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テスト終わりの休日です!

「休みーーーーー!!!」



期末考査が無事に終わり、休日に入った。

私がこの日をどれだけ待ち望んでいたか。



何をして過ごそうかな?

朝起きて早々、家でゆっくりするか、どこかに出掛けるかの二択で悩んだ。



うーん……やっぱり疲れてるし一緒に出掛ける相手もいないから家でゆっくりするか。

そう思い、私は部屋にあるベッドにスマホ片手に横になった。

ゲームでもしようかとアプリを開いたそのときだった――



「日和!!!」

「ギャッ!」



部屋の扉を勢いよく開けて入って来たのはお母さんだった。

驚いた私はベッドから飛び起きた。



「お母さん!おどかさないでよ!」



お母さんを非難の目で見つめるが、お母さんはそんなもの意に介さずズカズカと部屋に入って来た。



「日和、今すぐお出かけの準備をするわよ」

「な、何……?」

「結婚式に行くのよ」

「はぁ?誰の?」



お母さんの話によると、今日は親戚の結婚式があるらしい。

何故今になってそれを言ったかというと、完全に両親のせいである。

お母さんはお父さんが私に既に伝えていると思い、お父さんはお母さんが言ってあると思っていたというわけだ。



だからってそんなのないよ……。

せっかくの休みなのに……。



「お母さん、私パーティー用のドレス持ってないよ」

「お母さんのを貸すから」

「ヘアメイクはどうするのよ」

「お母さんがやってあげるからさっさとしなさい」



お母さんが持っていたネイビーのパーティードレスに着替えた私は、すぐに母の手によってメイクを施された。



「ほら、出来上がり!」

「わぁ……」



私は前世を含めてあまりメイクやファッションを楽しむ人間では無かった。

元々自分の容姿に自信が無かったし。



しかし、私が転生した五条日和は違う。

ヒロインには劣るが、悪役令嬢の役割をする彼女もまた容姿端麗である。



日和ってこんなに可愛かったんだなぁ……。

鏡を見ると、まだあどけなさの残っていた少女が一気に大人っぽく成長していた。

髪の毛はサイドを三つ編みにして後ろで一つにまとめている。



私の母は元美容師で美容学校を卒業している。

そのため、ヘアアレンジやメイクがかなり上手い。



「日和、すっごく綺麗よ!」

「ありがとう、お母さん」

「さぁ、早く会場に行きましょう」



それから私たちは車に乗って結婚式が行われる会場へと向かった。

まずは受付で貰った招待状を見せた。

チャペルに入った私たちは、座席の空いているところに腰を下ろした。

挙式まではまだ少し時間があるようだ。



本日の主役はお母さんの年の離れた妹である。

私も小さい頃に何度か会ったことがあり、顔もうっすらと覚えている。

とは言っても、関わったことはほとんど無いが。



「日和!そろそろ式が始まるわよ!」

「あ、はーい!」



じっと考え事をしていた私は、お母さんの声でハッとなって姿勢を正した。



「新郎の入場です」



今日のもう一人の主役である妹さんの旦那さんが入場してきた。

なかなかのイケメンで、黒いタキシードがよく似合っている。

……本当にこの世界、顔面偏差値高い人多すぎじゃない?



「新婦の入場です」



その声で今度はウエディングドレスに身を包んだ叔母さんが入場してきた。

隣で腕を組んでいるのはお母さんと叔母さんのお父さんであり、私のおじいちゃんでもある人だ。



「理沙……!何て綺麗なの……!」



隣にいたお母さんは早くも泣きそうになっていた。

妹さんは私のお母さんとかなり年が離れているというだけあってまだまだ若い。

たった一人の妹の晴れ姿を見れて嬉しいのだろう。



そして神父の前に並んだ二人は、指輪の交換を終え、誓いのキスをした。



「わぁ……」



思わず声が出てしまった。

結婚式に参列するなんて前世ぶりである。



それから私たち参列者は新郎新婦と集合写真を撮ってから場所を移動した。

挙式のときとは違って一つのテーブルを数人で囲んでいる。

テーブルには普段はほとんど見ることが出来ないほどの豪華な料理が並べられていた。



「わぁー!美味しそうな食事!」

「日和、もう少し我慢しなさい。それと女の子だからあんまりガツガツしちゃダメよ」

「まあまあ、そんなに厳しくしなくてもいいじゃないか」

「アナタは日和に甘すぎるのよ!」



しばらくして、新郎新婦が入場してきた。

今からは披露宴の時間である。



祝辞、乾杯、ケーキ入刀と事が進んでいく。

それら全てが終わり、待ちに待った食事の時間となった。



「美味しい!」



お母さんの話によると、どうやらこの時間は食事歓談と言うらしい。

これが終わると、新郎新婦はお色直しのために一度退出する。

大体三十分くらいかかるみたいだから、それまでは楽にしてよーっと!



「お父さん、お母さん、これ本当に美味しいね」



私は同じテーブルを囲む父と母にそう言って笑いかけた。

お父さんはそんな私を見てすぐに破顔し、お母さんも困ったように笑った。




***




披露宴の後半が始まった。

まずは新郎新婦によるテーブルラウンドからだ。



「お姉ちゃん、お義兄さんも。来てくれてありがとう」

「理沙!」



黄色のドレスを着た叔母さんを見て、お母さんが号泣した。

叔母さんのドレス姿は本当に美しかった。



そんなお母さんを見てクスッと笑みを溢した叔母さんが、今度は私の方に目を向けた。



「日和ちゃんも、見ない間に美人さんになったね」

「え……あ、ありがとうございます……」



美人だなんて……。

慣れない褒め言葉に、何だか恥ずかしくなる。



「叔母さんもとっても綺麗です」

「ありがとう、日和ちゃんもいつか素敵な男性に出会えるといいね」

「えっ……」



――素敵な男性

そんな男性に出会えるのは、一体いつになることやら。

前世とはまるで縁のないことだったので、よく分からない。

私には家族や友人がいればそれでいいし。



叔母さんの言葉を聞いたお母さんが、何故か嬉しそうに私たちの会話に割って入った。



「日和はね、心に決めた人がいるのよ!」

「あら、そうだったの?」

「ちょ、お母さん……」



心に決めた人って誰だ、それは。

全く心当たりのない私は困惑した。



「ええ、幼馴染で近所に住んでる子なんだけどね……とっても優しくて素敵な子なのよ!」

「……」



流星かよ。

お母さんが何を勘違いしているのかは知らないが、私と彼はそういう関係ではない。



「お母さんやめてよ!そんなんじゃないから!」

「もう、恥ずかしがらなくてもいいのに!」



そんな私たちの様子を、叔母さんはクスクス笑いながら見ていた。



テーブルラウンドが終わり、今からは余興の時間となった。

歌やダンス、お笑いなど様々なことをして会場を盛り上げるらしい。



この人歌すごい上手いなぁ……。

今、ちょうど前で定番の結婚ソングを新郎の友人らしき人が歌っている。



余興が終わると、新婦が両親に対する手紙を読み始めた。

もちろんおじいちゃんおばあちゃんは大号泣。



それらが終わり、新郎新婦が退場した。



「日和、私たちも帰ろうか」

「あ、うん、そうだね!お父さん」





***





「……素敵だったなぁ」



帰路についた私は、思わず感嘆の声を漏らした。



「涙でメイクが落ちちゃったわ」

「お母さん、泣きすぎだよ」



それにしても本当にお似合いの二人だったなぁ……。

あんな風に心の底から笑い合える人そうはいないだろう。



「私もいつか、そんな人出来るのかなぁ……」



正直に言うと、憧れはあった。

だからといって、流星はありえないが。



「日和、着いたわよ」

「あ、うん……」



家に帰った私は、部屋の灯りを付けた。



「あれ、回覧板……」



家のポストの中に回覧板が入っていることに気が付いた私は、すぐに回してしまおうとドレス姿のまま再び家を出た。

その途中で、予期せぬ人物と遭遇することとなる。



「……!」

「……」



外へ出た私が出会ったのは、家からちょうど出ようとしていた流星だった。

彼は私を見て驚いたように目を見張った。



「流星……」

「……」



私たちはじっと見つめ合ったまま、お互いも一歩も動かなかった。

いや、動けなかった。

彼の黒い瞳と目が合って、吸い込まれそうになった。



「「……」」



――チャリンチャリン



「……!」



そのとき、固まったまま動けなくなっていた私の前を自転車が通り過ぎた。



私ったら、何してるのよ……。

正気に戻った私は、流星からぷいっと視線を逸らした。



彼からの視線をひしひしと感じながらも、私はさっさと回覧板を回して家に戻った。



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