7話 質問攻め
「えーっと、石倉君で合ってる?」
到着するや否や市原先生はどこか胡散臭さを思わせるような柔らかな笑顔を浮かべて名前を確認してきた。
「はい、大丈夫です」
「そっちは佐々木那都さんで合ってる?」
「はい、合ってます」
名前確認を終えた後市原先生は、今日の放課後は編入生に対して研究旅行のガイダンスをするから第2大教室へ向かうように言った。
伝達事項はそれだけらしく、伝達事項を言った後老け顔の先生─名前は草野先生と言うらしい─はナツを連れて44Rの教室に向かった。
残った俺は市原先生に、「学校の事で分からない事があったら聞いてね」という定型文を言われたので「分かりました。お気遣いありがとうございます」という定型文で返しておいた。
新井君の言った通り今日の放課後に研究旅行とやらの説明が行われるらしい。第2大教室の場所は後で彼に聞くとして、レポートの議題についてももう少し聞かなければいけない。
朝礼が終わったら新井君に聞こうと心の中にメモをして俺は自分の席に戻った。
そして席に戻ると俺の周りには突如として人が集まってきた。
「石倉はどこ出身?」
「どこ中から来たの?」
「石倉君ってあの子と知り合いなの?」
「石倉君ってあの子と付き合ってるの?」
「バカ、そういうのは聞かないの」
「石倉は何部入る予定なの?」
今までこんなに囲まれる事も質問攻めにされる事も無かったため、どれから答えて良いのか分からずにあたふたしていると1つの声が皆を制止する。
「ちょっと皆落ち着けって。名前知らん奴からそんなに質問攻めされたら対応困るだろ。ごめんな、石倉。皆気になってんだ」
新井君がイケメンすぎて眩しく見える。
それにしても皆何でこんなに興味津々なのだろう。やはりナツの効果なのか?外部生の可愛い女子と知り合いの男子なんて確かに珍しいのかもしれない。
「新井、ありがと」
「おう。何なら俺も気になってるから答えてあげてくれ」
流石にこんなイケメン対応されたら答えざるを得ないしそもそも隠すつもりも無いので俺は1つずつ質問に答える事にした。
「先ず、ナツ……佐々木さんとは知り合いだけど付き合ってはいない。仲が良い友達って感じだ。どっちも横浜生まれ横浜育ちで同じ公立小中学校だけどちゃんと話したのは小5の春くらいからだな。あと部活は帰宅部で良いかなって思ってる。入るとしても文化系かも」
質問に答えると皆が驚いたような顔をしていた。
「え、どうした?……何か変な事言っちゃった?」
「いや、アレで付き合ってないんだって思って」
新井君の発言に皆がうんうんと首を縦に振る。
「あー、それか……。うーん、ナツは付き合うとかそういうのあんまり好きじゃないんだよ。中学校の時に色々あってちょっとトラウマがあるっぽい。だから俺には恋愛関係の事は言っても大丈夫だけどナツにはその事は触れないであげて欲しい」
これだけ説明したら流石に分かってくれるだろうと思い皆の反応を見ると、総じて少し気まずそうな顔をしていた。これやらかしちゃったかな。
すると、その静寂を破って1人の男子生徒が質問をしてきた。
「それは分かったけど、下の名前で呼ぶって相当仲良くない?」
……確かに。今まであだ名感覚で呼んでいたためそこまで違和感が無かったが、そう言われると下の名前で呼んでる事にもなるな。
「うーん、あだ名感覚だから皆の思うような感じではないと思うよ」
「案外そんな感じなのか。何か……不思議な関係だな」
「確かに不思議……ではあるかも?」
自分で言うのもなのだがナツとの関係は傍から見たら歪なものに見えるだろう。始まり方もその後の過程も中々に歪だと思う。
そんな事を考えていると教室の前方でパンパンと手を叩く音が聞こえた。
「ほら、もう朝礼始まるから席戻れ〜。編入生をあんまり困らせるな〜」
市原先生の言葉で俺を取り囲んでいた数名の生徒は各々自分の席へと戻って行った。
それにしてもこの学校は今まで通っていた学校とは大きく違う事を実感した。
学力面でもそうではあるのだが、何より目つきが悪い俺にこんなに話しかけてくれるのだ。見た目の時点で避けられないというのは俺にとってはあまり経験の無い体験でありとても新鮮で、とても嬉しかった。
この学校なら俺も馴染めそうだな……。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想、ブクマ等々してくださるとモチベーションの維持になるのでありがたいです!




