23話
「石倉遥君、か。面白い子だったな〜」
さっき教室で話していた彼は今まで話してきた子達とは全く毛色の違った子だった。
美人で可愛い先輩と少しでも長く居たいから、か。ふふ。
「夜子はもう石倉君に会ったのか?私も彼に会いたいものだが機会に恵まれなくてね。夜子から見て彼はどう見えた?」
隣を歩く中性的な見た目をした女子生徒──露野綾は駒場台高校の生徒会長をしている私の幼馴染だ。
「どんな子、かー。一言で表すのなら、私好みの子、かな」
今まで関心を向けられる事の方が多かった私にとっては、あそこまで無関心で私の絡みを嫌がる子は初めて見るタイプの子だった。彼に興味がある。それが今の私の気持ちを表す最適な言葉だろう。
「夜子が気に入るなんて珍しいじゃないか。先月くらいに人間皆下らないとか言ってた気がするのだがな。何か心境の変化でもあったのか?」
別に彼と会うまでに心境の変化があった訳でもないし今でもそう思っている。結局第一印象として外見の特徴を見てしまうのは人間の性だ。私だってそうだし外見だけで好きになる人も居るというのも事実だ。
「いや?別に何も無いよ。でもあの子は良い子だよ。それだけは確信を持てる」
私は人を見る目だけはあると自負している。今まで多くの人に言い寄られて来たのもあり眼だけは養われてきたのだ。
そう思っているのは綾も同じらしく
「夜子がそう言うのなら間違いないだろうな。そう言われると私も彼と早く会いたくなってきたよ。どんな人物なのか想像が捗るな」
と楽しんでいた。
彼の第一印象は、目つきが悪い子。それだけだ。そして話していくと優しい部分が垣間見えるしユーモアがある事も分かるのが彼の面白い所だ。
だが、私は何故目つきが悪い子という印象しかなかった彼に、今まで露野以外に話した事が無い秘密を話そうと思ったのか。特にこれと言った理由が思い浮かぶ訳ではなかった。
強いて言うならば、彼なら話しても大丈夫だと私の眼が判断したからだろう。
考えれば考えるほど彼に惹き込まれていく。
あぁ、次会えるのはいつだろう。君の言葉、信じているよ。石倉遥君。
「やけに今日は楽しそうだな。石倉君と話すのがそんなに楽しかったのかい?」
不思議そうにこちらを見つめる綾は少し心配するようなを顔していた。
「話すのだけじゃないよ。石倉君自体を気に入ったから楽しいってだけ」
次会う時はどんな事を話してくれるのだろう。どんな対応をしてくれるのだろう。どんな提案をしてくれるのだろう。どんな方法で私を助けてくれるのだろう。
考えれば考えるほど彼に興味が湧いてくる。あぁ、これが皆の言う例の感情なのかもしれない。……なんて思ってみたり。
私の言葉を聞くと綾は慈愛に満ちたような笑顔を浮かべていた。
「そうか。夜子が楽しいなら私も嬉しいよ」
幼馴染である綾は私の一番の理解者だ。彼女が嬉しいのなら私も当然嬉しい。
「綾が嬉しいなら私も嬉しいよ〜!」
「ははは、これじゃ永久機関だな」
明後日からの登校日がとても楽しみだ。
「……あ、石倉君とRIME交換するの忘れてた」
「それはまた今度だな。明後日会いに行けば良い」
「だね。そうする」
綾から貰った髪留めを握り締めながら空を見上げると、外は既に暗くなっておりぽつぽつと置かれている街灯が寂しく灯っていた。
石倉君、君と早く会いたいな…。
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