2話 部活何にしよっか
一応10万字程度は書き終わっているのでそれまで1話ずつ投下していこうかなとか思ってます。
本当は何かの賞に応募しようとか思ってたんですけど、よくよく考えたらそんなに大層なものでもないのでここに投下する事にしました。
「でさでさ、部活何にする?私は特に入りたいの無いんだよね〜」
俺達2人はどの店にするか迷った結果、結局よく行く本丸亭というお店に入った。
食券を買って店員さんに渡した後カウンター席に横並びに座って一息ついた。今日は入学式という事もあり教科書配布だの部活見学資料だの色々な資料が配布されて荷物が嵩張ってかなり重かった。
「無いのに聞いたのか……それにしても部活なぁ。別に入らなくても良くない?って思っちゃうんだよな。俺は入るとしても文化系だけどナツはどうする?まだバスケやりたいのか?」
「うーん。バスケは部活ならもう良いかなって。限界感じてた時にケガしちゃったし丁度良かったんだと思う。あのまま続けても何も得るもの無かったし」
彼女は自身の左足を擦りながら諦観めいた口調で話した。
ナツは中学に入った時からバスケがしたいと言ってバスケ部に入部したし、多分今でもバスケ自体への熱はあるのだと思う。
だが、そこの人間関係や彼女の容姿・器用さが悪さをしていたのも事実だ。それに対して多大な疲労感を覚えていたのも知っている。
「そっか。まぁバスケやるだけなら部活以外でも出来るしな。なら、2人で帰宅部するか?それもそれで楽しそうだけど」
別に自分だけ部活に入って、帰りはいつものように2人でという選択肢もあった。だが、俺はその選択肢は極力取りたくなかった。
俺が部活に入らないための口実と言えば否定しきれない側面もあるのだが自分の知らないナツという側面が出来てしまうのが怖かったのだ。
こんな独占欲じみた事を思ってしまうが、別に俺とナツは付き合っている訳ではない。
彼女とはとても仲良く友達以上の関係ではあるものの男女のお付き合いというような高尚な関係でも無い。上手い言葉は見つからないが少なくとも俺視点では俺が彼女に寄りかかる形での依存である。それ以外の表現が思い付かない。
……それを自覚してしまっている時点でもう手遅れな気はするが。
だがそれでも俺は彼女と対等になりたい。彼女がずっと近くに居るとは限らないのだから。
俺の提案ににやりと笑顔を浮かべたナツは頬杖をつきながら俺を指を差した。
「それはかなりアリ。2人で帰る時に本屋行ったりゲーセン行ったり買い食いするのも中々に青い春よなぁと思うんだよ。私さ、中学の時はバスケ部あったからそういうの出来なかったし憧れあるんだよねぇ」
「確かに中学の時のナツ、めっちゃ忙しかったもんな。ナツもそんな感じならとりあえずはその方針にしとこう。めちゃくちゃ良さそうな部活があったら入るって感じで」
俺達の部活決定方針が決まったところで目の前にラーメンが置かれた。
この店のラーメンは他ではあまり見ない春菊が添えてあり、その春菊をスープに浸して食べるとそれはもう極上の幸せ気分というやつだ。
戦闘態勢に入った俺とナツは箸を持ち、無言でラーメンを愉しんだ。
「いやー、食べた〜。店舗のラーメンは久しぶりかも。ママとパパはいつも忙しいし弟は誘っても絶対に部屋から出ないから行く機会全然無かったんだよね〜」
満足気にお腹を擦りながら隣を歩くナツはいつも以上に幸せそうだった。
「俺も満腹だわ。久しぶりにこんなに食べた。久しぶりに行くからこその幸せ、だな」
「ね〜」
「そういえば弟君……確か琥太君だっけ、元気してる?」
ナツの弟──佐々木琥太君と最後に会ったのは2年前とかなので顔は覚えているが声はあまり思い出せない。歳はナツの2個下なので今年で中2のはずだ。
俺の質問に少し間を置いた後、ナツは少し困りながら口を開いた。
「あー……琥太はねぇ。まぁ元気だとは思う。学校もちゃんと行ってるし成績も赤点は取ってないぽいし。ただ最近、『俺はラノベ作家になる』って言った次の日には『俺はパチプロになって大金持ちになる』とか言い出してちょっと将来が不安かも」
「あー、その年頃ならあるあるだよ。俺にもそんな時期あったし。それに、夢があるってのは原動力になるし良い事だよ。優しく見守ってあげるのが一番」
男子中学生たるもの、五度や六度はラノベ作家を志して黒歴史を製造し、ネットの大海にそれを放ちデジタルタトゥーを作るべきだ。
いや、べきってのは嘘。やらん方がいい。
俺の経験者然とした口調にナツは目をぱちくりとさせて驚いていた。
「ハル君にもそんな時期あったんだ。全然気が付かなかった。私の前では隠してたとか?」
勿論その通りだ。そんな事を言える訳が無いだろう。
もし言ってしまった暁には見せて見せてマシンガンを喰らって全身に風穴が空いた結果、身体が消滅した後黒歴史原稿を見せる事になるだろう。
「そらそうだ。あんな恥ずかしいもん見せられる訳が無いだろ。俺の心の中にしまっておくのが一番なんだよ、黒歴史ってもんは。それで後になって思い出して悶絶するまでがセット」
「ふーん、そういうものなんだ。よく分かんないなぁ〜」
「ナツには遠い話だと思うぞ?ナツの黒歴史とか無いだろ」
「黒歴史が具体的にどんなのかは分かんないけど、確かにハル君の言うようなのは思い当たらないかも」
女子かつ優等生のナツには縁の無い話なのか、知らない文化を覗いた時のような感心した口調で納得していた。
そんな事を話しながら俺達は115段の階段を登り終えて俺の住むマンションの前まで辿り着いた。
「んじゃ、また明日。気を付けて帰れよ〜」
「バイバ〜イ。あ、ちょっと待って!明日はどうする?一緒に行く?それとも別々?」
ナツとは中学までは一緒に公立の小学校、中学校に通っていたためよく一緒に登校していたし今日も一緒に登校した。しかし、明日から登校するのは東京の高校であり今までとは少し違ったものとなるだろう。
俺は少し迷った結果、考えるのをやめた。
「んー、後でRIMEで連絡しとくわ。今日はもう疲れて何も考えられん」
RIMEとはメッセージアプリであり皆のよく知る緑色のアレだ。最近だとイソスタというアプリのDMで連絡を取るのが若者の主流らしいが、俺はSNSの類いはRIMEしかやってないので無縁の話でありそのアプリを入れる予定も無い。
ナツは俺が考える事を先送りにした事に苦笑いを浮かべつつ、それを了承してくれた。
「了解。んじゃ連絡待ってるね〜」
言って、彼女は手を振って帰路に着いた。
「よし、帰るか」
エントランスで鍵をかざしてロビーに入った。
ここに住んでもう長いが、いまだにロビーが3階にあるのが不思議でならない。
確か6階にもロビーあるんだよな…。何度考えてもよく分からない構造のマンションだ。
俺は宅配物が無いかを確認し、ロビーを横切って9階に停まるエレベーターが来るのを待った。
明日からは新高校生生活。勉強もそうだけどそれ以上にナツと2人で色々と楽しい事出来たら大満足だな。
俺は明日から始まる学園生活に思いを馳せながら自分の家へと向かった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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