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夏祭り②

「ハァ……ハァ……」



夏祭りの途中、私は適当な理由を付けて流星たちと離れて一人別の場所にいた。

久々に走ったせいでかなり疲れたが、作戦は成功したから問題ない。



よし、ヒロインと流星を二人きりに出来た!



そう、私の目的は流星と朱里ちゃんを二人きりにすること。

一ノ瀬君がたまたまお手洗いに行ったため、チャンスだと思い決行したのだ。



朱里ちゃんのことが好きな一ノ瀬君には申し訳ない気持ちでいっぱいだが、私はやっぱり前世の推しのイチャラブが見たい!



だからこそ、二人が結ばれる道を応援したいとまだ思っている。

日和として過ごした記憶が残っているからか、悲しい気持ちも無いことは無かったが我慢だ。

――どうせ私たちは結ばれない運命にあるから。



……一人で好きなところ回るってのも案外良いかもしれない。

朱里ちゃんたちには電話しておけばいいだろう。



そう思い、歩き出そうとしたそのとき――



「日和!」

「え……?」



背後から聞き慣れた声がして振り返ると、流星がこちらに向かって走っていた。



え、何でここに流星がいるの!?

ヒロインと二人きりになったのでは!?



困惑する私をよそに、彼は私の肩をガシッと両手で掴んだ。



「お前、何でこんな遠くまで来たんだ!!!」

「りゅ、流星……?」



流星の額には汗が流れていて、かなり私を捜したのだということが伝わってきた。



どうして……?

彼の行動が理解出来ない。



「な、何で……」

「……とにかく、もう一人でどっか行ったりするな」



そこで流星は私の肩からパッと手を離した。

私は汗を拭う彼の後ろ姿に声を掛けた。



「ね、ねぇ……流星……」

「何だ?」

「早く朱里ちゃんたちのところに戻らないと……!」

「……」



私一人ならこのまま行っても良かったが、流星が一緒となると話は別だ。

一刻も早く朱里ちゃんと一ノ瀬君のところに戻らなければ。



「戻る必要があるのか?」

「え……?」



流星は不機嫌そうに顔をしかめた。



「あっちはあっちで仲良くやってるんだ、俺たちは俺たちで楽しめばいいだろ」

「あっ、ちょっと待って流星!」



彼はそう言いながら私の手を掴んで引っ張った。



「これじゃ二人きりじゃん……」

「別にいいだろ。……俺は元々そのつもりで誘いを受けたんだから」

「……?」



ヒロインと流星の恋を進展させるつもりが、私が彼と一緒に過ごしてどうすんだ!

こうして私は、何とメインヒーローと二人きりでデートすることになってしまったのである。



どうして私が……。



「ねぇ、流星……」

「何だ?」

「あ、あれ……」

「何だ?まだ何か食べたいのか?」

「ち、違う!」



本当に私を何だと思っているんだ。



「あれ……やってみたい」



私が指を差した先にあったのは、屋台の射的コーナーだった。



「あ、お金……」

「これで」



財布を出そうとしたが、隣にいた流星が先に料金を払ってしまった。



「流星!」

「気にするな」

「気にするよ……」

「じゃああれだ、部活終わりの差し入れのお返しだとでも思え」

「……」



まぁ、それならいいか。

そう結論付け、私は流星のお金で射的にチャレンジした。

が、しかし――



「ぜ、全然上手く出来ない!」

「お前は昔から本当に不器用だな」

「うう……」



返す言葉も無かった。

俯いた私の頭に、彼がポンと手を置いた。



「あれが欲しいのか?」

「……?う、うん……」

「俺が獲ってやるから、そんなに浮かない顔するな」

「……流星」



流星は私の手から銃を取ってさっと構えた。

そして彼は見事的中させたのだ。



「わー、お兄さんすごーい!」



周囲からワァーっと歓声が沸き上がった。

す、すごい……!

たったの一発で獲っちゃうだなんて……!



私があれほど苦戦していたのが嘘みたいだ。



「ほら、これ欲しかったんだろ?」

「あ、ありがとう!」



受け取ってお礼を言うと、流星はほんの少しだけ微笑んだ。

そ、その笑顔は狡い……!

私が超絶イケメンの笑顔に慣れる日は永遠に来ないのかもしれない。





***




それからしばらく、流星と二人で屋台を回った後朱里ちゃんから電話が掛かってきた。



「うん、そっか……分かった」



電話を切った私を見て流星が尋ねた。



「白石は何て言ってたんだ?」

「もう遅いからそのまま解散にしようって」

「そうか」



流星の言う通りあちらはあちらで楽しんでいるようだ。

何はともあれ、楽しめたならよかった。



「うん、ここでお別れだね。じゃあまたね、流星」

「おい」

「……?」



背を向けた帰路につこうとした私を彼が引き留めた。



「どうせ家近いんだから一緒に帰ればいいだろ」

「あ……」



言われてみればたしかにそうだ。

最近になって流星と登下校しなくなったからか、家が近いということをすっかり忘れてしまっていた。



「あ……花火……」



私の何気ない呟きに、流星が空を見上げた。



「……綺麗だな」

「……うん、本当に綺麗」



流星がそんなことを言うだなんて、余程今回の夏祭りが楽しかったのかな?

私は空を見上げる彼の横顔をじっと見つめた。

楽しんでくれたみたいで良かったと思う気持ちと、私が彼と二人きりで過ごしてしまって良かったのかと思う気持ちが入り交ざった。



……でも今はそんなこと気にしなくていいか。



私たちはしばらくの間立ち止まって、空に打ち上げられる花火をじっと見つめていた。




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