確信に力を
シュオンが目を覚ますと明るかった空が真っ暗になり夜に変わっていた。
_もうこんな時間かぁ、早いのう。まだ特訓はしておるだろうか。
寝起きで気怠い体を動かし朝陽の様子を静かに見守る事にした。
たった数時間という短い間だったのになんという事だろう。
まともに妖気を操る事が出来なかったはずの朝陽はガラリと変わりシュオンには劣るが、妖気を確実に操れるようになっていた。
_ほぉ…確かに素質はあるようじゃ。
妖気を操る様になれるまで数日は必要だろうと思っていたシュオンは少し驚いていた。
「うん、掴めてきた。片手でもコントロール出来るようになってきたし…この調子だ!」
朝陽は妖気をお手玉サイズにギュッとまとめたり、掌の上でスライムでも操るように転がしたり、凝縮し固くさせた妖気を飛ばし岩にぶつけたりと様々な事が出来るようになっていた。
_頑張っているようじゃな。
「お!シュオン起きたのか!…どうだ?結構マシになったと思うんだ!」
_うむ、驚いた。早くも操ることが出来るようになっておる。頑張ったのだな。
シュオンに褒められた朝陽は少し恥ずかしそうに顔を赤く染めた。
「お、おう!すげぇ頑張ったんだぞ!」
_妖気に関しては上出来だと思うが…急ですまぬが朝陽、お主は刀を扱った事はあるか?
「刀?いや、ないけど…あっでも時雨と一緒に木刀で稽古をしてるぞ!」
_そうか…なら早速だが我と軽く手合わせしてもらおう。
妖気をこんなに早く操る事ができるようになっていた朝陽が刀をどれ程使いこなす事が出来るのかシュオンは知りたくなったようだった。
「え!?手合わせ?いきなり!?」
急な事に状況を飲み込めていない朝陽を放っておき、シュオンは道場の倉に置いてある木刀を2本持ってきた。
1つの木刀を朝陽の方に軽く投げると
_準備はいいか?
そう一言だけ言い構えた。
おふざけでも何でもない真剣なのが朝陽に伝わった。
「…勿論。」
急な緊張が体中を走りシュオンの刀の構えに怯んだが、引き気味ではあったが朝陽も構えた。
ガッ!!!
とてつもない衝撃と痛み重さが朝陽を襲った。
何が起こったのか理解する間もない速さで朝陽の構えていた木刀は飛ばされた。
_構えが甘い。そんなでは簡単に木刀を打ち飛ばす事が出来るぞ。動きも遅い、本当に稽古をしていたのか?
重く低いシュオンの声が朝陽に届く。
時雨との稽古で1度も木刀が手から離れた事が無かった為動揺を隠せなかった。
神主である父に初めて稽古を付けてもらった時以来の事だった。
圧倒的な力を今の一撃だけで思い知らされた様な感覚で動く事さえままならなかった。
「………」
言葉にすらならない。
_稽古をしていたとしても確実に自分自身の力に出来ていなかったら意味が無い。生ぬるい稽古など稽古の内に入らぬぞ。
「そ、そんな事……。」
_強くなる気はあるのか?
「ッ!あるに決まってる!!確かに俺は弱い…でもまだ強くなれるはずなんだ!」
_そうか。妖気をこの短時間で操る事ができるようになったのだ。朝陽、お主はもっと強くなれると我は信じておる。
シュオンの重く冷たい言い様に怖気付いていた朝陽はその言葉に驚き勇気を貰った。
「勿論だ!もっともっと強くなって皆を守れるくらいに俺はなるんだ!」
_そうだな、お主には守りたい者達が居るからな。我がお主を強くしてやろう。
「いいのか!?ありがとうシュオン!!」
静かに笑みを浮かべたシュオンは少し待つように朝陽に言うと道場の倉奥へ入って行った。
少し経ちシュオンは戻ってくると手に2本の刀を持っていた。
_これは、古くからこの神社に祀ってある日本刀じゃ。
「それって!も、もしかして!伝書にもあった日本刀!?」
_そうじゃ。これを使って共に鍛えるのだ。
「え、これを使うのか!?共にって一緒に??」
_勿論じゃ。何の為にお主の体に宿っていると思っておるのじゃ。
「あ…確かに…」
_我は自由に動く事は勿論可能じゃが、本来お主の体に宿り共に戦うのが役目じゃ。最初は違和感があるじゃろうが共に戦う内に慣れるであろう。
「うん、わかった!よろしく頼むよ!!」
シュオンは確実に力をつけていく朝陽をもっとしっかりサポートしようと思えた。