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期末考査

それから一週間後。

とうとう期末考査の日がやってきた。



朝、登校するといつもはうるさい教室がやけに静かだった。

全員が自分の席に着いて勉強をしている。

みんな気合い入ってるなぁ……。

さすが進学校、元々レベルの高い人たちが集まっているだけある。



期末考査は五日間に渡って行われる。

五日って長い!

いつもより早く帰れるのは良いけど。



「日和ちゃん、おはよう」

「朱里ちゃん!おはよー!」



席で勉強に励んでいた朱里ちゃんが顔を上げて私を見た。



「今日から期末考査だね!難しいだろうけど頑張ろうね!」

「うん!頑張ろう!」



朱里ちゃんが笑顔でそんな風に応援してくれたから、何だか本当に頑張れるような気がする。

ちなみに今日は期末考査一日目で、数学とコミュニケーション英語のテストが行われる日である。



私も勉強するか!

今回こそは良い点数取りたいし。



席に着いた私は、テキストを開いてしっかりと復習をした。

一秒でも無駄に出来ない!



それからしばらくして、先生が教室に入って来た。



「それでは答案用紙を配布する」



ついに来たのね。

まずは数学からだ。



「始め!」



その声と共に、シンと静まり返った教室にバサァッ!という答案用紙をめくる音が響く。

一学期最後のテストということもあって、皆結構ガチだ。



そして私も他の生徒に遅れを取ることなく、早速問題に取り掛かった。



このシーンとした感じ、緊張感があって苦手なんだよなぁ……。

…………あれ、待ってこれ朱里ちゃんに教えてもらった問題じゃない!?

こっちは桐生君に教えてもらったやつだ!



これは……流星が……



『――日和』



ッ!!!

変なことを思い出してしまって慌てて首を横に振った。

テスト中に何考えてるのよ、私!

今は集中しないといけないときでしょうが!



そう思った私は、頭の中から必死で流星をかき消して目の前の問題を解くのに集中した。



「――止め!」



教師のその声で、全員が机にペンを置いた。



「ふぅ……」



数学のテストを時間ギリギリまでやりきった私はひとまず安堵の息を吐いた。

みんなに分からないところを聞いておいてよかった……。

高得点……とまではいかずとも、平均くらいはいっているのではないかと思う。



テストを回収し終えた後、隣に座っていた頭脳明晰で有名な女子二人組が終わるなり口々に話し始めた。



「あーもう終わったー」

「私も!全然分かんなかった」



「……」



嘘つけ。

ああいう人たちの「終わった」ほど信用出来ないものは無いということを高校生活を既に一度経験している私はよく知っている。







二限目はコミュニケーション英語である。



一応勉強はしっかりしてきたけど……。

問題はリスニングがあるところだ。

どうなるか分かんないけど、頑張ろう!



「始め!」



それからすぐにコミュニケーション英語のテストが開始された。

リスニングが始まったのは五分後のことである。



「……」



リスニングが開始されてから早々私は絶望というものを感じていた。

な、何言ってるか分からない……!

とんでもなく早口だ。



ええい、こうなったら筆記で勝負してやる!

リスニングというものに絶望を感じた後、私はいっそ開き直って筆記の方に力を入れた。



これ、先生が出るって言ってたやつだ!

リスニングはダメダメだったが、筆記は何とかなりそうだ。



「――止め!」



しばらくして、テストが終わった。



「……」



結果は……まぁ、まずまずってところだろう。



こうして二教科が無事に終わったが、これで満足しているようではダメだ。

テストはまだまだ始まったばかりなのだから。



しかし、喜ぶべきこともあった。

お昼前に帰れるだなんてラッキー!



そう、今日はもうこれで終わりなのである。



「朱里ちゃん、お疲れ様!お勉強付き合ってくれてありがとうね!今度お礼させて!」

「あ、日和ちゃん!全然いいんだよ!というか、帰りの準備するの早いね!?」



朱里ちゃんに挨拶をした後、私は席で帰りの支度をしていた桐生君の元へと向かった。



「桐生君!桐生君のおかげで良い点数取れそうだよ!ありがとう!」

「そうか、それは良かった」



私の言葉に桐生君はクスリと笑った。

冷たさを感じる彼の顔が、珍しく柔らかくなった。



「流星は……」



流星にもお礼を言おうと教室内を見渡すも、彼の姿はどこにも無かった。



先に帰ってしまったのだろうか。

どちらにせよ今回のテストに最も協力してくれたのは流星なので、彼には絶対にお礼を言わなければいけない。



そう思った私は、帰る前に一度流星を探した。

幼馴染として長い間傍にいたため、流星のことを誰よりもよく知っている私は、彼の行きそうな場所を予測しすぐに見つけることが出来た。



「流星!」



流星は下駄箱の傍で一人佇んでいた。

もしかすると、誰かを待っていたのだろうか。



何かを考え込んでいたのであろう流星が、私を視界に入れた。



「……日和」

「流星」



私はすぐに彼の傍まで駆け寄った。



「流星、今日のテストなかなか良い感じだったよ!本当にありがとう!」

「……そうか」



彼は無愛想にそれだけ言った。



「流星はどうだったの?ここが難しかったとか……」

「いつも通りだ」

「あ……そっか……そうだよね……」



流星は超が付くほどの天才だ。

そんな彼に難しいと感じる問題があるとは思えなかった。



「……」

「……」



何だか気まずさを感じてしまった私は、すぐにこの場を去ることを決めた。

元より流星にはお礼を言いに来ただけで、彼と必要以上に関わるつもりは無かったから。



「じゃあ、私はそろそろ……」

「――お前、明日のテストの勉強は済ませたのか?」

「……え?」



帰ろうとした私を、流星が引き留めた。



「それは……これから……」

「……もしかして、また力人にでも聞くつもりか?」

「え?」



一体どうしてそこで桐生君が出てくるのだろうか。

きょとんとする私に、流星が信じられないことを言い出した。



「日和、今日お前の家に行ってもいいか」

「えっ、ど、どうして?」

「テストが終わるまで毎日、俺がお前に勉強を教えてやる」

「…………ええ!?」



それから流星は、拒否権を与えないかのように私の手を引っ張って強引に帰路についた。



「ちょっと、流星!手、放して!」

「……!」



学校から出てしばらく歩いた後、私の手をずっと掴んでいたことに気が付いたのか、彼がパッと手を放した。

流星が腕を掴んでいたせいで学園にいた女子生徒たちから嫉妬の視線を浴びることとなってしまったが、彼はそのことにはまるで気付いていないようである。



「……悪い」

「……」



私のよく知る流星と違う人に見えるのは気のせいだろうか。

しかし、勉強を教えてもらえるというのはとても有難いことなのでわざわざ断ったりはしなかった。

だけど、どうしても理解出来ないことが一つだけある。



「ねぇ、流星……」

「何だよ」



私は隣を歩く彼に声を掛けた。



「……勉強を教えてくれるのは嬉しいけど、そんなにしてもらっていいの?流星も勉強しないとなんじゃ……」



それに対して流星が返したのは、意外な言葉だった。



「…………お前、中間考査の結果良くなかったんだろ?お前んとこの母さんが言ってたぞ。――あんまり親に不安な顔させんなよ」

「流星……」



どうやら私の母親から事情を聞いていたようだ。

彼の話からして、私は両親を不安にさせてしまっていたらしい。



あの二人は優しいから、私の前ではその気持ちを隠し通していたのだろう。

そう考えると、何だか涙が出てきそうになった。



私、何てことを……。



「ありがとう、流星……」

「……」



絞り出した声は僅かに震えていた。

確実に聞こえているはずなのに、彼は返事をしなかった。

そして、私もあえてそのときの彼の顔を見るようなことはしなかった。





***





「よっし!今日も頑張るぞ!!!」



あっという間にテスト最終日になった。

今回のテストは前のよりもかなり自信がある。

何故なら学年でも五番以内に入るほどの天才・皇流星様が直々に勉強法を伝授してくれたのだから!

それも毎日!全教科!私のためだけに!



あれからというもの、流星は本当に毎日のように私の家へ来ては勉強を教えてくれていた。

本当に流星様には頭が上がらないわ……。

今度お礼でもしよう。



「お父さん、お母さん!行ってきます!」

「いってらっしゃい、日和」

「ハハッ、何だか最近やたらと元気だな」



大好きな両親を悲しませないためにも、私はやらなければならないのだ。

私は元気よく挨拶をして家から出た。





「――ちゃんと俺の言った通りにやったか?」

「あ、流星!」



朝、学校までの道のりを歩いていると流星が声を掛けてきた。



「うん、流星の言った通りに勉強したよ!」

「なら良し」



そう言うと、流星はクスッと微笑んだ。

え、な、何!?何よその微笑みは!?

イケメンの突然の笑みに顔が真っ赤になりながらも、私は学校への道を歩き続けた。



流星と登校するのはかなり久しぶりだった。

……そういえば、二ヶ月以上してなかったかも。



「今日で最終日だな」

「そうだね、今日でやっと終わるんだと思うと気が楽だな」



学校へ到着し、教室へ入ると、一部の女子が流星を見てザワザワし始めた。

テスト勉強中だというのに、彼から目を離せなくなっているようだ。

やっぱり人気あるなぁ……。

さすが天下の皇流星。



その中には私に対する嫉妬心を露わにした視線もいくつかあった。

ちょっと、前も思ったけど私にそんな目向けないでよ!流星と結ばれるのは私じゃないんだから!



私たちは一度別れてそれぞれの席に着いた。



今日一日が終わればお休みだ!

そんなウキウキした気持ちを胸に抱きながら、私は一学期最後のテストに取り組んだ。





***




「全部終わったーーーー!!!」



そして、ようやく期末考査が終了した。



「日和ちゃん、だいぶ嬉しそうだね」

「だってテスト終わったら休みなんだよ!朱里ちゃんは嬉しくないの?」

「うーん……日和ちゃんが嬉しいなら私も嬉しいかな」



朱里ちゃんが頬を染めて満面の笑みを浮かべながらそう言った。



「……!?」



な、何だそれは……!

そんなに良いことを言ってくれるのは本当に朱里ちゃんが初めてだ。

この子は絶対にヒーローと幸せになるべき。

いや、もういっそ私が幸せにしたい!



「じゃあ私は帰るね!」

「うん!休み明けに会おうね!」



テストが終わり、私は軽い足取りで家へと帰った。





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