表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/32

攻略対象その③が誘惑してきます

「遅れるーーーーー!」



私は学校の廊下を猛ダッシュで走っていた。

何故こんな状況になっているのか。

理由はただ一つである。



聖地巡礼してたら遅くなっちゃった!!!




『あー!ここって流星とヒロインのラブイベントが起こる準備室じゃん!』

『ここ、ヒロインが桐生くんと初めてのキスを交わす場所じゃない!?』




感情の赴くままに校内をウロウロしていた結果、完全に遅刻してしまったのである。

夢中になって時間をすっかり忘れていたのだ。



急がないと大変なことになる!

あの先生、遅刻には結構厳しいから早く行かないと!





――ドンッ



と、思っていたら廊下の曲がり角を曲がったときに誰かとぶつかってしまった。

私は後ろに倒れ込んだ。



「イ、イテテ……す、すみません……」

「――君、大丈夫かい?」



柔らかいその美声に顔を上げると、金髪のくせっ毛をした青年が心配そうにこちらを見ていた。



あ……やらかした……。

その青年を見た私は廊下を走ったことを心の中で後悔した。



「さぁ、立って。服が汚れてしまうよ」

「あ、はい……」



彼の差し出した手を取って私は立ち上がった。

私の手をギュッと握った彼はニッコリと笑った。



ま、眩しい……!

それより、どうしてこんなにも立て続けに出会うの……。



紳士的なその人物は、乙女ゲームの攻略対象その③だった。





――阿久津京也



一言で言えば、女好きのサボり魔である。

学内で不良として有名な彼は、授業をサボってはいつも女子と遊んでいる。

生粋のダメ人間だが、女子たちは「むしろそこがいい!」とキャーキャー騒いでいるのだ。



たしかに顔カッコイイし、紳士的だけど授業には出ないとダメでしょうよ。



ちなみに彼も私やヒロインと同じC組だ。

同じ学年なのでもちろん顔も知っている。



「あ、阿久津さんだったんですね……」

「ん?誰かと思ったら五条さんか」



私の顔をまじまじと見つめた阿久津さんが言った。

どうやら相手も私のことを知っていたようだ。

私は学内でかなりの有名人だったらしい。

悪い意味で。



「ところで、こんなところで何をしてるの?もう授業は始まってるでしょ?」

「えっと……今から向かうところです」

「ふーん」



阿久津さんはそこで自身の顔をグッと近付けてきた。



ちょ、ちょっとやめて!そういうのはダメだって!

今にも悶え死にそうだ。



「ねぇ、良かったら俺と一緒に遊ばない?」

「え、今からですか?」

「そう、俺と遊ぶの楽しいよ?」



フッと笑うその姿は本当に魅惑的である。

男性経験が無く、押しに弱い私はつい「はい」と言ってしまいそうになる。



ダメダメ!授業をサボるだなんてそれこそ印象が悪くなっちゃう!

もしそうなったら学園退学まで一直線だ。



「阿久津さん、ダメです!」

「どうして?」

「授業サボるだなんて、良くないことですよ!」

「たまにくらいだったら大丈夫だよ」



しかし、阿久津さんもなかなか退かない。



早くしないと……ていうか今何時!?とっとと行かないと私の将来に関わるんですけど!



そこで手首に付けていた腕時計を見た私は絶句した。



「あー!!!」

「……?」



突然大声を上げた私を阿久津さんは不思議そうな顔で見つめた。



「もうこんな時間!阿久津さん!早く教室行かないとまずいですよ!」

「えっ、俺は別に授業に参加するつもりは……」

「ほら、早く早く!」

「あ、ちょっ……」



私はすぐに阿久津さんの腕を掴んで廊下を走り出した。

突然腕を掴まれて不快な思いをしているはずなのに、さすが紳士というべきか無理に振り払おうとはしなかった。



もう五分以上経ってるじゃん!

このままじゃ居残り確定だよ!



それから少ししてやっとC組の教室に着いた。

私は阿久津さんの腕を掴んでいない方の手で教室のドアを勢い良く開けた。



「遅れてすみません!」

「こら!何分経ってると思っているんだ!…………………って、阿久津?」



担任教師が阿久津さんを見て驚いたような顔をした。

当然だ、彼はサボり魔として教師たちも手を焼くほどの問題児だったのだから。



「見て、阿久津くんだわ……」

「まさか授業に来るだなんて……!」



彼を見た途端、女子たちがきゃあきゃあ騒いでいた。



ラッキー!生徒たちの関心を私から逸らせた!

このときばかりは、阿久津さんに感謝した。



担任教師は阿久津さんを見て困惑しているようだ。



「と、とりあえず二人とも早く席に着きなさい」

「は、はーい……」

「……」



私と阿久津さんが席に着き、授業が再開された。

椅子に座った私は、乙女ゲームの阿久津ルートの展開を思い出していた。



阿久津さんとヒロインはどうやって恋に落ちるんだっけ……。





『ねぇ君、見ない顔だね。可愛いじゃん。今から俺と遊ばない?』

『や、やめてください……』

『いいじゃん、何なら俺の女にしてあげてもいいけど?』



そこで阿久津さんがヒロインの頬に手を伸ばす。



『――いい加減にしてください!』

『!』



ヒロインはその手をバシッと振り払うのだ。



『俺の誘いを断るだなんて……なかなか面白い子だな』



阿久津さんは、初めて自分の誘いを断ったヒロインに興味を持ち始めるところから始まる。





それからヒロインと一緒に過ごしていくうちに彼女の誠実さに惹かれて信じられないくらい真面目でヒロイン一筋の男になるんだっけ……。



あの女好きが?

どうやらヒロインパワーというのは伊達じゃないらしい。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ