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一ノ瀬ルート?

新入生歓迎会の翌日。

流星と登校しなくなってからかなり経った。



周囲の人間は突然流星から離れていった私を、面白おかしく噂した。

他に男が出来ただとか、あまりのしつこさに絶縁を言い渡されたとか散々な言われようだ。

ショックだけど仕方が無い。

これも全て私が蒔いた種だったから。



だけど、流星がそのことを大して気にしていないみたいで良かった……。



そして今日の朝、新入生の部活の第一希望者数が正式に発表された。

廊下に大きく貼り出された紙を見た私は驚きを隠せなかった。



ちょっと待て。男子バスケ部マネージャー三十て何だこれ。いくら何でも多すぎるだろ。

現時点でのマネージャーを二学年合わせてもこんなにはいないだろうに。



一緒に紙を見ていた朱里ちゃんがきょとんとした顔で私に尋ねた。



「男子バスケ部のマネージャーって人気なんだね。毎年そうなのかな?」

「あー……まあ、そうだね」



これは嘘だ。

昨日の新入生歓迎会での流星がカッコ良すぎてマネージャー希望の女子が爆発的に増えたというだけだろう。



バスケ部の顧問の先生はどう判断を下すのだろうか。

部員よりも希望者の多いマネージャーってとんでもないな。



そういえば私も一年生の頃、流星と一緒にいたくて男子バスケ部のマネージャーになろうとしたことがあった。

流星以外の人と関わるのが怖くて結局断念したが。



そのとき、私たちの後ろから紙を見ていた人物が声を上げた。



「――今年の男バスマネージャー多いね」

「……?」

「あ、一ノ瀬君!」



い、一ノ瀬君だと……?



振り返ると、そこには攻略対象その④の一ノ瀬雅君がいた。

ち、近くで見るとやっぱり眩しい……!

一ノ瀬君は朱里ちゃんの隣にいた私を視界に入れた。



「ん?君、五条さんか。あの皇君の周りをいっつもウロチョロしてる」

「えっ……」



や、やっぱり私のイメージってそういうのなんだ……!

自分のせいだとはいえ、結構ショックだ。



「ア、アハハ……一ノ瀬君、久しぶりだね」

「ああ」

「一ノ瀬君、おはよう!」

「おはよう、朱里」



一ノ瀬君は朱里ちゃんに視線を向けた途端、優しく微笑んだ。

ま、待って!この二人こんなに仲良くなったの!?しかも名前呼びじゃん!



驚く私に、朱里ちゃんが付け加えた。



「あ、日和ちゃん。一ノ瀬君とはね、たまたま家が近くってね……」

「あー……なるほど……」



どうやらいつの間にか一ノ瀬君とかなり進展していたようだ。

そういえば乙女ゲーム内でも一ノ瀬君と家が近所とかそういう設定だったなぁ。

もしかすると一ノ瀬ルートなのか。

いや、まだ分からない。

流星たちが朱里ちゃんをどう思っているかによっては変わってくる可能性が十分にありえる。



「朱里は何部に入るか決めたの?」

「うん、私は吹奏楽部にしようかなって」

「何だ、つまんないなあ」

「えっ、何それ!」

「陸上部のマネージャーになってくれたらよかったのに」



一ノ瀬君が少し照れ臭そうに言った。



その顔を見た私は確信した。

一ノ瀬君は間違いなく朱里ちゃんに惹かれ始めている。

これは本当に一ノ瀬ルートに入ることになるかもしれない。



……それなら私は一体誰を応援すればいいの?

いっそ攻略対象全員と結ばれる逆ハーレムルートというのもありかもしれない。

一部の乙女ゲームでは実際にあるみたいだし。



「日和ちゃん、そろそろ教室行こうか」

「あ、うん!」



それから私と朱里ちゃん、そして一ノ瀬君の三人は並んで教室へと向かった。

私の隣で、朱里ちゃんと一ノ瀬君の二人は楽しそうに会話を繰り広げていた。



「昨日図書室に行ってみたんだけどね……本当に本がたくさんあって……」

「一人で行ったの?次は僕も連れてってよね」

「ごめんって」



本当に仲良いなぁ……。

まるで恋人同士のような二人に、私は完全に置き去りになっていた。



今日も六限まであるじゃん……憂鬱だなぁ……。

あ、でも流星を待たなくていいから早く帰れるのか!



そう、帰宅部の私は部活に所属している生徒たちよりも圧倒的に早く帰れるのである。

これまでの私はどうしても流星と帰りたくて彼を待っていたが、もうその必要も無い。



ふふふ、家に帰ったら何しようかな。



「日和ちゃん、何だか嬉しそうだね。何か良いことあった?」

「えっ、いや、何でもないよ!」

「そう?でも、日和ちゃんが嬉しそうで私も嬉しいな」



朱里ちゃんは太陽のような満面の笑みを浮かべた。



な、何て可愛いんだ……!

私が惚れそう!



「きょ、今日の一限は何だっけ」

「今日は英語だよ」

「あー……苦手科目だ」

「日和ちゃんそればっかりだね」



返す言葉も無い。







***






「終わったーーーーー!」



帰りのホームルームが終わり、私はすぐに家に帰る準備をした。

教室では部活に行く準備をする者、私のように帰りの支度をする者、それぞれだった。



「日和ちゃん、もう帰るの?」

「うん、今日ちょっと用事あって」

「そっか、私は今から体験入部と部活見学だよ」

「あ、体験入部か……」



朱里ちゃんは吹奏楽部の体験入部があるようだ。

そういえば今日から一年生の体験入部が始まる。

それに加えて他の部活を自由に見学することの出来る時間でもある。



「頑張ってね、朱里ちゃん!」

「もちろんだよ!体験入部楽しみだなぁ」



朱里ちゃんはそう言いながら吹奏楽部の体験入部が行われる音楽室へと向かって行った。



私はこれから帰宅です!あ、でも課題あるんだった。

まあでもすぐにやればいっか!



私は家に帰ったらどんなことをして過ごそうかを考えながら、軽い足取りで家へ帰った。




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