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テスト週間に入りました!

体育祭が終わってすぐ、テスト週間に入った。



「テ、テスト……!」

「テストかぁ……ドキドキするね」



私、五条日和はテスト範囲が書かれた紙を見て早速絶望していた。

というものの、私はテストで良い点数を取った覚えが無い。



いつも学年で五位以内をキープしていた根っからの天才である流星とは違って、私の順位は百番台だった。



もちろん、日和だって全く勉強していなかったというわけではない。

自分なりに頑張っていたのだが、どうしても良い順位が取れなかったのだ。



誰かに勉強を教えてもらおうにも、流星以外に友達のいない私は誰にも聞くことが出来なかった。

そして頭の良い流星の勉強の邪魔をしたくなくて、彼にも教えてもらおうとはしなかった。



……今思えば、それが原因かもね。



どれだけ考えても分からないものは分からない。

変な意地を張らずに最初から先生やクラスメイトに聞いておけばよかったのではないかと今では思う。



何より、今の私は一人じゃないし!



私はそう思いながら隣にいた朱里ちゃんを見た。



「……日和ちゃん?どうかしたの?」

「ううん、何でもないよ!テスト、頑張ろうね!」

「うん、そうだね!評定にも関わってくるしね」



ひょ、評定……!

すっかり忘れていた。

大学受験を控えている生徒なら、絶対に忘れてはいけない。



指定校を狙っている生徒や、推薦で受ける生徒ならばなおさらである。



そしてそれからの私は、完全に心入れ替えた。

授業では、先生の話をしっかりと聞いて復習や予習をするようになった。

しかし、それだけではダメだ。

私は今回のテスト期間、周囲の人間に積極的に勉強を教えてもらいに行った。



「ねぇ朱里ちゃん。これはどうやってやるの?」

「ああ、これはね……」



朱里ちゃんは本当に優しくて、私が分からないところを聞くといつも丁寧に解説してくれた。



だけど、朱里ちゃんにばっかり聞くってのも申し訳ないよなぁ……。

そう思った私は、一か八かの賭けに出た。



「桐生君、桐生君」

「……何だ?って五条か」



自習の時間に、私が話しかけたのは桐生君だ。

席で自分の勉強をしていた彼は私の声に顔を上げた。



「勉強中話しかけちゃってごめんね、実はここを教えてほしいんだけど……」

「……」



桐生君は私が見せたプリントをじっと見つめた。

もしかすると断られるかもしれないけど……




「……あぁ、これはな」

「!」



驚くことに、桐生君は朱里ちゃんと同じように分からない箇所を丁寧に説明してくれた。



さすが攻略対象!

冷たそうに見えて女の子には優しいんだなぁ。



周りがそんな私たちを見てザワザワしている。



「おい、あれ見ろよ」

「五條さんが桐生君に話しかけてるぞ」

「すげぇ……勇気あんなぁ……」



特に男子たちは驚いたような顔で私を見ていた。



「なるほど!教えてくれてありがとう、桐生君!」

「……ああ」



お礼を言うと、彼は素っ気なく返事をした。

しかしそれから、彼は突然何かを思い付いたかのように私に話しかけた。



「そういえばお前、体育祭のとき青山先輩と二人で話したんだってな」

「青山先輩と?あぁ、話したよ!」

「……何を話したんだ?」

「え……」



青山先輩と何を話したか。

これは一体どう言えばいいのだろうか。



少し悩んだ後、私は口を開いた。



「桐生君はモテるんだな~っていう話!」

「……何だそれは」



それを聞いた桐生君は呆れたような顔をした。

まぁ、あながち間違いではないだろう。



「褒めてるんだよ!」

「……そういうものか?」

「うんうん!青山先輩、桐生君のこと大好きなんだって!」

「そ、それは本当か……?」



その言葉に、桐生君の表情がほんの少しだけ柔らかくなった。

こうなるのも当然かもしれない。

青山先輩は桐生君が最も慕っている人だったから。



「本当本当!」



それだけ言うと、私はじっと何かを考え込んでいる様子の桐生君の前から立ち去った。

彼のあんな表情は初めて見た。

ほんとに嬉しいんだろうなぁ……。



自分の席へ戻ろうとしていたそのとき、端の席で阿久津さんが一人、テキストとにらめっこをしていることに気が付いた。



「あれ、阿久津さん」

「……五条さんか。何だか最近君とよく話してるような気がする」

「た、たしかに!」



記憶を取り戻した当初はこれほど阿久津さんと関わることになるとは、私も予想していなかったことだ。



私はそこで阿久津さんの手元のテキストを覗き込んだ。

普段は不良として有名な彼だが、最近は勉強をかなり頑張っているようだ。



「阿久津さん、最近よく授業に出てますね」

「……まぁ、テスト期間だからね」



阿久津さんは面倒くさそうに呟いた。

もしかすると、根は真面目な人なのかもしれない。



「勉強進んでますか?」

「うーん、まあまあかな」

「それは良かったです!」



笑みを浮かべた私を、阿久津さんはじっと見つめた。



「……?」



何だろうと思い、口を開きかけたそのとき――



「そうだ五条さん、テスト終わったら俺と遊ばない?」



な、それは一体……!?

予期せぬお誘いに、かなり動揺した。



「え、二人きりでですか……?」

「うん、五条さん彼氏いないでしょ?」

「いないですけど……」



それを聞いた阿久津さんはニヤリと口角を上げた。



「じゃあいいじゃん、俺と遊ぼうよ」

「……どこに行くんですか?」

「うーん、どこが良いかな。商店街とか行ってみる?クレープとかタピオカとか食べ歩きしたり」

「ク、クレープ……タピオカ……」



それもはやデートじゃん!

しかもこんなイケメンと二人きりだなんて!



固まった私を見た阿久津さんが口を開いた。



「あれ、気に入らなかった?女の子が好きそうだなと思ってたんだけど」

「い、いや……そういうわけじゃないけど……」

「けど?」

「ちょっと予定がなかなか合わせられなくて……」



これは咄嗟についた嘘である。

本当は普通に暇だったが、今の私には男の人と二人きりでのデートなどレベルが高すぎたから。



「ふーん……」



私がそう言うと、阿久津さんはつまらなさそうに口を尖らせた。



「わ、私そろそろ失礼しますね!」



私はすぐに不満げな顔をした阿久津さんから離れて自分の席に着いた。

前世の記憶を取り戻してからというもの、毎日毎日無駄に顔の良い攻略対象たちに心を乱されてばかりである。



だけど今回のテストは良い順位取れそうだなぁ……。

朱里ちゃんと桐生君に分からないところをかなり教えてもらったし!

やっぱり持つべきものは友達だなぁ!



私はうんうんと満足げに頷いた。





それから自習の時間が終わり、私は今日も一人で帰路についた。



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