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2.閻魔の裁きと世界の仕組み

少女は、その場に立ち尽くしていた。


目の前にいる存在は、人ようなの形をしているのに、人ではなかった。


圧倒的な“重さ”だけが、そこにあった。


閻魔と呼ばれる存在は、少女を静かに見下ろしていた。


「お前は、生前に罪を犯したな」


少女の胸が強く跳ねる。


「……」


言い返すことはできない。


何かを言えば、それがそのまま“決定”になってしまいそうな気がした。


閻魔は続ける。


「本来ならば、罪を犯さず生きた者は天へ。罪を重ねた者は地へ。そして、ごく一部は“転生”へ向かう」


少女は小さく息を飲んだ。


「……転生?」


閻魔はわずかに目を細める。


「この世界で名を残した者が行く場所だ。別の形で存在し直す。神に近い領域へ行くこともある」


少女はその言葉を理解できなかった。


神。


その言葉は、さっきからずっと遠くで鳴っている。


閻魔は少女の記録を見ているようだった。


「お前は村で生まれ、拒絶され、そして……一人の命を奪った」


少女の手がわずかに震える。


思い出したくない記憶が、勝手に浮かび上がる。


「私は……」


声にならない。


閻魔は淡々と続ける。


「理由はどうであれ、この世界の規則に従えば、お前は“地獄行き”だ」


少女の心が一瞬だけ止まる。


地獄。


その言葉は、ただの場所ではなかった。


「待って」


少女は思わず口を開いた。


「私は……殺されたくなかっただけ」


閻魔は反応しない。


少女は続ける。


「私が何もしなかったら、私は死んでた。じゃあ、それでも私が悪いの?」


沈黙。


閻魔は少しだけ目を閉じた。

そして言った。


「それは、お前たちの世界が決めたことだ」


少女は顔を上げる。


「……世界?」


閻魔は静かに立ち上がる。


その瞬間、空間そのものが少し揺れたように感じられた。


「この冥土の仕組みは、私が作った」


少女は息をのむ。


「だが、ルールそのものは“お前たちの世界”が作ったものだ」


「どういう……こと?」


閻魔は少女を見たまま続ける。


「人が何を善とし、何を悪とするか。それを決めたのは人間だ。私はその結果を“形にしているだけ”にすぎない」


少女は言葉を失う。


閻魔はゆっくりと手を動かした。


少女の背後に、二つの扉が現れる。


一つは光に満ちている。


もう一つは、暗く沈んでいる。


「天国と地獄だ」


少女はその扉を見つめた。


どちらにも行きたくない。


でも、どちらかを選ばなければならない気がした。


そのとき、閻魔はもう一つの言葉を落とした。


「そして、ごくまれに“転生”がある」


少女は反射的に顔を上げる。


閻魔は少女を見て、静かに続ける。


「それは、この世界の“記録に残る存在”だけが行ける領域だ」


少女の胸が強く揺れる。


「お前はどれを選ぶ?」


閻魔の声は、問いというより“確定の直前”だった。


少女の世界は、その瞬間、分かれ始めていた。

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