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第十一話 牧場づくり

 パンを母さんに見せるなら、今しかない。

 そう思ったのは、朝の片づけを一通り終えたあとだった。

 洗い物を拭き終わった母さんが、ふぅと一息ついて椅子に腰を下ろしたタイミング。

 昨日の集会で、母さんもある程度は状況を理解してくれている。


 今日は午後から牧場づくりが始まる。

 パンを村の外れの牧場に連れて行く前に、少なくとも母さんにはちゃんと見てもらっておきたかった。


「……母さん」


「なぁに?」


 布巾を畳んでいた母さんが、首をかしげる。


「えっと……昨日の集会での話だけどさ」


「ああ、モンスターを仲間にするって話ね」


「それで、見せたいものがあるんだ」


 母さんの目が、ふっと細くなる。

 その視線に、居心地の悪いような、変な気分になる。


「見せたいもの、ね」


 ほんの一瞬、母さんの眉がぴくりと動いた。


「……家の裏。物置の中まで来てくれる?」


 けれど、すぐにいつもの笑顔に戻る。


「じゃ、行きましょうか」


 母さんは立ち上がり、腰に手を当てた。


「まぁ顔見てればなんとなく分かるけどね」


「隠してても、どうせすぐバレるものを抱えてる顔だって」


「そんな顔あるの……?」


「あるのよ」


 自信満々に言われて、返す言葉が見つからない。



 家の裏に回ると、物置小屋の木の戸の前に立った。


「ここね?」


「……うん」


 母さんの前に立って、戸に手をかける。


「えっと、その前にひとつだけ」


「なぁに?」


「びっくりしても、あまり大きな声出さないでくれると助かる」


「ふふ、じゃあ、心の準備だけしとくわ」


 母さんは軽くうなずいた。


 僕は戸を少しだけ開けて、中に声をかける。


「パン、入るよ」


 干し草の上で、もぞっと何かが動いた。

 白い頭と小さな角がぴょこんと飛び出す。

 耳が半分寝たまま、ぱちぱちと瞬きをしている。


(ねむい)


 僕は思わず振り返る。

 母さんは、目をまん丸にしてパンを見つめた。

 それから、ふっと口元を緩めた。


「……かわいいわね」


「……え?」


 母さんは一歩前に出て、そっとしゃがみ込んだ。


「一角ウサギ、だっけ? モンスターって雰囲気とちょっと違うけど」


「一応モンスターなんだけど……」


「そっか」


 即答された。


「え、何も言わないの?」


「いや、フライ、この数日ずっと変な顔してたもの」


「畑には父さんより早く行くし」


 母さんはパンを驚かせないように、ゆっくりと手を伸ばした。


「それは……」


「何か、変わったのねって思ってた」


 母さんの指先が、パンの鼻先にそっと触れる。


(におい にてる)


「……ふふ」


 母さんの声が、少し柔らかくなる。


「ごめん、黙ってて、決心がつかなくて、言えなかった」


「反省してるなら、それでいいの」


 母さんは立ち上がって、僕の頭をぽん、と軽く叩いた。


「ただ、モンスターでも何でも、命を預かるってことは、それだけで責任だからね」


「かわいいから飼ってみました、とは違うってことだけは、忘れないで」


「……うん」


 責任の重さを、あらためてちゃんと感じた。


「お父さんにも、ちゃんとあんたの口から話しなさいよ」


「お父さん、こういうとき黙り込むけど、考えるタイプだから」


「……うん。分かった」


 母さんが小屋から出ようとした、そのときだった。



「フラーイ!!」


 元気な声が、庭の向こうから突っ込んできた。

 セラが、全力ダッシュで近づいてくる。


「フライ!モンスター飼ってるってほんと!?かわいい子なんだって!?どこどこどこ!!」


「ちょ、セラ、落ち着いて」


「昨日の夜の集会で言ってたでしょ!モンスター牧場を作るって!シアンさんが小さいウサギのモンスターって教えてくれたんだ!」


「シアンさん……」


 セラは僕の言葉など聞いちゃいない。


「ここ!?この中!?」


「セラ、急に入るとパンが――」


 戸を開けた先で、セラの声が弾けた。


「なにこれかわいいいいいいいい!!」


 物置小屋が揺れた気がする。


 パンはびくっと飛び上がり、耳をぴんと立てる。


(おおきい こえ)


「ちょっと、セラ、そんなに騒いだら――」


「だって見てよこれ!?角ちょこんってしてるし、耳ふわふわだし、目うるうるだし!!」


 セラは両手をほっぺたに当ててパンを見つめた。


「モンスターなんだよ、一応」


「いいの!かわいいは正義!」


 理屈が消えた。


 母さんが横で苦笑している。


「セラ、あんた、診療所に戻らなくていいの?」


「実はフライに薬草入りハーブ茶届けに来たんです!はい、これフライ!」


「はい……どうも……」


(絶対目的はそれじゃないな)


 セラはゆっくりパンに近づき、しゃがみ込んだ。


「……触っても、いい?」


 僕はパンの様子を確かめる。


(しらない におい)


「……静かに、ゆっくりなら大丈夫、だと思う」


「やった」


 セラは両手を見せて、そっと差し出した。

 パンは鼻を近づけて、くんくんと匂いを確かめる。

 セラはそのまま、パンの頭をそっと撫でた。


「フライ、この子ほんとにモンスターなの?」


「ちゃんとモンスターだよ」


「ふーん……とりあえずかわいいからよし!」


「そこ基準なんだね、やっぱり」


 僕がつっこむと、セラは笑った。


「だってさ、怖いモンスターの話ばっかり聞いてると、やっぱ滅入るもん」


「こういう、かわいいモンスターもいるなら、ちょっと救われるじゃん」


「……それは、分かるかも」


 パンの耳が、気持ちよさそうにぴくぴく揺れた。



「で、パンちゃんは、これからどうするの?」


 ひとしきりかわいがったあとで、セラが尋ねる。


「今日から牧場を作って、そこに移す予定」


「牧場……!村長が昨日言ってたやつね!」


 セラの目がきらりと光る。


「モンスター牧場!?わー、いいねそれ!」


 その時、裏手の方から、足音が近づいてきた。


「おーいフライ、そろそろパンを運ぶ準備してもらっていいか」


 ホルスさんだ。

 見えたのは、いつもの顔だけじゃなかった。

 その後ろに、見慣れない大柄な男たちが。


 一人は、背が高くて肩幅もごつい。

 胸板が厚くて、鍛冶服みたいな革のエプロンを着ている。

 額にはゴーグルを乗せていて、少しだけ油の匂いがする。


 もう二人は、それより少し細いけれど、それでも十分がっしりしている。

 片方は髪を後ろで束ね、もう片方は短髪で、どことなく兄弟っぽい雰囲気だ。


「ホルスさん、その人たちは?」


「ああ、紹介しとく」


 ホルスさんは腕を組み、最初の大柄な男の背中を軽く叩いた。


「こいつがゼン」


「大工兼鍛冶職人だ、ホップの大工の師匠でもある」


「ゼンだ、よろしくな、フライ」


 ゼンさんは口元をにやっとさせて、片手をあげた。


「ホップから話は聞いてるぞ、言い出したら聞かない奴ってな」


「ホップ……」


 思わず苦笑する。


 ホルスさんは、後ろの二人も指さした。


「そっちがビーツとジャズ、ゼンのところで一緒に仕事してる」


「ビーツっす、よろしくっす!」


「ジャズです、今日からよろしくお願いします」


 ゼンさんがふははっと笑った。


「まぁ、うちの娘が見て怖がらないくらいの牧場にはしてやんよ」


 そんなやり取りをしてから、ホルスさんがこちらを向く。


「村長から監督頼まれてな、柵の位置と強度の指示は俺が出す」


「ゼンたちが骨組みを作る。フライ、お前はパンを落ち着かせながら、様子を見る係だ」


「はい、大丈夫です」


「モンスター側の目線は、俺らには分からねぇからな」


「何か気づいたら教えてくれ」


「わかりました」


 パンが、物置の中から僕たちを見ている。


(しらない におい たくさん)


(柵を作るだけだから、大丈夫だよ)


 ゼンさんは腕を組み、と頷く。


「正直、モンスター相手に柵を作るなんざ初めてだが……閉じ込められてるって感じが強すぎると、落ち着かないよな」


「そうですね」


 パンの気配を感じながら、僕は頷く。


「じゃあ、完全に囲うんじゃなくて、上の方は少し開けておくか」


「見た目は牧場、中身は頑丈ってな」


 ビーツさんが図面のような板切れを取り出す。


「ゼンさん、言ってたやつっすよね、二重柵だけど外側は低め、中側は高めってやつ」


「手前に低い柵、中に本命の高い柵、間を少し空けときゃ、見た目の圧は減る」


「まぁ、ゼンに任せときゃ大丈夫か」


 ホルスさんが肩をすくめた。



「よし、じゃあ始めるぞ」


 ホルスさんの一声で、裏庭から少し離れた空き地へと移動することになった。


 パンを物置から出すと、あたりを見回す視線は落ち着かなそうだった。


(ひろい)


(大丈夫、僕もいるし)


 様子を見ていた母さんが話しかけてきた。


「フライ、牧場ができたら、今度はちゃんとお母さんにも案内してね」


「うん、絶対」


 母さんはにっこり笑って、手を振る。


 そして僕たちは牧場予定地へと向かった。



 畑の向こうに広がる、少し盛り上がった緩やかな土地。

 草は伸び放題で、ところどころ石が転がっている。


「ここがボツになった家畜用の空き地ね」


 セラがくるりと周りを見回す。


「昔、羊とか鳥を増やそうとして結局諦めたって言ってた」


「やっぱり、ちょうどいいな」


 ホルスさんが、見張り小屋の方角を指さす。


「見張り台からも見える位置だし、いざってときにはすぐ駆けつけられる」


「地面はちょっと固いけど、杭打つには悪くないっすね」


 ビーツさんが地面を靴で踏みしめる。


「石さえどけりゃ問題ねぇよ」


 ゼンさんが斧を片手に、近くの小石を蹴飛ばした。


「よし、まずは外側の低い柵からだ。ビーツ、ジャズ、柱の位置に印つけてけ」


「了解っす」


「うい」


 二人が手際よく杭の位置を決めていく。


 ホルスさんが、僕の隣に並んだ。


「パンの様子、どうだ?」


「……ここがいい場所なのかどうかを探ってる感じです」


 パンはしばらく地面の匂いを嗅いでいたけれど、やがて慣れたのか、その場にお座りした。


(こわくない)


「……落ち着いてきたのか?」


「さっきより大丈夫そうです」


 ホルスさんは、ふっと笑った。


「だったら、俺たちは俺たちの仕事だな」


 手を叩き、ゼンさんたちに声をかける。


「おーい、やっぱり牧場の設計はゼンに任せるぞー」


「了解だー!その方がやりやすい」


 ゼンさんは口の端を上げた。


「じゃあ柵のある庭ってところだな」


「さーて、それじゃあ――」


 空き地に、金属と木がぶつかる音が響き始める。


 ホルスさんが言う。


「ここから先は、お前一人の力じゃなくて、村全体の力で作る場所だ」


「……はい」


 パンは日陰を選んでちょこんと座っている。

 時々、打ち込まれる杭の音に耳をぴくっと動かしながらも、逃げる様子はない。


 小さく息を吐いたところで、隣でパンを撫でていたセラが、ふと固まった。


「やばっ……!」


 セラの顔から、血の気が引いていく。


「どうしたの?」


「今、時間何時くらい!?絶対もう昼前くらいだよね!?」


「多分……結構経ってると思うけど」


 頭を抱えたあと、ばっ!と立ち上がる。


「パンちゃん!ごめん、いったん帰る!また今度絶対来るから!!」


「う、うん。気をつけて」


「パンちゃん、いい子にしててね!フライも!ハーブ茶ちゃんと飲んでよー!」


 最後に手をぶんぶん振って、セラは治療所の方へ全力疾走していった。


 その背中を見送りながら、ゼンさんが金槌を肩に乗せたまま笑う。


「元気な子だな!」


 ホルスさんが、杭の位置を確認しながら言う。


「ホップを初めて大工仕事させたときを思い出すな」


「ホップが、大工仕事……?」


「おう、あいつが最初に作ろうとしたのはな、動物小屋だったんだよ」


「動物小屋?」


「まだガキのころのホップがな」


 ゼンさんは、遠くを見るみたいに目を細める。


「動物にも家はいるだろ!って言い張ってよ」


「ある日いきなり、道場の裏で木材かき集めてやがってな」


「何してんだって聞いたら、小屋作る!ってよ」


 ホルスさんは肩をすくめる。


「子犬拾っても家がないだとか、まぁいろいろ言ってたな」


「ホルスさんは?」


「動物なんて飼える訳ないだろって言った」


 ホルスさんは、申し訳なさそうに頭をかいた。


「道場の事情もあったし、ハンターとして狩りやってて、情で縛られるのは、正直怖かったってのもあるな」


「で、そしたらホップが拗ねちまってな」


 ゼンさんが、嬉しそうに続ける。


「じゃあゼンさんちに住む!って言い出したんだよ」


「……え?」


 突拍子もない展開に、思わずビックリする。


「親父なんか知らない!ゼンさんちで動物飼う!ってな」


「そのまま本気でうちに転がり込もうとした」


「あいつも昔から頑固だったなぁ」


 ホルスさんが額を押さえる。


 ゼンさんは構わず笑い続けた。


「で、困ったホルスが俺のとこ来て、お前ん家に本当に連れて行かれたら、面倒だから止めてくれ、って真顔で言うわけよ」


「……大変ですね」


 ホルスさんの苦い顔が、妙にリアルだった。


「だから言ってやったのさ、じゃあ小屋だけでも作ってやったらどうだ、ってな」


「そうでも言って何かさせねぇと、納得しなさそうだったんでよ」


「そこでゼンさんが、大工仕事を?」


「ああ、最初は本当に簡単なもんだ」


「余った板を切って、釘打って、屋根をつけて……雨がしのげて、中に藁でも敷けりゃ十分って程度の」


 ゼンさんは、杭を一本打ち終えるたび、昔を思い出すように笑う。


「ホップはな、最初から形なんかどうでもよかったんだ」


「どうでも?」


「動物が入って、あったかくて、怖くない場所ならいい、ってな」


(……)


「でもな、結局、その小屋には動物は入らなかったがな」


 ホルスさんが、ぽつりと付け足した。


「……あいつ自身も、幼いながら考えたんだろうな」


「俺が狩りしてることで、命を預かるってのがどういうことか、感覚で理解しちまったんだと思う」


 ホルスさんは、真剣な目で杭を見つめる。


「家に帰ってきて、やっぱり今はやめとく、俺がちゃんと守れるようになったら、って言った」


「……」


 無茶しがちで、でも筋は通す。

 ホップは、いつもちゃんと優しさを持っていた。


 ホルスさんは、ふっと笑った。


「まさかこんな形で、命を預かる側に回るとはな」


 パンを見下ろす。

 干し草の上で丸くなっていた小さい体が、今は少しだけ伸びをしている。

 胸の奥に伝わる感情は、さっきよりずっと穏やかだった。


(ホップは、動物の小屋を作った)


(僕は今、モンスターの居場所を作っている)


 形は違うけど、根っこは同じものを目指している気がした。



 日が傾き始めるころには、外側の低い柵はほとんど形になっていた。

 腰くらいの高さの木柵がぐるりと空き地を囲い、その内側に、もう一段階高い柵用の柱が立ち始めている。


「おお……」


 思わず声が漏れた。


「牧場だ!」


「このペースなら……」


 図面を見ながら、ゼンさんがうなずく。


「明日には、とりあえず形になるな」


「とりあえず?」


「細かい補強や増設は、そのあとじわじわだ」


 ゼンさんは、パンの方をちらっと見る。


「パンの感じはどうだ?ここ、住めそうか?」


「えっと……」


(ねむい おなかすいた)


 パンの眠気まじりの気配がした。


「落ち着いてるみたいですね」


 すると、ゼンさんは手を打った。


「今日はここまでだな、杭打ちすぎて腕が落ちちまう」


「十分進んだな」


 ホルスさんも大きく伸びをする。


「大工ってのはな、エネルギーの塊みたいな仕事なんだよ」


 ゼンさんがにやりと笑う。


「分かるな、ホルス」


「……はいはい」


 ホルスさんは、呆れたように笑った。


「どうせ、また飲みに付き合えって言いたいんだろ」


「話が早くて助かるなぁ」


「子供、待ってるんじゃないか?」


 ゼンさんの顔が一瞬でゆるむ。


「待ってるよ、世界で一番かわいい娘がな」


 ゼンさんは、工具をまとめながら言った。


「でもな、かっこいい父ちゃんでいねぇとな」


「だからこそ、明日もちゃんと動けるように、肉と酒でエネルギー補給が必要なんだよ」


「ただの言い訳じゃねぇか、お前」


 ビーツさんが笑い、ジャズさんが肩を震わせる。


「でもまぁ、確かに今日はがっつり働きましたしね」


「ホルスさん、久々に飲みましょうよ」


「……分かったよ、明日もあるからほどほどにな」


「ほどほどな!」


 ゼンさんはご機嫌で工具箱を担ぎ上げた。


「フライ、じゃあまた明日だ」


「今日はありがとうございました」


 大柄な背中が、夕焼けに溶けていくように遠ざかっていく。



 空き地には、僕とパンとホルスさんだけが残った。

 西の空が赤く染まって、柵の影が地面に長く伸びていた。


「形になってきたな」


「みんな優しいですよ、未知のことで色々不安があってもおかしくないのに、受け入れてくれて」


 ホルスさんは、パンをちらりと見た。


「みんな、村が好きなんだ」


「守るためには、受け入れることも時には必要なんだって分かってんだよ、この村の連中は」


「……」


「戦って傷ついて、中には命だって……それの方が受け入れられねぇ」


「だからみんな村長を信じてついていく、この村はずっとそうやって、やってきたんだ」


 そう言って、ホルスさんは夕空を見上げた。


「この光景は全部含めて、村の選択ってことだ」


「……はい」


 僕は素直にうなずいた。


「よし」


 ホルスさんは背を向けた。


「暗くなる前にパンを戻してやれ、今日はもうゆっくり寝ていい」


「ホルスさんこそ、飲み過ぎないようにしてくださいね」


「それはゼンに言ってくれよ」


 肩越しに笑ってから、ホルスさんも村の方へ歩き出した。



 パンを家の裏の物置に戻すころには、空はすっかり暗くなっていた。


(明日からは、あそこがパンの家だね)


(パン いえ)


(楽しみだね)


 僕がそう言うと、パンは、ゆっくりと眠りに落ちていった。


 戸をそっと閉めて、夜空を仰ぐ。

 星が、少しずつ瞬き始めている。


(ホップが作りたかった小屋、僕が今作っている牧場、どっちも、誰かの居場所だ)


「……明日も、ちゃんとやろう」


 小さく呟いて、家の明かりの方へ歩き出した。

読んでくださりありがとうございます。

次話も読んでいただけると嬉しいです。

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