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頑張った甲斐がありました!

週明け。

朝、廊下にはテストの結果が書かれた紙が貼り出されていた。

そこには各学年の生徒たちの総合順位が載っている。



しかし、もちろん全員の順位が公開されるというわけではない。

この学校で順位が公開されるのは上位三十名までだ。



他の学校だと上から下まで全員公開みたいなとこもあるんだよね……。

そうじゃなくて良かったぁ……。



私は紙の前に集まる生徒たちを押し退けて何とかトップ層の名前を確認した。

もちろん自分がそこにいるとは思っていないが、こういうのは誰でも見たくなるだろう。



そうして紙を視界に入れた私の目に、よく知った人物の名前がいきなり飛び込んできた。



『三位 C組 皇流星』



やっぱり流星は頭良いなぁ……。

私の勉強に付き合っていたというのに、彼はいつも通りの順位をキープしていた。



トップ五位までの確認を終えた私は、ゆっくりと視線を下へとずらしていった。

するとまたしても、親交のある人間の名前が目に入った。



『七位 C組 桐生力人』



桐生君だ。

トップ十位の中には、桐生君の名前もあった。

彼もまた、流星と同じくらい頭が良い。



『二十六位 C組 白石朱里』



二十番台には朱里ちゃんの名前もあった。

乙女ゲームの中での彼女は、人に見えないところでたくさん努力をしていた。

だからこのような順位になるのは当然のことだった。



というか、私ってこんなトップクラスの人たちに勉強教えてもらってたんだ……。

何て環境に恵まれているんだろう。



とりあえず、知ってる人で公開されてるのはこれくらいかな?

そう思った私は、ひとまず教室へと移動した。



ランキング外の生徒たちの順位は個別に配布される成績表に記載されている。

朝のホームルームで配られるはずだから、あともう少しで私の順位も明らかになるということだ。



それまでドキドキしながらも、私はホームルームまでの時間を席でじっとして過ごした。



そして遂に、順位の書かれた紙が配布された。



教室のあちこちから生徒たちの悲鳴が聞こえてくる。



正直に言えば見たくない。

しかし、見ないというわけにもいかない。



私は手の震えを必死で抑えながら、ゆっくりと結果票を開いた。

そこに書いてあった順位は――



「あ……」



二年生は全部で二百人。

そして、私の順位は八十五位だった。

何と半分より上である。



流星や朱里ちゃんたちに比べるとだいぶ下ではあるが、前回と比べたらかなり上がっている。

これ、私が努力した結果ってことだよね……?

そう思うと、何だか嬉しくなった。



「――その顔だと、なかなか良い順位取れたみたいだね?」

「……阿久津さん!」



座っていた私の元へ突如やって来た阿久津さんは、ちょうど空いていた私の前の席に腰を下ろした。



「んで、何位だったの?」

「えっ……」



そんな風に何の遠慮も無く聞いてくるやつがあるか。

私がジト目で見つめていると、阿久津さんが紙を覗き込んできた。



「ちょ、ちょっと!勝手に見ないでください!」

「ふーん……いいじゃん、半分より上なんだし」



急いで隠したつもりだったが、どうやら完全に見られてしまっていたようだ。

前より上がったのは事実だが、人に自慢出来るような順位では無い。



「こ、今回はたまたま良かったんです……流星や朱里ちゃん、桐生君に勉強を教えてもらったので……」

「サラッと言ってるけどそれなかなかすごいメンツだからね」

「た、たしかに……」



そんな面々に直々に勉強を教えてもらえるだなんて、他の生徒たちからすれば憧れどころではないだろう。

阿久津さんは机に肘をつきながらつまらなさそうな顔で流星や桐生君のいる方向に目をやった。



「皇君や桐生君はさすがって感じだよねぇ。あの二人いつもトップキープしてるんでしょ?」

「はい、本当にそうですね……私とは脳の作りからもう違うじゃないんかと疑ってしまうほどです」



私が冗談交じりにそんなことを言ったとき、二人の女子生徒が突然私たちの間に割り込んだ。



「あ、阿久津君!」

「んー?」

「……?」



私がいることなど気にも留めずに彼女たちは顔を赤らめて阿久津さんだけを見つめていた。



「その……今日のデートのことなんだけど……」

「ああ、もちろん覚えてるよ」



阿久津さんがニッコリ笑ってそう言うと、女子二人組は嬉しそうにキャッキャッと騒ぎ始めた。



「じゃあ学校終わりに校門前集合で!」

「うん、待ってるね」



どうやら阿久津さんは今日の放課後に彼女たちと遊びに行くようだ。



「遊ぶ約束してたんですね」

「五条さんも来るかい?」

「遠慮しておきます」



授業には参加するようになったものの、女好きというのは変わらないようだ。

というか、私が参加したら絶対二人のテンション下がるって……。

当の本人は全く気にしていないようだったが。



「そうだ、阿久津さんは総合何位だったんですか?」

「……気になるの?」

「私のを見ておいて、自分だけ言わないつもりですか?」

「うーん……そうだなぁ……」



阿久津さんはしばらくの間考え込む素振りを見せた後、私の顎をクイッと手で持ち上げた。



「なら、五条さんが俺とデートしてくれたら教えてあげてもいいかな」

「……なッ!?」



突然の行動に、私の顔はみるみる赤くなっていった。

ハッとなった私は、彼の手から逃れるように顔を背けた。



「冗談はやめてください!心臓に悪いです!」

「別に冗談を言ってるつもりはなかったんだけど」



阿久津さんはそんな私の反応を見てクスクスと笑った。

人をからかうだなんて、本当に狡い人だ。



「ほら、一限が始まりますから早く席に戻ってください!」

「アハハ、分かったよ。本当に面白い子だなぁ」



面白い子?

それは一体どういう意味よ。





***




あっという間に授業が終わり、帰る時間になった。



「あ、流星!」

「……?」



私は教室の中にいた流星に声を掛けた。

彼はちょうど帰る支度を終えたところだった。



「あのね、期末考査流星のおかげで良い順位取れたよ!」

「そうか」



私の言葉に、彼は口元に満足げな笑みを浮かべた。

流星ってこんな顔するんだ……。

長い時間を彼と共にしている私ですら、滅多に見れない顔だ。



「良かったな」



すると、流星が私の頭をポンポンと撫でた。



「ッ!?」



驚いた私は思わず流星から距離を取った。



こ、これはダメよ!

アラサー喪女にはしんどすぎる!

本音を言えば、今にも鼻血が出そうだった。



流星はそんな私を見てきょとんと首をかしげていた。

もしかして自分がイケメンだっていう自覚すらないのだろうか、この男は。

何てやつだ。



「そろそろ帰るか」

「え、一緒に……?」

「……俺と一緒は不満なのか?」

「い、いやそういうわけじゃないよ!」



流星に嫌われるのだけは絶対にダメ!

そうなれば断罪エンドまっしぐらだから!

少なくとも嫌われずに上手く距離を置かないと!



そう思った私は、素直に彼の提案に頷いた。



それから流星と私は二人並んで帰路についた。

お互いに話すことも無く、ただどちらかが喋るのを待っているだけだった。



ど、どうしよう……。

何か話さないと……。



このようなときに流星が自分から話すことはほとんどない。

だからこの気まずい空気を変えるためには、私から彼に声を掛けるしかないのだ。



何でもいいからと口を開こうとしたそのとき――



「――日和」

「……?」



何と、驚くことに流星が私に話しかけてきた。



「な、なぁに……?」



声に反応して横を歩いていた流星に目をやると、秀麗な彼の横顔が目に入った。



「……一昨日のあれ、なかなか似合ってたぞ」

「……!」



ま、まさかあのパーティードレスのこと……

私は恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまった。




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