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ヒロインの気持ち

翌日。



「やぁ、五条さん」

「……阿久津さん?」



教室に入った私は、爽やかな笑顔で声を掛けて来た人物を見て目を瞬かせた。

何故ならそこにいたのはあの阿久津京也だったから。



「阿久津さん、どうしてここに?」

「どうしてって……俺、一応C組なんだけど」

「あ……」



そうだ、攻略対象その③の阿久津京也は私や流星と同じC組だ。

彼はほとんど授業に参加しないからすっかり忘れていた。



「そ、そういえばそうでしたね……」

「うん、忘れないでほしいな」



私がアハハと笑いながらそう言うと、阿久津さんも笑い返した。



「ここには何をしに来たんですか?」

「……授業に参加する以外にある?」

「あ……」



私ったら、またやってしまったようだ。



「みんな俺を見てびっくりしてるみたい。顔に出てる」

「あー……まぁ、そうですね」



既に登校している生徒たちは阿久津さんを見て私と同じような反応をしている。

そうなるのは当然だろう。

彼は学内でも有名な不良だったから。



「でも良いと思います。授業に参加するのは大事なことですから」

「そうだね。最近暇だったし、ちょうどいいかなって」



暇だからっていう理由で授業に参加するやつがあるか。




「日和ちゃん、おはよう!」

「あ、朱里ちゃん!」



そのとき、私たちの間に割り込んできたのは朱里ちゃんだった。

彼女は手を振りながら笑顔でこちらに近付いて来る。



「……」



そこで阿久津さんが朱里ちゃんを視界に入れた。

お、まさか一目惚れするか!?

朱里ちゃんは誰もが振り返るほどの美少女だから可能性としては十分ありえる。



阿久津さんの視線に気付いたのか、朱里ちゃんが彼の方に目を向けた。



「あ、初めまして!私、今年転校してきた白石朱里です!」

「ああ……俺は阿久津京也」



二人は軽く挨拶を交わした。

しかし、それだけ言うと朱里ちゃんはすぐに私の方を向いた。



「日和ちゃん!昨日の体験入部すっごく楽しかったよ!」

「え、あぁ、それは良かったね!」



ちょ、ちょっと待って。会話それだけ!?

彼、あなたの未来のお相手候補の一人なんですけど!?

そんな私の思いをよそに、朱里ちゃんは言葉を続ける。



「それで私ね、バイオリンやってみたいなって思ってるんだけど……」

「あぁ、良いんじゃないかな?朱里ちゃんならきっと上手く出来るよ!」

「そうかな?えへへ」

「うんうん!」



朱里ちゃんと話しながら阿久津さんの方をチラッと見てみると、彼はもう既にこの場から離れて自分の席に戻っていた。



え、まさか今のが二人の出会いイベント?

乙女ゲームの中では阿久津さんがヒロインを誘っていたのに、ただ挨拶交わしただけじゃん。



そういえば、流星とのラブイベントも何故だか発生していなかった。

私が知る乙女ゲームの展開と違いすぎて少しだけ戸惑っている自分がいる。



「あっ、皇君だ!」

「え、流星?」



そのとき突然、朱里ちゃんが教室の扉の方を指差した。

そこには、女子たちに囲まれている流星の姿があった。

あれはおそらくファンクラブの会員たちだ。



「皇君ってすごい人気なんだねぇ」

「そ、そうだね」

「そういえば、日和ちゃんは皇君と仲良いんだっけ?」

「え、そ、そんなことないよ!ただ幼馴染ってだけ」



たしかに幼馴染ではあるが、仲が良いかと言われれば微妙である。

流星は私のことを友達だとは思っていないだろうし。



「朱里ちゃんはどうなの?」

「えっ、私?」

「……その、流星のことカッコイイって思ったりする?」

「え……そうだなぁ……」



そこで朱里ちゃんは照れたように頬を染めた。

女の私ですらドキッとしてしまうほどだ。



「カッコイイとは思うけど……」

「けど?」




「――別に、そんなに興味無いっていうか」

「……………ええっ!?」



きょ、興味が無いとは一体……。

あなたの未来のお相手候補なんですよ、あの方も。



「何かこう、皇君ってスターすぎて近寄りがたいんだよね」

「ああ、それは分かるなぁ」

「私は付き合うんだったらもうちょっと普通の人がいいかな」

「分かる分かる」



まさか朱里ちゃんがそんなことを考えていたとは。

意外とヒロインと気が合うのかもしれない。



というか流星は本当に何してるのよ。

今の時点だとヒロインの好感度ゼロなんですけど。



「もし私が上手に弾けるようになったら、演奏会には日和ちゃんを一番に招待したいなぁ」

「…………え、私!?」

「うん!もしそうなったら来てくれるかな?」

「…………もちろんだよ!楽しみにしてるね!」



朱里ちゃんは私のギュッと握って嬉しそうな顔をした。

これを断れる人間はこの世界にいないだろう。



「一限目は何だっけ?」

「一限は体力測定だよ!日和ちゃん、まさか忘れてたの?」

「………え、体力測定?」

「うん、一限と二限で行われるみたい」



「………………待って、嘘でしょ」



私は絶望した。

何を隠そう私、五条日和は運動が大の苦手である。



だからこそ一年で部活を決めるとき、運動部は即除外したんだよなぁ……。

そんな私に体力測定だと!?



クラスみんなの前で恥を曝す姿が目に見えている。



「日和ちゃん、グラウンドまでは一緒に行こうよ!」

「……う、うん、そうだね……」



どうなる、私――!?




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