表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/46

23.白井はいつも空腹

 コトン、コトン。  


 二枚の陶器が響く音がした。若林さんが何か作ってくれたのかもしれない。こうばしい香りが漂い、忘れていた食欲を思い出す。


 でも思うように体が動かない。疲労に襲われ体はぐったりとしている。


 せっかく作ってくれた若林さんに申し訳ない。体を起こさなきゃ。そう、目を閉じてちゃいけない。


 気持ちとは裏腹に、体は底なしのソファに沈み込んでいくようで、意識と無意識の狭間をさまよっていた。



「できたんだけど、白井」


 四枚目の皿を置き終いてから、起き上がらない人をテーブル越しに覗きこんだ。さっきと変わらず、お腹に手を置いたまま、固まっている。あったかい皿を鼻先に近づけてみた。


 白くやわらかい湯気が、目を閉じたままの彼女の顔にふれる。


「食べたくない? 起きないと、一人で食うぞ」


 閉じた世界の指先が曲がり「待て」のポーズをとった。


「……食べる、食べたい」 


 眠そうな目をこすって、ようやく体を起こした。


「いい匂い」


 テーブルに移動して、食べ始めた。


 少し元気になったようだ。


 彼女が食事を取る状況というのは、これからも変わらないのではないだろうか。


 それでもおいしそうに、熱中して食べていた。


「おいしいんだけど、どうしてかぼちゃのポタージュと、ビーフシチューっていう組み合わせなの?」


 白井の前に並べられている二つの皿は、どちらもスープ状で、ご飯などの主食がない。


「まあ、いいじゃん。うまいんだろ?」


「うまいけど。でもなんで若林さんまで食べるの?」 


 かぼちゃのポタージュと、ビーフシチューは、ぼくのテーブルの前にもあった。


 うまくできたかが気になり、味見だけではなくて、実際に食べる人と同じ立場になって、食べてみたかった。最近は洋介の作ったものばかり食べていて、自分で作ることもできない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ