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ヒロインと攻略対象その②と出会いました

トイレから出た私は、今年度のクラス分けの紙が貼られている靴箱へと向かった。

とは言っても、私は既に自分が何組なのかを知っている。



……やっぱりね。



念のためにと紙を見に行った私はハァとため息をついた。



『2年C組 五条日和』



そしてC組には流星の名前もあった。

流星だけではない、他の攻略対象三人もC組なのだ。



ヒロインはこれから彼らと恋に落ちるのよね……。

本音を言えば羨ましくてたまらない。

しかし私は悪役令嬢。

恋愛などしてる暇は無く、断罪回避をするので精一杯である。



自分の運命にげんなりしながらも、私はC組の教室へと入った。



もうみんな集まってたようで、教室では既にほとんどの生徒が席に着いていた。

しかし、その中で一人だけ輝きを放つ生徒がいた。



あ、あれは……!



ふわふわな金髪に、大きくて丸い目。

透き通るように白い肌にぷっくりとしたピンク色の唇。

男の庇護欲をそそる華奢な体。

花も綻ぶほどの美少女である。

間違いない、彼女がヒロインだ。



えーっと……ヒロインの名前はっと……。

私は教室の前に貼られている座席表でヒロインの名前を確認した。



――白石朱里



どうやらヒロインの名前は白石朱里というらしい。



ヒロインの名前はプレイヤーが決めるから分かんなかったんだよなぁ……。



彼女は窓際の後ろから二番目の席に座っていた。

教室にいる生徒たちがヒロインである朱里をチラチラと見てはザワザワしている。

無理もない、彼らからしたら朱里は「謎の美少女」なのだから。



私はそこで教室の中を見渡してみる。



流星はまだ来てないみたいね……。



そう、乙女ゲームは既に始まっているのだ。

何せヒロインである彼女の後ろの席が流星の席なのだから。



乙女ゲームでは、流星と悪役令嬢である日和が二人揃って教室へとやって来る。

そこで自分の席に行った流星が前に座っていたヒロインに対して「見ない顔だな」と声を掛けるのだ。

そこから二人は少しずつ交流を持ち始める。



私に対してはいつもあれだけ無愛想だったくせに……初対面のヒロインにはそんな風にするのね!



今考えると腹が立ってくる。

ヒロインほどでは無いが、日和だって十分可愛い部類に入る。



ああ、もう!あんな人知らない!



流星に対する不満を露わにしながらも席に着いたそのとき、突然教室に歓声が響いた。



「キャーッ!!!」



え、何?



驚いて振り返ってみると、ちょうど流星が教室へと入って来るところだった。



あ……そっか……。



流星は学内でファンクラブが出来るほどの人気者。

教室に入るだけで女子たちがそのような反応になるのも無理はない。

彼を見た女子生徒たちが口々に騒ぎ始める。



「皇君はいつ見ても素敵だわ……」

「同じクラスになれただなんて信じられない!」

「絶対に彼の心を射止めて恋人になってみせるんだから!」



「……」



以前の私なら彼女たちに対抗心を燃やしていただろう。

しかし今は別に何とも思わなかった。



みんなの憧れの的であるその皇くんの心を射止めるのは他でもないヒロインなのよね……。



「――おい」

「……へ?」



突然声を掛けられて顔を上げると、そこにいたのは流星だった。



え、な、何で!?



とっくにヒロインのところに行っているかと思っていた流星が、何と私の席の前にいるではないか。

これは一体どういう状況なのだろうか。



「お前……」

「……」



流星は私の顔をまじまじと見つめた。



ちょ、ちょっとそんなに見つめないでよ!アラサー喪女にはキツいのよ!

いるだけで神々しいオーラを放っているというのに、傍まで来られたらたまったもんじゃない。



「りゅ、流星?どうしたの?」

「お前は……」




「――席に着け!始めるぞ!」



「あ……」



流星が何かを言いかけたとき、担任教師が教室へと入って来た。

その声で騒がしかった教室が静かになり、全員が自分の席に戻った。



「……」

「りゅ、流星……?」



そして流星もまた、彼らと同じく無言で席へと戻って行った。



な、何だったのかな……?



不思議に思って流星の方をチラリと見てみると、ヒロインの後ろの席に座っている彼は机に肘をついて窓の外を眺めていた。

それを見た私は焦った。



ちょ、ちょっと待って……まさか私、ヒロインとヒーローの仲良くなるイベントぶっ潰してない!?何てことだ!



後悔してももう遅かった。





「――今からプリントを配布する。貰った人は後ろに回すように」



全員が席に着いたのを確認した担任教師がプリントを前から配り始めた。

各自、後ろの席の人へと回していく。



「ほら」

「あ、ありがとう!」



前の席の人からプリントを受け取ったそのとき、渡してきた彼の顔にどこか見覚えがあることに気が付いた。

そしてその人物の顔を凝視していたら、彼の方から話しかけてきた。



「って、五条か?」

「………桐生君?」



ま、待って……嘘でしょう……?

まさか桐生君が私の前の席だったとは。





――桐生力人



何を隠そう彼は攻略対象その②なのである。

緑色の髪をオールバックにした彼は、キリリとしたイケメンである。

冷たい印象を持つ彼が、ヒロインの前でだけは甘くなるのが良いとプレイヤーの間では流星の次に人気のあるキャラだった。



しかし、私からしたら眩しすぎて敵わない。

高校生なのに髪染めてんのかよ……ヒロインもだけど。



「五条が後ろの席か」

「う、うん……よろしくね、桐生君」



ちなみに私・五条日和も流星を通じて桐生君とは何度か話したことがある。

流星と桐生君は友達だったからなぁ……。



あまり人を寄せ付けないことで有名な流星の唯一の友達が彼である。

そして彼もまた、学内の女子からの人気は凄まじい。



記憶を取り戻して早々、眩しすぎる二人と会話しちゃうだなんて……。

ツイてるのか、ツイてないのか。



「おっ、流星が他の女子と話してるぞ」

「え……?」



面白そうにそう言った桐生君の視線の先を追うと、流星とヒロインが楽しそうに話していた。



あ……。



――ズキンッ



胸がズキッと痛むのを感じた。

記憶を取り戻したからといって、私の流星に対する気持ちはまだ完全には消えていないらしい。

ダ、ダメよこの気持ちは!



しかしこの恋が叶うことが無いということを知っている私は、必死でかき消した。



「う、うん、そうだね」



私は平然を装って笑顔で応えた。



「……お前」



そんな私を見た桐生君が驚いたように目を瞠った。



「てっきり嫉妬で大暴れするかと思ってたんだけど」

「え、ええ!?」



私、そんな女だと思われてたの!?



「そ、そんなことしないよ……もう、桐生くんってば」

「……」



桐生君は切れ長の瞳をスッと細めて私をじっと見つめた。



こ、怖い!知ってたけど怖い!

乙女ゲームの中で見た桐生君と違いすぎる。

ヒロインの前では顔を赤くしながら目を逸らすような男だったというのに。





「こらそこ!何を話してるんだ!」

「「!」」



どうやら教師に見つかったようだ。

教室にいる生徒の視線が私たちに注目した。



「あ……」



桐生君はサッと前を向き、私も慌てて姿勢を正した。



「大事な話をしているから私語は慎むように」



どうしようかと思ったが、注意だけで済んだようで良かった。



そうして授業は再開された。



流星とヒロインの進展具合はどうなってるかな……。

そのことがどうも気に掛かっていた私は、窓際の席をチラリと横目で見てみた。

すると、私をじっと見つめていた流星と目が合った。



「!?」



彼は何故だか不機嫌そうに私を見ていた。



こ、これはもしかして……唯一の友達を私に取られて悔しいということなの!?




あれBLゲームだったのか。




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