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白き死神の挽歌(エレジー) ——極寒のコッラ、五〇五の墓標  作者: beens
第4章 砕かれた顎、不滅の魂

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第16話 崩れゆく均衡

 1940年3月。

 冬戦争が始まって3ヶ月が過ぎていた。

 北欧の遅い春が近づき、昼間の時間が少しずつ長くなっていたが、戦況はフィンランド軍にとって最悪の局面を迎えていた。

 ソ連軍は学習していた。

 無謀な突撃を減らし、圧倒的な物量の火砲と戦車で、フィンランド軍の陣地を一つずつ丁寧に潰し始めたのだ。

 コッラ川の防衛線も限界に達していた。弾薬は底をつきかけ、兵士たちは不眠不休の連戦で、立っているのがやっとの状態だった。

 シモの形相も変わっていた。

 かつての純朴な農夫の面影はない。頬はこけ、目は落ち窪み、その瞳には鬼火のような鋭い光が宿っていた。

 愛銃「M/28-30」のストックは傷だらけになり、白い迷彩服は泥と油と、誰のものか分からない血でどす黒く汚れていた。

「シモ、下がれ! ここはもう持たん!」

 小隊長が叫ぶ。

 だが、シモは首を振った。

「俺たちが下がれば、誰が彼らを止めるんですか?」

 

 彼は狙撃手としての役割を超え、サブマシンガン(スオミ KP/-31)を手に、最前線で突撃部隊を食い止める役割も担っていた。

 接近戦。

 雪原の白い悪魔は、森の奥から静かに狙う死神から、血飛沫の中で踊る修羅へと変わらざるを得なかったのだ。

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