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仁以千絵へ                         二〇〇五年三月二四日

何というか、とにかく元気そうで安心したよ。別れてしまう友達と楽しい思い出が作れてよかったね。君の手紙の内容の辻褄について、甚だしく疑問を感じたけれど、君のために何も言わないことにするよ。確かに、もう一人で河原に行くのはやめたほうがいいね。  

 君はこれから少し偏屈だけれど一途で論理的整合性をもった考え方を携えて学問の世界に入っていくんだ。君は自分の知識と思考力をさらに広く深くしていく。文科系の君は歴史も言語も文学もどれも面白くて目移りするけれど、その中でも最も君の興味を引き、君が肌で触れて感じているくらいに自分に近しいと思える世界を見つける。そしてそれをこれから深く深く探求していく。君は些細な悩みを忘れるくらいの学問の楽しさを発見して、囚われるくらいに夢中になるという事を知る。文系講師のひそかなお気に入りになって目を掛けてもらえる。知的で神経質で繊細な雰囲気の君に恋をする小説家志望の文学少女が現れる。君はもしかして眼鏡をかけているかな?痩せ形で線が細いタイプ?それともずんぐりむっくりのオタクタイプ?そういえばお互い写真を送ったことがなかったね。でも、顔かたちはお互い伏せてミステリアスなままにしておこう。お互いに先入観が少ない、僕たちの手紙だけで互いを想像する関係が僕はしごく気に入っている。君もそこに居心地の良さを感じないかい?顔の見える相手には、相手の思う自分を常にいい方に矯正しようとする気持ちが働いてしまうから。サークルは演劇部か映画研究会に入る。シャイに見える君は実は自己表現が大好きだ。初めはその活動にこっぱずかしさを感じるが、だんだん癖になるくらいに楽しくなっていく。そして意外な自分の才能を見つける。演技力とか脚本を書いたり、舞台や映画のイメージを考えて指示を出して形にする監督の役割とか。君は面白くて変わり者の仲間をたくさん得て自分の居場所と青春の若さ、楽しさを知る。文学少女とはじれったいピュアな関係になり、彼女を何よりも大切に思う。君は人を本当に大切に思う気持ち、本物の愛しさを知る。

 きっとこんな人生が君を待ってるよ。

                                    圭太より


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