なんだよこの壺!
くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!
深夜にも関わらず、大声を上げながら、手足届くもの全てを破壊していく女、デブ山デブ美は今2度目の失恋を経験したばかりだった
ああーーー!!!クソォーーーー!!!!
既に焦土と化していた部屋はこれでもかとばかりに土煙を上げる
粉塵が舞い上がり、もはや部屋というより土倉のような仕上がりになっていた
そんな荒れ果てた自室でデブ美はマクラを涙で濡らす
「なんでぇぇぇぇ!!! なんでよぉぉ!!!! あんまりじゃないのぉぉぉ!!!」
もはや人間の声なのか区別がつかない呻き声でデブ美は声を上げる
「なんなんだよこの壺ぉ!!!」
……どうやらデブ美は騙されたようである
時は遡ること、数時間前
デブ美はパチンコ屋にいた
しかし、デブ美には金がなかった
デブ美は台の前で茫然自失としていた
そんな折、優しげなイケメンに声をかけられたのだ
運命的な出会いにデブ美の心はハイになった
ここで手折れるは、太っちょ魂の名折れよ
デブ美はチャンスを逃さない女だった
デブ美は瞬く間に恋する乙女モードとなり、イケメンに取り行った
そして、その努力は功を奏した
デブ美はチャンスを掴む!
パチ屋で一発当てた後、イケメンとのデートを漕ぎ着けるたのだ
『に、にいちゃん、お金返すよ、て、てか、お礼させて♡』
『喜んで』
…イケメンは何から何までイケメンだった
煌びやかな街、美味しいお店、イケメンはデブ美の知らない素敵な夢を見させてくれた
『ああ、なんて素敵なの……ねぇイケメン君……私……』
『あ、ちょっとまって、電話。ん、ん、うん、わかった……ごめん……僕らもうこれまでかもしれない……』
『えっ!? どうして!? イケメン君何かあったの!?』
『それは……いや、なんでもないっ!』
『そんなっ!! なんでもないわけないじゃない! 私がなんだってするわよ!!』
『デブ子ちゃん…』
『私を信じて!!』
数十秒の静音を挟んだのちイケメン君が口を開く
『実は…僕…この壺を売らなきゃいけないんだ.』
そう言って唐突に壺が現れた
どこから出てきたのかはよくわからないが、唐突に壺が出現した
『えっ…! 何その壺』
『一千万……』
『え…どういうこと?』
『僕、これを売らないと……殺されるんだ……』
『…!?』
『深くは聞かないで…でも、僕はもうデブ子ちゃんとは会えないっ!! この壺のせいで!』
デブ美は何を言われているのかわからなかったが、一つ確かなことだけは理解できた
それは、この目の前の壺のせいで、私とイケメンの絆が崩れそうだということだ!!!
『私どうしたらいいの!?』
『デブ子ちゃん、悪いよ』
『いいの! 言って!!!』
『500万……500万で買い取って欲しいんだ…そしたら全部がうまくいく…』
『いいわ! 買うわ!』
そう言ってデブ美は1人夜の中、消費者金融、闇の金融機関、ありとあらゆる手段を使ってお金をかき集めた
『これでいいわね!!』
『ありがとうデブ子ちゃん!! このお礼はいつか返すよ!!!』
そう言って別れたのち、ラインがブロックされていた
デブ美も薄々気づき始めた
これは詐欺だったのではないか…と
嘘だと思いたかった
しかし、気づいた瞬間に全てが決壊した
これが冒頭の破壊活動につながるわけである
「こんな壺! こんな壺! こんな壺! こうしてやる!」
デブ美は壺にありとあらゆる体液をぶちまけてその容器を汚した
まるで壺をイケメンと見立てて汚すように
壺はみるみるうちに、黄色く、茶色く、そしてドス黒い色に変色していった
「さあ、仕上げよ……」
デブ美は壺を部屋からぶん投げた
部屋は2階である
下に誰かいたら大事だ
しかし、デブ美はもはや気が狂っていた
どうとでもなれ
壺が宙に舞う
刹那
壺がベランダから消えたのち、音が…しなかった
ん? もっと派手な音なっていいはずなのにな…
そう訝しんでベランダの下を覗き込むと…
「よう、荒れてんな〜デブ美」
「…っ、お前は…! 暴君荒井っ!」
デブ美の親友が壺を軽々と持ち上げていた




