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歪しい人の愛し方  作者: お麩の府


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17/24

17話

 安芸坂先生からの膝枕耳かき打診事件から4日が経ち、曜日は土曜日となっていた。あれからナツは何事も無かったかのようにいつものように振る舞っていた。

 何故土曜日にも学校に居るのかと言うと、駒場台高校は土曜日にも4限目まで授業があるので土曜日は平日扱いだからだ。土曜日は平日だぞ。舐めるな、働け土曜日休み勢ども。毎度毎度昼辺りにおはようとか言いやがって。


「何でこの学校は土曜日も登校しなきゃいけないんだ……」


 誰も居ない放課後の教室でぼそりと独りごちる。


「君が知らないだけで土曜日が登校日の学校は普通にあるぞ。関東近郊の偏差値の高い学校は大体は土曜日に授業があるものなのだよ」

「だとしても中学からのギャップが………ふぁっ!?」


 誰も居ないはずの教室で返答が来た事に気が付き心臓が止まりそうになった。

 声のした方向に身を翻すと俺の真後ろには長身の女性が立っていた。


「突然話しかけないでくださいよ……安芸坂先生」


 俺の反応を見てげらげら笑っている目が死んでいる彼女は、生徒会顧問と生徒指導を押し付けられた不憫な化学教師である安芸坂先生だった。


「いやー、すまないすまない。こんな時間に真っ暗な教室で頬杖をついてるものだからね。生徒指導担当として心配になっただけさ」

「それならわざわざ後ろに居ないで前から来れば良かったじゃないですか……」


 この人暇なのか?教師ってこんな自由奔放な印象は無かったんだが。


「41Rに少し用があってだね。あ、君に会いに来たと言った方が嬉しかったかな?」


 どうやら目の前に居るにまにましながら死んだ目を向けてくる彼女は仕事をした帰りだったようだ。


「はぁ、用が無いなら帰っていいです?ナツを図書館で待たせてるんですけど」


 そう、俺が終礼が終わって40分が経とうとしている今でも教室に残っている理由は彼女─安芸坂先生に呼ばれたからだ。4限の化学の授業終わりに呼び出され、放課後は動かずにその場で待機と言われたからわざわざここで待っているのだ。


「相変わらず君達は仲が良いねぇ。まぁ君の反応が面白かったし今日はこの辺にして本題に入ろうか」


 安芸坂先生は俺の右隣の席を引き、そこに腰を掛けると気怠げに頬杖を付くような体勢でこちらに身体を向けた。多分俺の真似だろう。


「で、本題なんだが君に生徒会としての初仕事を与えようと思ってね。どうだ?嬉しかろう?嬉しすぎて飛び跳ねてしまってもいいんだぞ」

「帰りますね。面倒そうですし」


 部外者のようなものである自分に頼むという事は生徒会がめちゃくちゃ忙しいかそれくらい面倒な案件であるという事を意味しており、これを聞いてしまった暁には逃がしてくれなさそうに思えた。

 そして席を立ち上がろうとするも安芸坂先生に肩を抑えられ無理矢理椅子に座らされた。


「まぁまぁまぁそう言わず座りたまえ。労働は確かにクソだが契約を忘れた訳ではなかろう?それに安心しろ。今回の案件は生徒会の子からお願いされたものだ。最初の案件なのだし手加減はしてくれているだろう」


 知らんけどと小声で付け加えられなければ安心して受ける事が出来たのだが……。

だが俺の退路には留年がチラついているのもあり了承せざるを得なかった。


「はぁ、分かりましたから。その依頼は受けますから。あと俺の事を生徒会の人にどう説明してるんです?確か今の生徒会は規定人数に達してますよね?」


 今の生徒会長の名前は確か──


「あぁ、それについては大丈夫だ。露野には自ら生徒会の仕事を志願した男と説明しておいたぞ。君の人となりを説明したら快く案件を渡してくれた」

「嘘しか伝えてない気がするんですが。なんて言ったんですか………。まあそれはもういいとして早く案件の内容を教えてください」


 勿体ぶられれば勿体ぶられる程心境は穏やかじゃないものになる。もし露野先輩がその説明を真に受けたのだとしたら俺に回ってくる案件は大変なものになる可能性が大いにあり得る。


「まぁそう焦るな。依頼はそうだな……これだ」


 白衣の胸元にあるポケットから折り畳まれた紙を取り出すと俺の机に差し出す。

 置かれた温もりのある紙を開くとそこには綺麗な字で依頼内容と名前が書かれていた。


『初めまして、石倉遥君。このような文章で依頼をしてしまう事になってしまいとても申し訳無く思っている。君の人となりは安芸坂教諭から聞いているよ。とても評判が良く真面目なのだね。次話す時は君と対面で会える事を切に願っている。

 さて、本題なのだが君に初仕事として体育祭関連の事を頼みたいと思っている。内容は以下の通りなのだが、恥ずかしい事に生徒会としても私個人としても立場的に少し難航しているものでね。今回は君には生徒会の人間という立場を隠して行動してもらいたい。それでは幸運を祈る。期待しているよ。


依頼内容:体育祭に出ないと言っている1人の女子生徒から理由を聞き出して体育祭に参加だけでもさせて欲しい。

対象  :51R10番朧夜子(おぼろ やこ)

身体特徴:黒髪で髪の長さは肩に届かない程の長さ。眼鏡は掛けていない。前髪辺りに猫の髪留めをしている。

人物概要:教室に入る時間は7時10〜15分。トイレや授業のための教室移動などの立つ用が無い限り椅子からは立たない。昼休みは自席で友人と談笑をしている。終礼後はすぐに教室を出てどこかへ行ってしまうため単独捕獲は困難かと。対象は対人関係も上手くこなしており授業態度も良好。



依頼者 :駒場台高校生徒会会長55R24番露野綾(つゆの りょう)』

ここまで読んでいただきありがとうございます。


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