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白き死神の挽歌(エレジー) ——極寒のコッラ、五〇五の墓標  作者: beens
第1章 ラウトヤルヴィの狩人

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第2話 ヘイヘ家の食卓

 ラウトヤルヴィにあるヘイヘ家の農場は、決して裕福ではなかった。

 8人兄弟の7番目として生まれたシモは、物心ついた時から働き詰めだった。夏は畑を耕し、秋は収穫し、冬は木を切り出す。フィンランドの農民にとって、生きることは闘いそのものだ。

 夕食時、大きな木のテーブルを家族全員が囲む。

 父のユホは厳格な人物だった。食事中は無駄口を叩くことを許さず、ただ黙々と黒パンとスープを口に運ぶ。

「シモ、今日の成果は?」

 父の低い声が響く。

「ウサギが一匹、キツネが一匹です」

 シモが短く答えると、父は小さく頷いた。

「悪くない。キツネの皮は町で高く売れるだろう」

 母のカトリーナが、シモの皿に少し多めにジャガイモをよそってくれた。彼女の温かい眼差しだけが、厳しい生活の中での救いだった。

 シモは口下手で、兄弟たちの中でも特に寡黙だった。兄たちが村の娘の話や、隣村の噂話で盛り上がっていても、彼はただニコニコとそれを聞いているだけだ。

「シモは本当に喋らないな」

 兄の一人が笑いながら言った。

「何を考えているのか分からんよ」

「考えていることなんてないさ」

 シモは照れくさそうに首を振った。

(俺は、この生活が続けばいいと思っているだけだ)

 土の匂い、家族の温もり、そして森の静けさ。それ以上のものを、彼は望んでいなかった。

 だが、食卓のラジオからは、不穏なニュースが流れていた。

 東の隣国、ソビエト連邦の動きだ。スターリンという指導者が、近隣諸国に対して領土の割譲を迫っているという。

「ロシアの熊が、また腹を空かせているらしい」

 父が忌々しそうに呟いた。その言葉の重みを、シモはまだ深く理解してはいなかった。

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