22.弟の料理が未知すぎるが
今までは食事が一日のうちの、考える余地なしルーティーンに組み込まれているだけだったのに、初めて意欲的に食べ物を口に運んでいた。洋介は食べ物がおいしいということが、喜びに変わるということを味わっているのだ。
その日から変わった。洋介は本格的に料理に興味を示し、食べることのみならず、作ることにもその対象を広げていった。
始めるが早いが、今まで小学校の調理実習でしか包丁を握ったことのないようなやつが、基礎を学ぶこともいやがらず、次々と料理をこしらえた。
わからないことは、ぼくや父さん、母さんに積極的に聞き、素直に聞き入れることで吸収していく。
両親は弟の意外な変化に驚きながらも、喜んでいた。両親は本当に料理が好きで、食べることも好きでたまらない人たちだ。今まで関心を示さなかった二人の息子のうち、一人が料理をするようになり、自分たちに教えを乞うてくれることは、なにより嬉しいはずだ。
父、母が開店したレストランを子供に継がせたいなんて、そんな身勝手な願いを押し付けるような両親じゃないが、進んで継ぎたいといってくれたらどんないいいかと、淡い期待くらいは抱いているかもしれない。
洋介はといえば、そんなこと考えてもいないだろう。
食事に対してまったく無関心であった彼は、ぼくのように隠れてこそこそ、ではなく、思いっきり料理をした。
ぼくたち二人っきりの夕飯には、洋介が作ったメニューがテーブルに並べられた。
素人特有の自由な料理は、常識を超えていた。ある程度知識があれば、逆に思いつかないようなメニューばかりだった。
玉子焼きはぐちゃぐちゃで、口に放ると、いつもの塩味ではなく、砂糖で甘くなってて、中にぷにぷにした食感があると思えば、角切りにされたクリームチーズだった。これはなんなんだと思いながら食べていたが、お菓子だと言われれば、おいしい、かもしれない。
発想と熱意、またそれを支えるだけの集中力には目を見張るものがあり、内心では初心者マークの弟の才能に驚かずにはいられなかった。
いつまでつづくんだろうか。飽きっぽい弟のことだから、すぐさまやめてしまうのだろうが。




