圭太君へ 二〇〇五年二月一三日
第一志望の大学への入学が決まった!と言うほど感動もしなかった。だって、僕の退化した頭で、精一杯とは言えない、だらけた精神で行った質にも量にも乏しい労力で、薄い実感と共に勉強した日々の果ての合格だから。僕が以前の僕のままなら、もっといい大学に行けたのにと思わずにはいられないよ。母が興味津々で目を爛々と光らせながら、「合否結果よ!あなたの人生が決まるのよ!」とふてぶてしい顔いっぱいに興奮を広げて、どすどす歩いてポストから通知を持ってきたのを見て、気持ちが冷えて冷静になっていくのを禁じ得なかった。合否を知らせるこの手紙で言うことではないが、一部の親に見られる、子供の問題を自分の問題にすり替え、かつ責任は子供の側に置いておくという都合のよさが僕は癇に障って仕方ない。僕はぞんざいに通知の封筒をビリビリ破くように開けて、結果を礼儀的に確認した。「礼儀的」な気持ちなのはどうしてだったのだろうね。一応今後の身の処し方を決めるための知らせなのにね。それでも行き場ができて良かったという思いがないわけではない。まさか僕が通っていた県下一の受験校から大学進学せずに地元で就職だなんて、両親が許すはずないしね。僕がものの流れから外れることを彼らは一番嫌うから。言っちゃなんだが父親は高校卒業資格さえあれば受験しなくても入れる調理師の専門学校で、母親は私立の短大出だ。本当は4年制大学を受験した僕の苦労に口を出す資格なんてあるわけがないのだけれどね。
とにかく合格した。新しい環境が楽しみだが、まずはこの事をハルカさんにも報告してくる。
仁以千絵より




