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白き死神の挽歌(エレジー) ——極寒のコッラ、五〇五の墓標  作者: beens
第4章 砕かれた顎、不滅の魂

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第19話 長い眠りと夢

 深い、深い闇の中。

 シモは夢を見ていた。

 そこはラウトヤルヴィの森だった。

 戦争など起きていない、平和な故郷。

 父が斧で薪を割る音が聞こえる。母がシチューを煮込む匂いがする。

 

『シモ、狩りに行くのか?』

 父が問いかける。

『うん、行ってくる』

 シモは愛銃を肩にかけ、森へ入っていく。

 

 雪の上にはウサギの足跡がある。

 彼はそれを追う。どこまでも、どこまでも。

 だが、いつしか足跡は人間の軍靴の跡に変わり、森は炎に包まれていく。

 

『どうして殺すの?』

 撃ち殺したはずのソ連兵の少年が、悲しそうな目でシモを見つめる。

『……ここが俺の家だからだ』

 シモは答える。だが、声が出ない。顎がないからだ。

 

 痛みはない。ただ、圧倒的な疲労感があった。

 もう、ここで眠ってしまいたい。

 銃を置いて、雪の中で永遠に眠れば、もう寒さも恐怖も感じなくて済む。

 

 ふと、遠くで声がした。

『コッラは持ちこたえる』

 仲間の声だ。

『必ず帰ってくるのよ』

 母の声だ。

 

(まだだ)

 シモの魂の奥底で、小さな、しかし強烈な火種が燃え上がった。

 フィンランド語で「シス(Sisu)」と呼ばれる、不屈の精神。

 

(俺はまだ、終われない。まだ、家に帰っていない)

 彼は闇の中で、必死に光の方へと手を伸ばした。

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