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借金なんて踏み倒せ!

「おいごらあ!!!!!! 責任者出てこいや!!!!」


就寝時。


シャッターの降りた雑居ビルの前で大声を張り上げる女がいた。


「あ、荒井、声デカすぎるって…」


雑居ビルは賃貸マンションの一部テナントに入る仕様であった。


何事かと窓から様子を伺う住人がチラホラとデブ美の視界に入る。


もとより闇金の事務所に押しかけているのだ。


デブ美は気が気ではなかった。


しばらく軒先で騒いでいるとおもむろにシャッターが開き始める。


「なんやなんや? やかましいな~? いてこましたろかワレ」


人相の悪いコワモテの男性がシャッターの間から現れた。


「おっせえよ! はよ出てこいや!」


開幕早々、荒井はコワモテの男性のみぞおちに一発かました。


「「ええ……」」


コワモテ男とデブ美は、あまりにも唐突な展開に拍子抜けして、間抜けな声を出す。


コワモテ男は状況が理解できないまま、仰向けに横たわりながらただ悶絶の表情を浮かべた。


「いくぞ。責任者は中か?」


コワモテ男は、苦悶の表情を浮かべながら、コクっと首を縦に振る。


荒井はコワモテ男の顔面にツバを吐き、シャッターの中に入った。


あまりにも荒井の粗野な行動にただただデブ美はあっけにとられていた。


デブ美はこんな状況でシャッターの中に入る勇気はなかったが、圧に押されて、気後れしつつも荒井の後を追った。


「おいごらあ! 責任者出てこいや!!」


ビルの中に入ると反響音で荒井の声はより一層響いた。


デブ美は鼓膜が破れそうな恐れを感じて耳をふさぐ。


あまりにも声がうるさく、響いたからだろうか


奥の部屋の扉が開いて、いかにもな眼鏡をかけたシュっとしたお兄ちゃんが現れた。


「そんな大きな声出さなくても聞こえてますよ。こちらどうぞおはいりください。」


兄ちゃんはやれやれと言ったような態度で、デブ美たちを応接間に案内した。


「それで、一体どう言った要件でしょうか? 急に暴れられても理解に苦しみます。」


荒井の傍若無人な振る舞いにも関わらず、お兄さんは冷静な対応を心がけていた。


ただし、我慢していただけだろう。


貧乏ゆすりがとても激しく、デブ美はいつ銃器の類が出てきてもおかしくなさそうな状況に気が気ではなかった。


内心めちゃくちゃ怒ってるじゃん絶対……


「おうよ、単刀直入にいうぜ。てめえらんとこでデブ美に貸してる借金チャラにしろ」


すごい…


あまりにも無茶苦茶な要求すぎることは、デブ美でも直感で理解できたが、あまりにも荒井が自信満々に言うものだから、正しい主張のように聞こえてしまう。


これが声のデカさか…とデブ美が感心していると、呆気にとられていた兄ちゃんも反論を開始した。


「いや、それは無理な相談ですね。あまりにも突然すぎる。貸した金は返してもらわないと流石に難しいですよ。おたく流石にうちらを舐めすぎじゃあないですか?」


にいちゃんの堪忍袋がそろそろ限界を迎えようとしていた。


兄ちゃんが奥の部屋から木刀を取り出してくる。


「おお、いいじゃんよ! そうこなくっちゃな! やろうぜ!」


ケンカと見るや、荒井は目を輝かせた。


上着を払い、やる気はMAXだ。


荒井のことだ……


ケンカ上等なんて想定通りの展開で、意外性は全くないのだが、それでもいざ戦いの火蓋が切られようとしていると、デブ美の目の前で起きている現象が現実のものなのか、よくわからなくなってしまう


もはや成り行きに任せようと、デブ美は空気になることを徹底した。


ちなみに、マイポリシーとして、体重と存在感は比例すべしというものがある。


故にデブのくせに存在感がない今の私は恥だと、そしてなにより、これは私の借金なのに当事者の私が全く一言も喋っていないのは筋が悪いと、心の奥底で思う自分はいたが、状況が状況である。


デブ美は堅く口を閉ざして、終始、地蔵になることに努めた。


そうこうしていると、あっさり兄ちゃんが投げ飛ばされていた。


ワンパンKOである。


兄ちゃんもそれなりの実力者のような雰囲気を醸し出していたような気がするのだが、木刀は真っ二つに折れ、兄ちゃんは積み上がった段ボールにぶん投げられて苦悶の表情を浮かべていた。


「あん? 大したことねぇなあ? もっと気張れよ」


兄ちゃんが悔しそうな表情を浮かべて起き上がろうとしたとき、応接間のドアが開き、中年のこれまたコワモテな関西弁男性が入ってきた。


「うおっ!? えらいことになっとんやん」


中年男が言いながら、荒井をみる。


……すると、


「うおっ!? これは荒井さん!? どないされたんですか!?!?」


中年男は荒井をみるや否や、いきなり膝を突き、土下座の構えをとろうとする。


「いや、ダチがよ、ここで借金しちまったって聞いたから、話聞いてもらおうと思ったんだよな」


「な、なるほど、話……ですか?」


そう言って、中年男は事務所の周囲を見渡す。


話合いはとうに破綻しているのが明白な状況ではあったが、中年男は荒井に話を合わせる


「そうだ、単刀直入に言うぜ。デブ美の借金はチャラな?」


「ええ……ちょっと待って下さいよ……流石にそれは如何に荒井さんと言えども難しい話でしょうって……」


中年男は困惑の表情をしつつ、荒井に懇願するようにしゃべる


「うーん、まあそれもそうか。それなら、こいつやろう」


なにやら荒井は一理あると言った様子で、おもむろに大きな壺を持ち上げた。


一体どこから出てきたのか一同驚く中、壺を中年男の目の前に置く。


「500万」


「え?」


荒井が急に500万と言って理解が追いつかない中年男は素っ頓狂な声が出た。


「この壺500万や。これやるから借金チャラやな」


「ああ、そういうこと……って、えーー!?」


中年男は、ちょっとそれは困るとでも言いたそうな表情をしているが、荒井の圧がそれをいうのを封じていた。


「500万」


「はい……」


中年男はよっぽど荒井に逆らえないのか、二つ返事で同意した。


「おっけ、話早くて助かるよ。これからも仲良くしてこうな」


荒井は半グレじみたセリフを残して、場を収めた。


「良かったなデブ美。とりあえず借金はチャラや」


「お、おう」


デブ美もデブ美でついて来れていなかったので、二つ返事をした。


すると荒井は


「はあ? てめえの撒いた種だろ! ちゃんとみんなに謝れや!」


デブ美はハッとした。


そうだ、これは私の撒いた種だった。


ずっと傍観していたが、本当は私がどうにかする問題だったはずだ。


荒井の一言で目が覚めたデブ美は両手を地につき、頭を地面に埋めながら


「ごめんなさあああい!!!!!!」


恐竜の叫び声ほどもある声量で荒井と借金取りの人たちに謝罪をした。


デブ美が謝って少し場が和やかになった。


「ああ、もうコイツらから金借りんなよ」


「うん…」


半べそになりながらデブ美は頷いた。


「よし! じゃあ一件落着!」


荒井がそう言ってその場が終わるかと思いきや…



「よっしゃ、あとは片付けやな。おい借金取り、しばらくデブ美よこすからコイツこき使ってくれ。雑用なんでも使い倒してええぞこのアホ。おら、デブ美、てめえは早くその辺片付け始めろ!」


「「……ええ」」


……デブ美はしばらく、ここで働くことになった



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