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体育祭の前日になりましたが、彼の様子が変です

そしてその後、いつものようにすぐ授業が始まった。

授業中であるにもかかわらず、流星のことがずっと頭から離れなかった。



もしかして、本当に私のためにあんなことをしてくれたというの……?

正直、信じられない。



だって彼は普段から何事に対しても無関心だったはずだ。

それはもちろん私のことも例外ではなかった。

私はそんな彼の気を引くために努力してきたけれど、どれだけ頑張っても不可能だった。



それなのに、どうして……。



乙女ゲームの中での流星ももちろんそういう人だった。

ヒロインと恋に落ちることになるけれど、それ以外には相変わらず無関心で。

まぁ、そうなったのにも深い理由があったから彼を責めることは出来ないのだが。



それでも、私相手にこんなことをするような人ではなかった。



陰口をされていた私を憐れに思ったのかな?

それともただの気まぐれ?



う~ん…………。

分からない!

頭がこんがらがりそう!



結局その日はどれだけ考えても、答えが出ることは無かった。






***






そして、ついに体育祭の前日になった。



今日は明日に行われる体育祭の準備がある。

テントを張ったり、リレーの白線を引いたりでみんな大忙しだ。



そして私もまた、明日に向けての準備をしていた。



「疲れた……」



私がやっていたのは、グラウンドの石拾いである。

何故こんなことをしているのかというと、明日の体育祭で裸足でやる種目があるからだった。

だから生徒たちが痛い思いをしないように石拾いをするんだと。

しゃがみっ放しだし、これがまた結構疲れるのである。



「日和ちゃん!」

「朱里ちゃん……!」



石拾いの最中に、話しかけてきたのは朱里ちゃんだった。

彼女は嬉しそうな顔でこちらへと向かってきた。



「明日の体育祭、楽しみだね!」

「うんうん、そうだね。朱里ちゃんはこの高校で初めての体育祭だよね?」

「そうなんだよね、もう今から楽しみで!」



どうやら朱里ちゃんは明日の体育祭が楽しみで仕方がないようだ。

もちろん私も年に一度の大イベントなので楽しみではあるが。



「思いっきり楽しもうね!明日の体育祭」

「もちろんだよ!明日は日和ちゃんと一緒にお昼を食べたいなぁ」

「えっ、いいよ!」

「嬉しい!ありがとう!」



朱里ちゃんがさらに笑みを深くしたそのとき、背後から聞き慣れた靴の音がした。



「…………流星?」

「皇君……」



予想通り、私の後ろにいたのは流星だった。



「日和ちゃん、私はまだやることが残ってるからそろそろ行くね」

「えっ、ちょっ……」



流星を見るなり、朱里ちゃんはそそくさとこの場を後にした。

まるで彼を避けるかのように。

そして、朱里ちゃんの姿が見えなくなり私と流星の二人だけが取り残された。



「流星……」



流星はグラウンドの真ん中でしゃがみ込んでいた私の隣に来た。

私はそんな彼をじっと見上げた。

あんなことがあった後だからか、何だか彼と話すのが恥ずかしい。



私の視線を受けた流星が、ゆっくりと口を開いた。



「だから言っただろ、俺が何とかしてやるって」

「……」



その声は異様に優しかった。

こんなの私の知る流星じゃない。



だけど愚かにも、その一言で確信した。

やはりあれは、私のためだったのだということを。



どうして?どうしてなの?

今まで一度も私を気にかけてくれたことなんて無かったのに、どうして今になってこんな風に優しくするの?

流星の考えがまるで分からない。



彼はこれからヒロインである朱里ちゃんと結ばれるはずで、私は二人の恋路を邪魔する悪役なのに。

悪役に親切にするだなんて、一体どういうつもりなのか。



「だけど私、流星に何にも返してあげられないよ」

「……」



そう、私はヒロインではないから流星を幸せにすることなんて出来ない。

それはあくまでも朱里(ヒロイン)の役目だから。



「流星と違って頭も良くないし運動も出来ないもん」

「――お前はそれでいい」

「……え?」



私は思わず聞き返した。

流星は、ボソッと呟くようにして言葉を紡いだ。



「何も出来なくていいんだ、お前は」

「……」



それは一体どういう意味だろうか。

クラスメイトたちのように私を非難するでもなく、友人の一人として慰めるでもなく彼はただそれだけ言った。



「だからお前は、明日の体育祭で俺の応援でもしてろ」

「応援……?」



そりゃあまあ流星とは同じクラスだし、もちろんするつもりではいたけど。



「――皇君!」

「「!」」



そのとき、流星のファンクラブの会員たちがやって来た。



「流星、私ももう行くね。まだまだやることがあるから」

「あっ、おい……」



流星は引き留めようと手を伸ばしていたが、私はそんな彼を置いて一人歩き出した。

チラリと後ろを振り返ると、ファンクラブの会員たちに囲まれている流星の姿が視界に入った。



「皇君!明日は体育祭だね!」

「皇君と一緒のチームだなんて嬉しいな!」

「皇君がいれば百人力だよ!」



彼のファンクラブには三年生の先輩たちもいるため、邪険に出来ないようで、流星はただただその場でじっとしていた。



そんな彼を見て、何故だか私は複雑な気持ちになった。





***





それから学校が終わり、家に帰った私は部屋にあった自分の机に向かっていた。



「明日は体育祭……」



私は体育祭の流星ルートにおいて起こるラブイベントを一通りノートに書いた。



借り物競争にお昼ご飯……それにクラス対抗リレーか。

たった一日で三回もイベントが起きるだなんて、とんでもないな。



いいなぁ、青春って感じだね!



そして、明日の体育祭で朱里ちゃんが誰のルートに入っているかも確定するといえるだろう。

ルートごとに発生するラブイベントがそれぞれで大きく異なったから。



明日、私の命運が決まるんだよね……。

もし、ヒロインが流星のルートに入っていたとしたら?

私はゲームの中のように悪役令嬢として断罪されてしまうのだろうか。



いいや、そんなことは絶対にない。

私は何が何でも生き残るって入学式の日に決めたんだから。



絶対に乙女ゲームの通りにはならない!

させてなるものか!



私はそう覚悟を決めて、明日の体育祭に臨んだ。





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