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12.爆音が届けられる家

 となりで弟が漫画を読んでいる。窓の外が暗くなってきたので、そろそろ電気をつけなければいけない。若林の一家が住んでいる九階建てのマンションは、広い国道の道路沿いに建っており、ベランダからは五階に住んでいるにもかかわらず、道路をひた走る多くの車の排気音の唸りが激しく聞こえてくる。それは朝昼晩、深夜とひっきりなしに爆音は届けられるのである。窓を閉めても、わずかに小さくなるだけで、部屋には絶えず外の音が鳴り響いている。


 そんなところで生活していると、気が狂わないかと思われるかもしれないが、生まれたときからこの騒音の中で暮らしていると、人はいつの間にか慣れることを知り、そのうち疑問も持たずに快適に過ごしていけるものなのである。一般的な環境で暮らしている人が、前触れなくこの空間で生活すると、そうはいかないだろうが。


 だが自分と弟の部屋は、道路に面しているリビングとは違い、反対の玄関側になるので、騒音はほとんど届いてこない。六畳の狭い部屋だが、その点だけ、恵まれていた。


 ベッドを置く広さはないので、寝るときはまた畳の九畳ほどの部屋に行き、両親と弟と一緒に四人で寝る。子供部屋にあるのは、小学校入学のときに買ってもらった学習机が弟のも含めて二つ。大きめの本棚が一つと、縦に長い小さめの本棚が一つ。二つとも入っている本はばらばらで弟と共有している。CDコンポが押入れの中に一つ。聞くときは押入れを開けるのだが、最近は開けっ放しになっている。窓がマンションの廊下側についているのだが、このままだと住人に部屋の中が丸見えなので、絶えず厚めのカーテンを引いている。


 放っておくとまったく日の光が入ってこない環境になるので、どんよりした空気にいらついたときは、思い切ってカーテンを開ける。代わりにレースのカーテンをかけておくが、そのあいだは他の住人に見られないように、窓枠より上に立ち上がったり、怪しい行動をとらないようにしている。

 狭い部屋に二人でいなくてもいいものを、ぼくたちはリビングに行かず、二人の部屋で好きなことをして過ごしている。ぼくは雑誌を見ながら、昼間食べることができず、満たされることがなかった食欲を落ち着かせるため、お菓子を食べながら、今日の奇妙な出来事を思い出していた。


 ひとりになれる部屋が欲しいときだけ、行くことになる屋敷だ。平日は学校があるので、行くとなると夕方になってから。日曜日はその気になれば、一日中ということも可能になる。そういえば貸してもらえる部屋を下見するのを忘れた。埃がたまっていると聞いたが、どれほどなんだろう。今度行ったときに掃除をしなければいけない。

 

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