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瘴魔と蒼白のツルギ~世界を滅ぼす剣を持った少年と、問題児だらけの第七小隊~  作者: 堕落だらだら
第一章 始まりの夜明け

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第12話「翼を持つもの」

「タスケテ……」

 その一言に、誰も動けなかった。人型の個体を前に、全員が言葉を失ったまま立ち尽くしている。

 最初にその沈黙を破ったのは、志摩だった。

「――迷ってる場合か。あれが何であれ、今は危険な相手だ。行くぞ!」

「はい!」

 白雨、鬼頭、御影、黒瀬の四人が、弾かれたように動き出す。

「散開! 各個で攻めろ、纏まって突っ込むな!」

 志摩の指示と同時に、四人はそれぞれの得意な間合いから、人型の個体へと襲いかかった。

 白雨が右手の片手剣を振るいながら踏み込み、鬼頭が左右から拳を叩き込む。御影は空中に展開した複数のガジェットから同時にビームを放ち、黒瀬は死角から短剣を突き立てようとした。

 完璧な連携だった。少なくとも、これまで彼らが挑んできたどんな瘴魔にも通用してきたはずの、練度の高い連続攻撃だった。

 だが。

「――弾かれた!?」

 白雨の斬撃は、人型の個体を覆う黒い瘴気に触れた瞬間、まるで見えない壁に阻まれたかのように弾き返された。鬼頭の拳も同様だった。御影の放ったビームは、着弾する直前でわずかに軌道を逸らされ、命中しなかった。

「くっ――」

 黒瀬の短剣だけが辛うじて掠ったが、それすらも、人型の個体が最小限の動きで躱してしまう。

「なんだ、この動き……」

 鬼頭が距離を取りながら低く呟いた。

「攻撃、全部見られてる。読まれてるっていうより、勝手に反応されてる感じだ」

「反射だけで捌かれている、ということですか」

 黒瀬が、静かに、しかしどこか鋭い声で分析する。

 人型の個体は、四人の連続攻撃を受けながらも、むしろその動きの中に無駄がなかった。瘴気を纏った腕が薙ぎ払われるたびに、白雨たちは後退を余儀なくされていく。

「――ちょっと、これ結構やばくない?」

 白雨が苦笑いを浮かべながらも、剣を構え直す。好戦的な彼女らしく、劣勢の中でも目には闘志が宿っていた。

「――押されてる!」

 志摩が思わず声を上げた瞬間、人型の個体が一歩踏み込み、四人まとめて薙ぎ払うような一撃を放った。

「うわっ!」

「――っ!」

 四人が同時に吹き飛ばされ、地面を転がる。

「くそ、隊列が――」

 立て直そうとした瞬間、追撃が迫った。だが、その一撃が届く前に、青白い刃がその軌道を割って入った。

「――悪い、待たせた」

 蒼司だった。剣を構え、人型の個体の追撃を正面から叩き付けて吹き飛ばす。


「お前ら、大丈夫か!」

「た、助かりました……蒼司さん、ナイスタイミングです」

 白雨がなんとか身を起こしながら、それでも軽口混じりに答えた。

「すまん、援護に感謝する」

 志摩も苦い顔で頷いた。

 蒼司が前に出たことで生まれた僅かな隙を、紫音は見逃さなかった。

「――今のうちに、下がってください」

 紫音のデバイスから展開された光の障壁が、四人と蒼司の背後を覆うように広がる。人型の個体の追撃は、その障壁に阻まれて空を切った。

「はぁ……助かった」

 鬼頭が肩で息をしながら短く呟く。

「紫音さん、すまんな。おかげで立て直せた」

 志摩が礼を言うと、紫音は小さく頷いた。

「一旦、態勢を整えましょう」

 だが、そう言った直後、志摩の表情が僅かに険しくなった。

「――だが、まずいな」

「何がです」

「攻撃が、ほとんど通ってない」

 志摩は、白雨たちの方を見やった。四人とも、目立った外傷こそないものの、明らかに攻撃を弾かれ続けたことで消耗している。

「あの黒い瘴気、防御用の膜みたいなものなのか、それとも単純に身体能力が桁違いなのか……どっちにしろ、通常の火力じゃ削りきれない」

「厄介ですね」

 紫音も、人型の個体を見据えながら呟いた。焼け焦げていたはずの輪郭は、いつの間にか元通りに近い状態まで再生しているようだった。

「志摩さん、皆さんの武装について、改めて聞いてもいいですか。連携を組み直したいので」

「――ああ、そうだな」

 志摩は、自分の足元――ブーツのような形状のガジェットを軽く叩いた。

「俺のはこれだ。空中に浮かせて、機動力を確保するタイプだ」

 言うが早いか、志摩の体がふわりと宙に浮かび上がる。地面を蹴らずとも自在に位置を変えられる、それだけで戦況を動かせる強みだった。

「白雨さんは」

「片手剣と、もう片方にアンカー型の拳銃かな」

 白雨が腰の拳銃型ガジェットを軽く掲げる。好戦的な口調のまま、どこか誇らしげに続けた。

「ワイヤー撃ち込んで、建物とか瓦礫に引っ掛けて三次元的に動けるの。剣で斬りながら空中戦もこなせるし、結構自信あるよ」

「鬼頭さんは」

「両手の籠手一本でやらせて貰ってる」

 鬼頭は短く言い切ってから、少しだけ付け加えた。

「あとは、拳を地面に叩き付ければ土煙くらいあげれるぞ」

「なるほど…御影さんは」

「わたくしは、先読み狙撃ですわ」

 御影が、上品な仕草で軽く一礼しながら答える。

「相手の動きを予測して、複数角度からビームを撃ち込んで攻撃を潰します……多数の雑魚処理なら私一人でも倒せますわ」

「なるほど」

 紫音は、話を聞きながら素早く頭の中で戦術を組み立て直していた。

「――もう一度、隊列を整えましょう。今度は、俺が全体の防御を張りながら、皆さんの攻撃のタイミングを調整します」

「頼む」

 志摩が頷き、皆が再び構えを取った瞬間だった。

             *

「――待って!」

 場違いなほど幼い声が、戦場の空気を切り裂いた。

「な――」

 全員の視線が、その声の方向へと向く。

 瓦礫の合間を縫うようにして駆けてきたのは、ゆうとだった。その後ろから、慌てた様子で紅華と翡翠が追いかけてくる。

「ちょっ、待ちなさいって!」

「ゆうと君、危ないから!」

「――お前ら!」

 志摩が声を荒げた。

「何を考えてる、民間人をこんな場所に連れてくるなんて!」

「いや、これは、その」

 紅華が言い訳しようとするが、志摩の剣幕は収まらなかった。

「戦場だぞ、ここは! 子供が来ていい場所じゃない!」

「――違うの!」

 ゆうとが、紅華と翡翠を庇うように前に出た。小さな体で、精一杯の声を張り上げる。

「二人は、僕が無理やりついてきたの! 止めようとしてくれたのに、僕が勝手に走って来ちゃったの!」

「ゆうと君……」

 紅華が困ったような顔でゆうとを見た。

「なんで、こんな危ないところに」

 紫音が問いかけると、ゆうとは涙をこらえながら答えた。

「……野営地で、みんなが話してるの聞こえたの。人型の化け物と、蒼司お兄ちゃんたちが戦ってるって」

「それで?」

「あいつだよ」

 ゆうとは、震える指で人型の個体を指し示した。

「あいつが、ママを連れて行ったんだ」

 その場の空気が、一瞬で張り詰めた。

「――確かか?」

 志摩が真剣な顔で問う。ゆうとは強く頷いた。

「うん。でも、あいつだけじゃない。もう一体、もっと大きい化け物がいた。あいつは、その大きい化け物を、こっちに連れてくるみたいに一緒に歩いてた」

「もう一体、大きいのが……」

 紫音の表情が険しくなる。

「だから、もし本当にあいつがママを連れて行った奴なら、僕、返してって言いたくて……いても立ってもいられなくて……」

 ゆうとの目に、再び涙が浮かんだ。

「ごめんなさい……二人は、本当に止めてくれたのに」

「……もういい」

 志摩は、大きく息を吐いた。

「来ちまったもんは仕方ない。今はとにかく、お前を安全な場所まで下げる」

「志摩さん」

 紅華が申し訳なさそうに口を開く。

「私たちがちゃんと見てなかったのが悪いです。すみません」

「詫びは後だ。今は――」

 志摩が言いかけたその時。

 人型の個体が、再び声を発した。

「シニタイ……」

 掠れた、しかし今度ははっきりと聞き取れる声だった。

 その言葉に、全員が息を呑んだ。

「――今、なんて」

 白雨が思わず呟いた、その直後。

 人型の個体の輪郭から、耳をつんざくような甲高い悲鳴が発せられた。

「――っ!?」

「うわああっ!」

 全員が思わず両耳を押さえてうずくまる。まるで空気そのものが震えるような、不快で異様な音だった。

「な、なんだ、この声――」

 蒼司が顔をしかめながら、それでも視線だけは人型の個体から外さなかった。

 そして、悲鳴が響き渡るのと同時に――人型の個体の背中から、黒い瘴気を纏った翼が、勢いよく生え広がった。

「――翼!?」

 紫音が驚愕の声を上げる。

 人型の個体は、翼を大きく広げると、耳障りな悲鳴を響かせたまま、地面を蹴って空へと舞い上がった。

「――待て!」

 志摩が咄嗟にブーツ型のガジェットで浮上しようとするが、間に合わなかった。

 黒い翼を広げた人型の個体は、あっという間に上空へと消えていく。悲鳴の余韻だけが、耳の奥に不快に残っていた。

「……逃げられましたね」

 鬼頭が、呆然と空を見上げながら短く呟いた。

 誰も、しばらくの間、言葉を発することができなかった。

蒼司

「おい作者ァ!! また俺ぶっ飛ばされたんだけど!?」


紫音

「死んでない。」


蒼司

「その基準で人を評価すんな!」


紅華

「しかも今回は爆撃されたあとに謎パンチ食らって、最後は翼生えた奴に逃げられるとか主人公補正どこ置いてきた?」


翡翠

「主人公補正は作者が換金しました。」


蒼司

「最低だな作者!!」


紅華

「でもさぁ……」


蒼司

「ん?」


紅華

「この作品さ。」


翡翠

「ついに――」


紫音

「ブックマークを頂きました。」


蒼司

「よっしゃあああああ!!!!!」


紅華

「しかも感想まで来たんだよね!」


翡翠

「ありがとうございます。本当にありがとうございます。」


蒼司

「つまりもう逃げられないってことだ。」


紅華

「ブクマした人は最後まで付き合う契約だから。」


翡翠

「そんな規約はありません。」


紫音

「ありません。」


蒼司

「……ないの?」


紅華

「ないよ。」


蒼司

「じゃあ今から作るか。」


翡翠

「作者ごと通報されます。」


紫音

「なので普通にお願いします。」


四人

「『続きが気になる!』と思ったら、ブックマーク・★★★★★・感想をお願いします!」


蒼司

「作者が通知を見るたびにニヤけます。」


紅華

「スマホ見て『うおっ!?』って声出してたからね。」


翡翠

「非常に気持ち悪かったです。」


紫音

「次回もよろしくお願いします。」

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