忍び寄っていたのは、翼を持つ瘴魔だった。だが、紅華が振り返るより早く、甲高い風切り音が空気を裂いた。

 翡翠のスナイパーライフルから放たれた一撃が、瓦礫の瘴魔だけでなく、その奥にあった半壊した建物の残骸ごと吹き飛ばした。轟音と共に、粉塵が舞い上がる。

「……今の、廃墟ごと消し飛んだんですけど」

「威力、ちょっと調整間違えたかも」

「間違えるなよ!」

 志摩が思わず口を挟んだ。

「翡翠のガジェットは、スナイパーライフル型です。狙撃の精度はもちろんですが、あいつの体質――突然変異による膨大なエネルギー量のおかげで、一撃の出力が桁違いなんです」

「エネルギー量?」

「共鳴者のガジェットは、瘴魔から取り込んだ力を変換して駆動してます。普通は使用者の許容量に応じた出力しか出せないんですが、翡翠はその許容量自体が異常に大きい。だから、あの威力が出せる」

「化け物か」

「本人にそのまま伝えたら、多分喜びます」

 紫音が苦笑しながら答えた。その間も、彼のデバイスから展開された光の障壁は、四方から迫る瘴魔の侵攻を確実に食い止め続けていた。

「そっちの盾は、どういう仕組みだ」

「これは俺のガジェットです。攻撃力はほぼありませんが、防御範囲と耐久性は小隊内でも一番だと思ってます」

 紫音は障壁越しに迫る瘴魔の爪を受け止めながら、表情ひとつ変えずに続けた。

「共鳴者は、それぞれ瘴魔から取り込んだ力の性質によって、扱えるガジェットの傾向が変わります。俺の場合は、防御と展開に特化した性質だったので、この形になりました」

「なるほどな……にしても、お前は随分冷静だな」

「囲まれても、俺がやることは一つだけなので」

 紫音はそう言うと、障壁の一部を素早く展開し直し、側面から回り込もうとしていた個体の進行を強引に塞いだ。

「敵を通さない。それだけ考えてれば、パニックにはなりません」

「……頼りになるな、お前」

「よく言われます」

 紅華と翡翠の連携も、いつの間にか噛み合い始めていた。

「翡翠、次そっち行くよ!」

「はいはい、任せて」

 紅華が銃撃で瘴魔の群れを割り、翡翠がその隙間から狙撃で仕留める。二人のリズムは、まるで最初から決められていたかのように滑らかだった。

「――さて」

 志摩が、ふと視線を巡らせた。

「そういえば、さっきの奴は」

「あ」

 紫音の表情が、初めてわずかに動いた。

「……完全に忘れてました」

             *

 その頃、蒼司はというと。

「――お前ら! 誰か! 俺のこと忘れてないか!?」

 瓦礫の陰、視界の外へと引きずり込まれた蒼司は、全身を触手に絡め取られたまま宙吊りにされていた。触手の主――地中に潜んでいたらしい、巨大な蛸のような瘴魔が、粘つく体表をうねらせながら、じわじわと彼を締め上げてくる。

「離せ、離せって! 気持ち悪いんだよ、その感触!」

 蒼司はもがきながら、なんとか片腕だけを自由にすると、腰に提げた剣の柄に触れた。青と白、二本の刀身を一気に抜き放つ。

「――よし」

 彼はぐるりと体を捻り、拘束していた触手の一本を、白い刃で一気に斬り裂いた。

「うおっ!」

 自由になった腕で体勢を立て直し、そのまま青い刃で残る触手を次々と切断していく。斬られた断面から、瘴魔特有の紫がかった体液が飛び散った。

「離れろっつってんだろ!」

 最後の一本を斬り落とすと、蒼司は地面に着地し、剣を構え直した。目の前には、まだ蠢く蛸型の瘴魔本体が、こちらを威嚇するように触腕を振り上げている。

「……お前、俺のこと置いてけぼりにさせた元凶な」

 蒼司の目に、これまでにない苛立ちの色が浮かんだ。

「みんなが真面目に戦ってる間、俺だけ触手に巻かれて情けない声上げてたんだぞ。誰の責任だと思ってる」

 瘴魔が答えるはずもなく、ただ触腕を振り下ろす。だが蒼司は、それを軽く躱しながら、青白い二本の剣を大きく振りかぶった。

「――テメェは、たこ焼きにしてやる!」

 叫び声と共に、青と白の刃が交差するように瘴魔の本体へと叩き込まれた。

あとがき


蒼司

「おい。」


紅華

「ん?」


蒼司

「俺、忘れられてたよな?」


紫音

「……。」


翡翠

「……。」


蒼司

「なんで目を逸らす!」


紫音

「いや、敵の数が多くて。」


紅華

「忙しかったし。」


翡翠

「途中まで本当に忘れてた。」


蒼司

「正直すぎるだろ!」


紅華

「でも、自力で帰ってこられたじゃん。」


蒼司

「その前に助けに来いよ!」


翡翠

「たこ焼きにするって叫んでた時は笑った。」


蒼司

「あれは勢いだ!」


紫音

「ちなみに、本当にたこ焼きにはしてないよな…」


蒼司

「ノーコメントで。」


紅華

「ソース持ってくればよかった。」


蒼司

「触手プレイされた相手食えるかよボケ」


全員

「第6話もよろしくお願いします!」

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