21話
「………………やっぱりさっきの無しで」
めちゃくちゃキメ顔で言った事を頭の中で反芻し、羞恥は既に天元突破していた。
先程まで苦しそうな顔をしていた彼女も今は大爆笑していた。
「やばい、お腹痛い。あの顔面白すぎ。あはははは!」
抱腹絶倒という言葉を体現するかのように彼女はげらげら笑っており、相当ツボに入ってしまったようだ。
「そんなに笑わないでくださいよ……。俺だって今恥ずかしくて死にたいんです」
流石にキモすぎて死にたい。多分これからも夢に出てきてその度に悶絶するだろう。
「いやー、ごめん。めっちゃ面白くてさ。ぷっ、あははは!」
「帰っても良いですか?話も終わりましたし」
「あ、ちょっと〜。もう、ごめんって。もう笑わないから」
笑い混じりの声でそう言う先輩は先程まで苦しそうな顔をしていたと言われたら信じられないくらいには明るい笑顔を浮かべていた。やはりこの人には笑っている顔が丁度良い。
「あと、ありがとね。めっちゃ面白かったのはそうなんだけど、協力するって言ってくれた時めっちゃ嬉しかった」
「そ、それなら良かった…です」
突然そんな事を言われるとどうやって返したら良いか分からない。この返答が合ってるかは分からないが先輩の反応を見るに及第点には達しているだろう。
「最後の台詞も嬉しかったぞ、うりうり〜」
彼女のスキンシップは元から激しいのか、現役男子高校生にはとても辛い『抱き着く』とかいう絡み方をしてきたので、俺は考える事を諦め無の境地へと至った。
「先輩、帰って良いですか?もう17時過ぎてるんですけど」
時刻は既に夕暮れに差し掛かっており空も段々と薄暗くなる頃だった。
「もうそんな時間だったんだ。それじゃ今日はお開きにしよっか」
「はい。お疲れ様でした。それではまた来週」
軽く会釈し教室を後にしようとすると、後ろから彼女の声が聞こえてきた。
「ん。さっきの言葉、信じてるよ」
また俺の中途半端な優しさが発動してしまった。
名前も分からない彼女に協力すると言ったはいいものの、何も策が思い浮かばない。
………あれ、確かに名前知らないじゃん。この人なんて名前なんだ。
「あの、先輩。先輩の名前って──」
後ろを振り向いたが先程まで先輩の居た場所には人影など無かった。こんな一瞬でどこに行ってしまったのだろう。
「帰るの早すぎだろ……結局なんて名前なんだ」
名前も分からない先輩ではあるが、協力すると言ってしまったため何か策を練らなければならない。
俺はこれからどうしようかと抱える問題がどんどん山積みになっていく現状に軽く絶望しながら自分の教室に戻った。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想、ブクマ等々してくださるとモチベーションの維持になるのでありがたいです!




