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41.やる気と能力

 弟にとって学校がどんな場所なのかは、聞いていない。小学生のときとはちがい、テストではときどき五十点満点かと思うほどの酷い点数を取ってくる。本人は面倒くさそうにしながらも、いたって平気に追試を受けている。あまりに授業中にさぼってばかりいると、テストの問題も解けなくなるようだ。九十点以上か、二十点代をさまようか、教科に隔たりなく、点数はいつも極端だった。


 それゆえ担任や親からは、やれば人並み以上にできる子だと認められながら、不思議に思われていた。


 洋介にとっては、努力をせずとも、なんでもできてしまうことが、かえってやる気をなくすことにつながっていたのかもしれない。


 天は彼にどれだけの才を与えたのだろう。真剣な眼差しは、弟の端正な顔さえ、再認識させられる。


「兄ちゃん、聞いてた?」


「ああ、好きな子の話か」


「馬鹿にしてる? そんなことひとこともいってないじゃんか」   


「ああ、ごめん。なんの話だったかな」


「ちがうクラスなんだけど、いじめにあってる女子がいるんだ」


「どこの学校にもいじめくらいあるだろうな。それとなんの関係があるんだ? まさか追いかけてった女子が、そのいじめられっ子だっていうのか?」


「いじめられっ子っていっても、ただの根暗じゃない。信じてくれるな。そいつ、雲の上を歩いてる感じなんだ」


「雲の上って、ほんとに雲の上を歩いてるわけじゃないだろ。大げさにいうなよ」


「雲の上を歩いてるように見える。校舎の中なのに、そいつだけの場所を歩いているような」


 言葉通りに捉えると、魔法使いか、超能力者だ。


「自分だけじゃなくて、おれにもわかるように説明しろ」


 洋介は鼻を赤くして、おれを睨んでいる。


「好きなの?」


 立ち上がった洋介のドロップキックが、顔面に飛んできた。勢いよくラグマットに倒される。


「兄ちゃん! 茶化すなよ」洋介は声を張り上げた。


 真剣にだれかのことを話す弟がめずらしくて、つい、からかい過ぎだ。弟は青くなったり、赤くなったりしている。こいつがこんなにかわいい奴だとは。


「ごめん、ごめん。それで?」


 お互い座り直した。



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