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メインヒーローが何故か絡んできました

授業が終わり、下校時刻となった。



「ふぅ……何はともあれ初日が無事に終わって良かった」



私は靴箱までの道のりを歩きながら安堵の息を吐いた。



それにしても、まさか攻略対象三分の二と会話することになるだなんて……。

今日一日、本当に色んなことがありすぎて頭がこんがらがりそうだ。



いつもなら流星を待っている頃か……。



だけど今日の私には彼と一緒に帰るつもりはない。

先に帰っておいてと言ったから流星が私を待っていることも無いだろう。

まぁ、言ってなかったとしても彼が私を待つはずが無いのだが。



私は学内用のシューズを脱いで自分の靴箱から靴を取り出した。

新学期が始まったばかりなので、思わず一年生の頃の靴箱に行ってしまいそうになる。



いけないいけない、しっかりしないと。



私が靴を床に置いて履こうとしたそのとき、よく見慣れた黒い運動靴が私の目に入った。



「――おい」

「……え?」



機嫌の悪そうな声に、顔を上げた。





「りゅ、流星……?」



そこには、腕を組んでムスッとしている流星がいた。



「流星……どうしてここに……」

「――お前、アイツらとどういう関係なんだ?」

「……へっ?」



思わず間抜けな声が出てしまった。

ア、アイツらって誰……?私何かしたっけ……?



返答に困っていると、流星が苛ついた様子で付け加えた。



「力人と阿久津とはどういう関係なんだよ」

「桐生君と阿久津さんと?」



何故彼がそんなことを気にするのだろうか。

別に答える必要の無い質問だが、流星は私の答えを待っているようだ。

それならただ紛れも無い事実を言うだけだ。



「別に何の関係も無いよ。たまたま関わったってだけで……」

「……」



しかし、私がそう言っても流星のしかめっ面は戻らない。

長い間、彼を見てきた私だからこそ分かる。

彼は今、かなり不機嫌だ。



「それより、流星こそどうしてここにいるの?私事前に言ったよね、今日は一緒に帰れないって……」

「…………帰るぞ」

「え?」



そう言いかけたとき、流星が私の腕を掴んで歩き出した。



「………え、ちょ、ちょっと待って!」

「……」



流星を引き止めようとするも、彼は有無を言わさずに私を連れて行く。



「流星!」



そして私は結局、今日も彼と帰ることになってしまったのである。






***






「ハァ……疲れた……」



家に帰った私は、すぐに部屋にあるベッドにダイブした。



あれは一体何だったんだろう……?



流星の行動がまるで分からない。

彼は私に無関心で、これからヒロインである朱里と恋に落ちるはずなのだ。

それなのに、何故私にあのような態度を取るのだろうか。



ああ、もうよく分かんないなぁ……。





考えるのが嫌になって枕に顔をうずめたそのとき、部屋の扉がガチャリと開けられた。



「日和!」

「…………お母さん?」



嬉しそうな表情で私の部屋に入って来たのはお母さんだった。



もう、ノックくらいしてよね……。

お母さんは部屋に入るなり、ベッドで寝転がっていた私のすぐ傍に腰を下ろした。

そして、目を輝かせて私に尋ねた。



「日和、最近流星君とはどうなのよ!勿体ぶってないでお母さんに教えてよ!」

「……流星?」



あ、そういえばお父さんとお母さんは私が流星のこと好きなの知ってるんだっけ……。

記憶を取り戻す前の私は恥ずかしくてなかなかそれを話そうとはしなかったが。

この際、両親には自分の気持ちをハッキリと言ってもいいだろう。



だけど、どう言えばいいんだろう……。



悩みに悩んだ末に、私は口を開いた。



「お母さん、私流星のことはもう諦めたのよ」

「……」



お母さんは一度ポカンと口を開けて固まった後、すぐに心配そうに眉を下げた。



「日和、何か熱でもあるの?」

「そんなんじゃないって!」



もう、何でみんなそういう反応になるのよ!

あろうことか、お母さんは私の額に手を当てて熱を測り始めた。



「お母さん!本当に何とも無いんだって!」

「あら、そう?」



そこでお母さんはきょとんとした顔で私に尋ねた。



「流星君の他に好きな子でも出来たの?」

「いやいや、そういうわけじゃないんだけど……」

「じゃあどうして?」

「それは……」



登校中に段差につまずいて転んだら前世の記憶を取り戻しました、だなんて言えるわけない!



「ほら、私って今まで流星の気持ちも考えずに勝手なことばっかりしてたなって……ちょっと反省してさ……これからは流星の気持ちも考えようかなって……」

「日和……」



私がそう言うと、お母さんは再び私の額に手を伸ばした。



「やっぱり、熱があるのね」

「いやいや、無いって!」

「お父さんが帰ってきたらすぐに言わないと」

「ちょ、やめてー!」



私を溺愛しているあの父は、医者に連れて行くとか言い始めることだろう。

それだけは勘弁だ。



「それより、新しいクラスの方はどう?流星君と一緒のクラスにはなれたのかしら?」

「え……まぁ、なれたっちゃなれたけど……」

「良かったじゃない!!!おまじないまでした甲斐があったわね!」

「ちょ、それ言わないで!恥ずかしいから!」



春休み、流星とどうしても同じクラスになりたかった私は恋のおまじないの本を買い、「好きなコと一緒のクラスになれるおまじない」を片っ端から実践していたのである。



今思うと本当に恥ずかしい……。

穴があったら入りたい、とはこういうことを言うのだろう。



「というか何でそれ知ってるの、お母さん」

「日和の引き出しにあったノート、見ちゃった」

「いや、見ちゃったじゃないから!!!人の引き出し勝手に開けるなし!」

「いいじゃない別に」

「良くない!」



あのノートを見られていただなんて!



これもおまじないの一つに「ノートに好きな人の名前を書いて彼への想いを綴ろう☆」なんてのがあったせいだ。

そうだ、全てあのおまじないの本のせいだ。

私は悪くない。



「明日から授業が始まるんでしょう?日和は成績が良くないんだから、ちゃんと先生の話聞かないとダメよ」

「もう、やめてよ!子供じゃないんだから!」



とは言っても、私の成績が良くないというのは事実である。

断罪回避と同じくらいそっちも大事だったわ……。



そこでお母さんは閃いたと言ったように手をポンと叩いた。



「流星君にお勉強を教えてもらうのはどうかしら?ほら彼、成績優秀でしょう?」

「え……流星に?」



たしかに流星は頭が良い。

学期末のテストではいつも学年で五位以内をキープしているのだから。

それもまた、彼が人気である理由の一つだった。



だけど私はもう流星と必要以上に関わるつもりは……。



「流星、最近色々と忙しいみたいだし……やめとくよ」

「あら、そう?良い考えだと思ったのに」



お母さんは残念そうな顔をしていたが、こればっかりは私も譲れない。

だって私には、この先の人生が懸かっているのだから!



「お母さん、私課題やるからちょっと一人になりたいな……」

「新学期早々、課題があるの?」

「ア、アハハ……実はそうなんだよね……」

「そう、なら仕方ないわね」



お母さんはもっと私と話していたいという顔をしながらも、渋々部屋を出て行った。

再び部屋で一人になった私は、ベッドから起き上がった。



明日から乙女ゲームが本格的に始まるんだよね……。



正直怖いと思っている自分もいる。

ヒロインがどのルートに入るかによって、自分の運命は変わるのだから。

だけど、嘆いていてもしょうがない。



何としてでも卒業まで生き残ってやるんだから!




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