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メインヒーローの様子が何だか変です!

そうこうしているうちに、一限が終わった。

今から十分間は自由時間である。



「皇君!」

「同じC組だね!」

「一年間よろしくね!」



流星の席の周りにはあっという間に人だかりが出来ている。

主に女子生徒の。



去年は私もあんな風に行ってたんだっけ……懐かしいなぁ……。



以前の私は、あんな風に流星の周りに集まる女子たちを押し退けて一番に彼の傍に行っていた。

そんな私を見て顔をしかめる流星に笑顔で話しかけていたのだ。



今思うとすっごい迷惑ね……。

もうそんなことはしないから安心してね、流星。



私はそう思いながら女子たちに囲まれている流星を見た。

どうやらヒロインである朱里は完全に遅れを取っているようで、流星の周りに集まる女子たちを見て狼狽えている。



ああ、もう!そういうところも可愛い!



あたふたしているその姿までもが愛らしい。

ヒロインの朱里は、私の前世の推しでもあった。



心の中でキャーキャー騒いでた私に、声を掛けてきた人物がいた。



「おい、行かなくていいのか?」

「…………桐生君?」



私に話しかけてきたのは前に座っていた桐生君だった。

相変わらず顔が良い。

ふと周りを見てみると、流星と同じく彼にもまた話しかけようとしている女子がいる。

しかし、その冷たい風貌に恐れをなしているのかなかなか近付こうとはしない。



「行くってどこに?」

「流星んとこ」

「私がどうして?」



桐生君は目をパチクリさせた。



「どうしてって……お前いつも真っ先に行ってたじゃん」

「あ……」



桐生君にあれを見られていたとは、恥ずかしい。



「何か今日のお前変じゃないか?いつもと違うぞ」

「え、そ、そうかな……?」



まさか、気付かれた!?

焦った私はすぐに誤魔化した。



「私ね、もう流星のことは諦めたの!」

「……何だって?」



桐生君が怪訝そうな顔をした。



「頭でも打ったのか?」

「ち、違うよ!」



どうやら桐生君は信じられないようだ。



まぁ私が流星のこと大好きだったのは有名な話だし、無理もないか……。

そして流星が私を疎ましがっているのもまた有名な話だった。



「変な物でも食ったのか?」

「だから違うって!」



まだ私に疑いの目を向ける桐生君。

私はそんな桐生君にハッキリと告げた。



「と、とにかく!私は今、流星のことは本当に何とも思ってないのよ!」



「――おい」



大声でそう言ったその瞬間、突如低い声が私たちの間に割り込んだ。



こ、この声はもしかして……!

おそるおそる後ろを振り返ると――



や、やっぱり……。



案の定、そこには不機嫌そうに眉をひそめている流星がいた。



どうしてここに流星が!?女子たちは――いや、ヒロインはどうしたのよ!

彼を囲んでいた女子たちは、遠くから敵対視するかのように私を見つめていた。

これは明らかに私のせいじゃない。

理不尽である。



「りゅ、流星!」



突然流星が現れて驚く私とは対照的に、桐生君はまるで動じなかった。

それどころか、流星を見て面白そうにニヤニヤしている。



そのとき、流星と桐生君の視線が重なった。



……あ、もしかして私じゃなくて桐生君に話しかけに来たのかな?



そういうことなら納得がいく。

桐生君は流星の友達なのだから。



流星は桐生君に何を話すんだろう?まさか、気になる女が出来たとか!?キャーーーー!!!



一人で悶絶していた私の腕を、流星がガシッと掴んだ。



「……え?」

「力人、コイツを借りるぞ」

「ああ、別にかまわないけど」



それだけ言うと、流星は私の腕を掴んだまま教室の外へと連れ出した。

それを見た女子たちの悲鳴が聞こえてくる。



ちょ、ちょっと何!?




***




私が流星に連れて来られたのは、人気のない渡り廊下だった。



「流星、どうしてこんなところに?」

「……」



流星に尋ねてみるも、彼からの返事は無い。

今までこんなことをしてきたことなんて一度も無かったというのに、一体どうしたのだろうか。



いや、いっそ二人きりになれてちょうど良かったのかも?

私も話したいことあったし!



「――お前に聞きたいことが……」

「流星、私あなたに話があるの」

「…………何だ?」



私は何かを言いかけた彼の言葉を遮った。

気付いたら休み時間が終わるまで残り五分を切っているではないか。

それに気付いた私は早口で大事なことだけを流星に伝えた。



「今日のお昼、多分一緒に食べられないと思うから……他の子と食べてね!」

「……何?」

「あ、それと今日の帰りも私予定が出来ちゃったから先に帰ってて!」

「……」



私と流星は毎日のように昼食を共にし、家が近いのを口実に二人で帰っていた。

全ては、流星の意思をガン無視した私の我儘だったのだが。



私たちを恋人だと誤解してた人も多かったんだっけ……。



今考えると、これからヒロインと恋に落ちることとなる流星からしたら迷惑でしかなかったよなぁと。

だけど記憶を取り戻した今、流星とヒロインとの恋を邪魔するつもりは一切ない。

むしろ応援してあげたいくらいである。



今日のお昼はどうぞヒロインと一緒に過ごしてください!



乙女ゲームの展開とは少し違うが、まぁ問題は無いだろう。



「じゃあ、私そろそろ行くね!流星も授業に遅れちゃダメだよ?」

「……」



私の言葉に、流星はポカンとしていた。



あれ?嬉しくて何も考えられなくなっちゃった?

私は嬉しさのあまり固まる流星を一人残して、教室へと戻った。






***





教室へ戻って自分の席に着くと、桐生君が私に話しかけてきた。



「五条、流星と何を話したんだ?」

「えっ、何でもないよ。ちょっとした世間話!」

「そのわりには、アイツ抜け殻みたいになってるけど?」

「え……?」



ちょうど今教室に戻って来た流星の方を見てみると、たしかにいつもより少しだけ生気が無いように感じる。

彼の幼馴染である私や友人の桐生君ぐらいしか分からないほどではあるが。

流星との付き合いはかなり長いが、こんな彼は初めて見る。



え、まさかヒロインに振られた?



いくら何でも告白するの早くない?

というかそもそも告白してたのか。



しかし告白されたというわりには彼の前に座っているヒロインに特に変わった様子は無い。

真相は闇の中である。



「本当に何も無かったんだけどなぁ……」

「……」



首を傾げて流星を見つめる私を、桐生君は無言でじっと見つめていた。




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