荒井の猛威を凌ぎ切れ!
「荒井っ……!? どうしてここにいんだよ?」
「はぁ!? てめえが部屋ん中で暴れ回ってるって連絡来たからに決まってんだろ! おらっ! 部屋見せろ!」
まずいっ! ここは荒井から借りてる部屋だった。
デブ美は荒井に部屋を見られないために玄関に駆け寄ってカギをかけた
ふう……ひとまず安心だ
「てっめ! 滅茶苦茶にしやがったな!!」
玄関のカギを閉めたのも束の間、荒井はベランダからひょいっと上がってきたのだった
「ちょ、そっちから来るの!?」
「はあ?なんでわざわざ玄関まで回るんだよ。かったりいだろ」
窓から入るのは当然の如くとでも言わんばかりの話っぷりである
「は~~~~~~いつかやるとは思ってたが、ここまでやりやがるとはな」
「……」
珍しくデブ美は黙る
というのも、荒井の腕っぷしの強さは天下に響くほどで、クマすら素手で倒すと噂のレベルらしい
下手なことを言えば、文字通り殺されるかも知れない
実際、過去に荒井を怒らせて、海に投げ捨てられた過去がある
デブ美の体重や体格は雄に荒井の倍ほどはあるはずなのだが、軽々と持ち上げて、投げ捨てられたのだから、ホンモノの実力者である
本人はよくエンストした軽トラを背負って運んだ武勇伝を語ることがあるのだが、本人曰くレッカー車を待つのがかったるかったからだそうだ
誇張しているようにも聞こえないから、マジなんだろう……
……って、今は荒井の強さを思い返している場合じゃねぇ
とにかく、やべぇ状況だ……
「マジで土倉じゃねえかよ。解体現場でもここまでならねえぞ。なにがどうなってこうなるんだよ」
荒井は怒りを通り越してもはや呆れたトーンでしゃべる
「そ、それは…」
「ま、差し詰め大方、男にでも騙されたんだろ?」
「なっ、なんで!?」
「やっぱりな。わかるだろ大体バカかてめぇ? んでこの壺なんだ? 何入れてたんだ、汁ビッチャビチャできったねぇな」
「あ、それは…」
デブ美の体液まみれにしたとは口が裂けても言えない
デブ美は適当に誤魔化した
「んでよ、これどうすんだ?」
「…片付けます」
「…ったりめえだろ。いつやんだよって聞いてんだよ!」
「すんませんいますぐやります!」
今すぐやる羽目になって内心やる気の出ないデブ美だったが、ここで反抗でもしようものなら殺されること間違いなし。
デブ美は素直にお片付けすることを選んだ。
「おけ、徹底的にやれよ」
「了解っす」
デブ美はぶつくさ言いながらも片付けに着手する
しかし、救われるのは、荒井は言うことを聞いたら(片付けたら)許してくれるというところだ
ゼッコーされてもおかしくない状況だが、荒井は懐が広い。
友達としては、なんともありがたい限りだ
「おいこら! 机引きずんな、丁寧に運べ」
「うっす」
「おめ、電球壊したんじゃなくて普通に切れてんじゃねぇかよ! いつからだよ!」
「一ヶ月前」
「変えろよ! …ったくしゃあねぇなあ」
「おまっ、腐った食べもん放置すんなや! くっせぇな!」
「ゴミ捨てろよ!だらしなさすぎだろてめぇ!」
矢継ぎ早にデブ美の荒れた生活を指摘してくる荒井にデブ美はただただ申し訳ない気持ちでいっぱいになる
「すまねぇ…明日から改心する」
「おめ、いつもそれだよな。ちゃんとした試しねぇだろ」
「すまねぇ許してくれ…」
「てめぇよぉ、ツラいのはわかったから暴れるのだけは堪えろよ。片付けんのめんどくせぇだろうが。…ったくよ」
そう言っていつの間にか荒井も片付けを手伝ってくれる。
マジで良いやつだ。
泣けてくる。
あらかた部屋がきれいになったところで、
「んでよぉ、おまえ、こんだけか?」
「こ、これだけだよ??」
「嘘だろ。まだなんか隠してることあるんじゃねぇか? 言えよ。どうせ男に金騙しとられたんじゃねぇのか?」
す、すごい、荒井はなんでもお見通しのようだ
「じ、実は…」
デブ美は事の経緯を全て説明した
「…んで、この壺ってわけだ」
荒井の問答に、デブ美は恥ずかしそうに首肯する
「んで借金500万っつったか? どうすんだよ?」
「…わかんない、どうしよう…」
「…ったく、しゃあねえな。あたしがケリつけてやんよ。ついてこい」
と言って荒井が壺を持って外に出る
「…え、どこに?」
「決まってんだろ、闇金のとこだよ。てめぇも来んだよ!もたもたすんな!」
「…は、はい!」
デブ美は急かされるまま、荒井の後をついていった




