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仁以千絵君へ                        二〇〇五年二月一六日

君の手紙を読んだ。何度も何度も読み返してすぐに返事を書くためにペンを取った。僕は思う。君は誰も殺していないと。君は想像力が豊かすぎるんだ。だからひとり部屋に籠ってか、誰もいない河原に行ってかどうかはわからないけれど、そんな妄想を頭の中でこしらえて、夢か幻想の中で訳も分からず人を殺したんだ。実際には誰一人殺めていない。いいかい、ハルカさんなんて人は最初からこの世にいない。君の中に積もりに積もって鬱積した負の力が作り上げて、何年も君が維持し続けてしまった幻影だ。君の生き方が負のエネルギーを自分の中に補給し続けたんだ。こんなにも長い間。十年以上も!信じられないよ全く。よく考えてみなよ。そんな君の理想を体現したような美しい女性が突然現れて、何の関係性もないのに脈絡もなく親しくなってくれて、隅から隅まで君の望む仕方で君を理解してくれて、しかも会いに行くといつでも河のそばで待っているなんて、しかも君がその土地を離れる直前に殺されるなんて、何もかも出来すぎじゃないか。あり得ないよ。自分の見ているものが幻ではないかと疑ってかかったことのある君なら、今回の事こそその事例に当たると判断できるはずだろう?厳しいが自分の正気を一度だけ疑ってかかってほしい。きっとこれが最後だから。だから警察になんて行かなくていい。遺体も見つからなくて病気扱いされることになるに決まってる。いいかい、絶対に警察になんて行くなよ。君のことを心から信頼していると同時に心配してる。

                                    圭太より



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