表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンテイム 〜モンスターと心を結ぶテイマーの物語〜  作者: エフピー
第四章 フロワ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/133

第八十一話 それぞれの行き先

 祠を出ると、外の光がやけに眩しく感じる。


 木々の隙間から差す夕方の光は、少しだけ赤みを帯びていた。


 森の中は、もうすっかり見慣れた帰り道になっていた。


 木々が途切れると、見慣れたアルミ村の柵と門が見えてくる。


 夕暮れの光が、門や見張り台をやわらかく染めていた。


「帰ってきたな」


 見張り台の上から、村の見張りが僕たちに気づいて手を振った。


「先に道場行ってから村長のとこだな」


「うん」


 僕たちは村に帰ると、すぐにホルスさんのいる道場へと向かった。



 木の塀の向こうから見える道場の戸は、半分ほど開いていた。


「親父、戻ったぞ」


 中から出てきたホルスさんが、僕たちを見てすぐに顔を上げた。


「おう、どうだったんだ」


 僕はホップと顔を見合わせる。


「色々話したいですが、おじいちゃんを交えた方がいいと思います」


 ホルスさんはすぐに頷いた。


「じゃあ村長の家に行くとするか」



 三人で、おじいちゃんの家へ向かう。


 村の中はすっかり夕暮れで、家々の窓からはあたたかな灯りが漏れ始めていた。


 おじいちゃんの家の扉を軽く叩く。


「僕とホップとホルスさんだよ」


「入っといで」


 中から、いつもの声が返ってきた。


 家に入ると、おじいちゃんは囲炉裏のそばにいた。


「祠に行ってきたよ」


「どれ、奥で詳しく聞こう」


 そう言って、おじいちゃんは立ち上がる。


 僕たちは、いつもの会議をする小部屋へ移った。


「とりあえず、リュミエールとは喋れた」


「目覚めたわけじゃないのか」


 ホルスさんが確認するように言う。


「目覚めてはいないな」


 ホップが答えた。


「フォンセと共鳴すると目覚めるとかなんとか」


「うん」


 僕も頷く。


「詳しく聞く前に、リュミエールの時間がなくなって聞けなくて」


 おじいちゃんは静かに目を閉じる。


「文献通りじゃな」


「ということは、護手が必要というのも確かなのか」


「そうだと思います」


 ホップが頷いた。


「リュミエールが、復活までにあと二人の護手を探してほしいって言ってました」


「あと二人か……」


「けど、そんな簡単に場所なんて分からねぇだろ」


 ホルスさんが、腕を組んで言う。


「そうなんですけど、北の地に微かに感じると言っていました」


 僕は一度息を吸った。


「僕は、やっぱりフロワに行こうと思います」


「またフライは旅に出るのか……」


 おじいちゃんが、少しだけ不安そうに目を細めた。


「遠い地じゃな、不安がないかと言えば嘘になるな」


「でも今はフライを信じるしかあるまい」


「ホップはどうする」


 ホルスさんがホップを見る。


 ホップは少しだけ俯いて、それから顔を上げた。


「……俺はフロワじゃなく、サラームに行こうと思う」


「あの国に魔人が執着してるってことは、何かある」


「護手のことかもしれない」


「俺はそれを探りに行く」


「危険じゃぞ」


 おじいちゃんが、険しい顔で言う。


「魔人に見つかれば、護手の血ごと消しにかかってくるじゃろう」


「それでも俺は、あの魔人との因縁に決着をつけたい」


 ホップの声は、真っ直ぐだった。


「村長、こいつは言い出したら多分もう引く気はない」


 ホルスさんが、少し苦い顔で言う。


「本音を言えば、俺も反対だ」


「危ない賭けになることは目に見えてる」


「そうなんだけどな……」


 ホップは頭をかいた。


「他に方法が浮かばねぇんだ」


「じっとしてるのも違うって思うし」


「お前が行って、魔人を見つけたとして、どうする」


 ホルスさんが真面目な顔で聞く。


「討つ」


 ホップは迷いなく言った。


「あれは話の通じる相手じゃない」


「でもホップ魔人は……」


「大丈夫だフライ」


 ホップは腰の剣を軽く叩いた。


「この剣だってある」


「今の俺なら渡り合える」


「……俺も行く」


 そこでホルスさんが言う。


「いいのか、親父」


「いや、お前が早く決めすぎただけで、いつかは行かないとって思ってたんだ」


 ホルスさんは腕を組む。


「だからフライ、俺もフロワには行けない」


「大丈夫です」


 僕はすぐに答えた。


「ホップの方が心配なんで、そっちに行ってくれた方が安心できます」


「おいおい」


 ホップが呆れたように笑う。


「その理論だと、俺はお前が心配になるだろが」


「僕は牧場のみんながいるから大丈夫だよ」


「それもそうか」


「じゃあ決まりかの」


 おじいちゃんが、みんなを見渡した。


「わしは引き続き解読を進める」


 全員が頷く。


「それとフライ」


 おじいちゃんが僕を見る。


「シアンが魔力を見たいと言っていた」


「また、魔法練習場まで行ってやってくれ」


「うわ、出たよ、シアンさんのそれ」


 ホップが、ちょっと嫌そうな顔で言う。


「……シアンさんのそれにちょっと慣れてきてる自分が怖い」


 僕は小さく肩を落とした。


「でも、見てもらって分かることもあるからちゃんと行ってくるよ」


「せいぜい、いじくりまわされてこいよ」


 ホップが笑う。


 僕は苦笑いするしかなかった。


「じゃあ村長、また何か決まったら知らせにくる」


 ホルスさんが立ち上がる。


「頼んだぞ」


 おじいちゃんが頷いた。


 そうして、僕たちは家を出た。



 外に出ると、夕時の丘の風が気持ちよかった。


「しっかし、フライが一人旅ねぇ」


 ホルスさんが歩きながら言う。


「お前、本当に変わったな」


「まぁ、そうかもしれません」


 僕は少しだけ笑った。


「いつ旅立つんだ?」


 ホップが聞いてくる。


「うーん、まだ日にちは決めてないけど、準備ができたら出るよ」


「まずは明日、シアンさんのとこに行って、色々聞いてからかな」


「そっか」


 ホップは少し笑った。


 そうして、道の途中で分かれる。


 ホルスさんとホップは道場へ。


 僕は家へと向かっていった。



 翌日、魔法練習場は朝の光に照らされていた。


 広い土の地面に、木の的や訓練用の木人形が並んでいる。


「おー! きたね!」


 見ると、シアンさんが手をぶんぶん振っていた。


「こんにちは、シアンさん」


「魔力見るんだね」


「僕もあれから色々あったから気になって」


「おー、そりゃ楽しみだね」


 シアンさんが目を輝かせる。


「ムーとエルが増えてから、見てもらってないですからね」


「てかさ、ムーを仲間にするとは、やるねフライ」


「ムーですか?」


「うん」


 シアンさんはうんうんと頷く。


「スライムは単体持ちが多いし、頭も良くて魔力も高い」


「しかもなんと、可愛い」


「可愛い……」


「うん、可愛い」


(可愛いのん)


 器の中でムーが言う。


「今日はムーとエルを見ますか?」


「うーん、どっちかって言うとパンを見たいかな」


「パンですか?」


「うん、一番最初から見てるからね」


「変わってるのを一番見て取れるのが、きっとパンだからさ」


「なるほど」


「じゃあ呼びますね」


 杖を前に出して魔力を流す。


「〈〈テイムバンク〉〉」


 魔法陣が浮かび、ムー、エル、パンが姿を現した。


「やあ、なのん」


「よっ、みんな」


 シアンさんが気軽に手を上げる。


「シアンさんの反応、意外とあっさりですね」


「そんなセラみたいに抱きついたりしないよ」


「いや、最初はしたのん」


「……しました」


 シアンさんがバツが悪そうに言う。


「素直でよろしい」


 僕が言うと、シアンさんはわざとらしく咳払いした。


「それでシアン、今日はパンたちを見てくれるの?」


 パンが聞く。


「うん、今日はフライがどれだけ頑張ったか見る会だね」


「それ、僕だけ何か気が重くなるんですけど」


「うふふ、楽しそうね」


 エルが微笑む。


「じゃ、さっそく恒例のこれね!」


 そう言ってシアンさんは、ローブから魔力玉を取り出した。


「まずフライから見るよー」


「お願いします」


 シアンさんは僕に魔力玉を渡す。


「いつも通り、それに魔力流してみて」


「はい」


 僕が魔力を流す。


 すると魔力玉の中に、いくつもの色が濃く滲んだ。


 しかも、その奥には相変わらず淡い光が見えている。


「うわぁ、こりゃまたすごいね」


「いろんな色が見えますね」


 僕も、玉の中に浮かぶ色を見つめながら言った。


「自覚あるでしょ」


「はい、あります」


「ムーを仲間にした時、氷の魔力が使えたんで」


 そう答えると、シアンさんは納得したようにうなずいた。


「やっぱりね、私の予想通りだわ」


 シアンさんは指を折りながら言う。


「パンの炎、パディットとネールの雷、ムーの氷、クロープの地、エルの風」


「それと、リュミエールの光だね」


「つまり僕は……」


「仲間にした子の属性を使える」


「それで、今は全部の属性を使えるってわけ」


「でもそうなると、フライ、大魔導師になっちゃうね」


 シアンさんが、きっぱり言った。


「大魔導師ってなんですか……?」


 僕は思わず聞き返す。


「全部の属性を司る人はそう呼ばれるんだってさ」


「この世界にも数人しか存在しなかったと言われてる」


「……それが、僕ですか」


 自分で口にしてみても、どこか実感がなかった。


「そうなっちゃうね」


「でも自分で発現したわけじゃないから、混ぜ物大魔導師? みたいな?」


「何ですかそれ……」


 僕は少し苦い顔をしながら言う。


「でもすごいのは確かだよ」


 シアンさんは笑いながら、魔力玉の奥を指差した。


「それに、おまけで光ってるのまであるし」


 玉の奥に残る、淡い光を見る。


「多分フライも気づいてるだろうけど、リュミエールが復活しないと使えないだろうね」


「やっぱりそうですよね」


 そこだけは、僕の中でもはっきりしていた。


「と、言うことでフライはここからです」


「ここから?」


「そう」


 シアンさんが僕をじっと見た。


「器がすんごいことになってるね」


 シアンさんは、魔力玉から僕へと視線を移した。


「前に普通の魔杖使いの十倍以上みたいなこと言ったと思うけど、今はもう優に百倍以上ある」


「そ、そんなにですか!?」


 思わず聞き返す。


「そんなにです」


「しかも、その器に牧場のみんなの魔力が溜まってる」


「そりゃいくら魔法撃っても、テイム使っても魔力切れなんてしないわ」


「もうなんて言えばいいんだろ……化け物です」


「人間なんですけどね」


 僕がすぐに言い返すと、シアンさんは少し笑った。


「人間にはありえないってことだよ」


「そうなった心当たりってある?」


「多分ダンジョン……ですかね」


「ドーナで行ったダンジョンにも、南の森と一緒で石碑がありました」


「石碑と共鳴して、気がついたら牧場のみんなが喋れるようになってましたし」


「そうなのん」


 ムーが、少し得意げに揺れる。


「うふふ、お喋りできるのは嬉しかったわね」


 エルは、くすっと笑って髪を払う。


「まぁ、多分それだね」


 シアンさんが、あっさり頷く。


「結論! フライはダンジョン攻略すると強くなる!」


「そんな、簡単に……」


 僕は少し困った顔で言う。


「だって事実なんだもん」


「まぁ、今は考えても結局憶測にしかならないから、それはいいや」


「そうですね」


「じゃ、気を取り直して、ムー見よっか」


「シアン、よろしくなのん」


 シアンさんはムーの頭に魔力玉をちょこんと乗せた。


「ムー、そこに魔力流してね」


「わかったのん」


 ムーが魔力を流すと、魔力玉には綺麗に澄んだ青が滲んだ。


「おー、やっぱり氷単体で、しかもいい魔力だねー」


「ムーすごいのん?」


 ムーが自慢げに少し膨らんでみせた。


「ムーもすごいよ」


「さすがスライム」


 シアンさんが頷く。


「次、エル見るね」


「よろしくね、シアン」


 魔力玉をエルに触れさせる。


「うん、風だね……しかも単体」


「……でも、これほとんど魔力がない」


「ええ、わかってたわ」


 エルは穏やかに答える。


「わたし、魔法はほとんど扱えないもの」


「でも、回復魔法は得意よ」


「回復魔法は属性魔法とまた違うからね」


 シアンさんは軽くうなずくと、パンへ視線を向けた。


「じゃあ、最後にパンね」


「これに触るんだね」


 パンが魔力を流すと、魔力玉にはっきりと、濃く燃えるような赤が滲んだ。


「……これ」


 シアンさんの顔が少し引きつる。


「……パン? ちょっとそこの実験君に魔法撃ってもらえない」


 練習用の木人形を指差す。


「うん、わかった」


 パンのツノの先に、小さな火の玉……のはずだった。


 けれど現れたのは、あまりに大きな炎の玉だった。


「ターーーーイム、タイムタイム!」


 シアンさんが慌てて両手を振る。


「それ引っ込めて!」


「うん、わかった」


 パンがすぐに魔法を消す。


「パン……なにそれ」


 シアンさんが、引きつった顔のままパンと実験君を見比べる。


「エクスプロージョン級の炎玉出たんだけど」


「普通に炎出したんだけど」


 パンは、自分でも少し驚いたように目をぱちぱちさせている。


「前は小さい火の玉だったのに……」


 僕は思わず、以前のパンの魔法を思い返していた。


「……いや、でも仲間が増えて、ダンジョンでフライが力をもらってることを考えれば、そうなっててもおかしくないのかな」


 シアンさんが一人で納得したように頷く。


「パン、もしかして戦えるの?」


 思わず、僕はパンを見つめた。


「戦えるどころか、炎魔法だけで言ったら私より上かもね」


 シアンさんは真面目な顔で言った。


「元々魔法が使えたけど、出力が出せなかった」


「それをフライの器を借りて魔力を捻り出す」


「すると、あの強力魔法って感じかな」


 シアンさんは、整理するようにうなずいた。


「もとから伸び代ある感じしてたけど、まさかここまでとは」


「戦えるなら、パンもフライの力になりたい」


 その言葉は、まっすぐだった。


「パンはいい子ね」


 エルがやわらかく言う。


「でも実戦は練習と違って、相手が動くから、練習していかないとね」


「エルの言う通り」


 シアンさんが頷く。


「実戦は実戦でしか強くなれない」


 僕はパンを見る。


「じゃあパンも戦えるように、練習頑張るよ」


「無理はしないでね、ゆっくりでいいから」


 そうして、その空気を切り替えるように、シアンさんがぱんと手を叩いた。


「よしっ、今日はこのくらいにしますか!」


「そうですね」


「出発はもうすぐなの?」


「はい、準備したら出ます」


 僕は小さく頷く。


「そっか」


 シアンさんは、少しだけ真面目な顔で僕を見た。


「ちゃんと帰ってくるんだよ」


「はい!」


 こうして、僕は魔法訓練場を後にした。


 これから、またそれぞれの旅が始まる。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

次話も読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ